中国、将来不安で少子化 21年の出生最少1062万人

中国、将来不安で少子化 21年の出生最少1062万人
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM172WM0X10C22A1000000/

『【北京=川手伊織】中国の少子化が止まらない。2021年の出生数は1062万人と1949年の建国以来の最少。政府は21年から3人目の出産を認めたが、将来不安や育児環境の未整備で効果が乏しかった。総人口の減少は目前に迫り、中長期にわたり中国の経済成長を抑制しかねない。

国家統計局が17日発表した。出生数の減少は5年連続で、20年(約1200万人)比の減少率は1割を超えた。死亡者数は1014万人で、21年末の総人口は前年末より48万人多い14億1260万人となった。

中国の人口問題に詳しい米ウィスコンシン大学の易富賢研究員によると、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す「合計特殊出生率」は21年に1.1~1.2とみられ、日本を下回る。新型コロナウイルスの感染が深刻だった20年(1.3程度)よりも低い。

中国政府は16年、すべての夫婦に2人目の出産を認め、21年には3人目を容認した。16年は一時的に増加したが、21年は減少が続いた。統計局の寧吉喆局長は17日の記者会見で「中国の総人口は今後、一定期間は14億人以上を保つ。三人っ子政策の効果も徐々に表れる」と語った。

出産意欲は強くない。21年8月に西南財経大学などが実施した調査では、8割の家庭が「新たな出産意欲はない」と答えた。「三人っ子政策に関する政府への希望」を複数回答で尋ねると「年金システムの整備」が全体の49%と最多だった。

中国では長年の産児制限により互いに一人っ子という若い夫婦が多い。親の老後の面倒は子供が見るのが一般的だが、夫婦2人で4人の親を支える必要がある。先進国に保障が見劣りする年金や、不足する保育所など社会保障を充実させなければ、若い夫婦の出産意欲を高めることは難しい。

足元では所得や雇用への不安も響く。中国人民銀行(中央銀行)が21年10~12月に預金者を調べたところ、52%が「より多くのお金を貯蓄に振り向ける」と回答した。19年までは高くて45%前後だったが、新型コロナが広がった20年以降、50%前後に高まった。

高齢化も主要国最速で進む。全人口に占める65歳以上の比率は21年末に14.2%で、国際基準で同14%超とされる「高齢社会」に入った。同7%超の「高齢化社会」になってからの期間は21年で、早くて40~50年の欧米や25年だった日本より短い。

15~64歳の生産年齢人口は13年をピークに減少局面に入った。22年からは1962年からのベビーブーム期に生まれた中国版「団塊世代」の男性の定年退職も始まり、働き手の減少と国内市場の縮小が加速する。

日本経済研究センターは中国の名目国内総生産(GDP)が2033年に米国を上回るものの、50年に米国が再逆転すると試算する。人口減少による労働力不足が成長の重荷になるとみる。
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

青山瑠妙のアバター
青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
コメントメニュー

ひとこと解説

かつての一人っ子の時代には、4人の祖父母、2人の親が一人の子供の面倒を見て、そして甘やかされた子供は「小皇帝」と呼ばれた。

しかしそのピラミッドは今、逆になった。夫婦二人が四人の親、場合によってはさらに祖父母の面倒も見なくてはならない。現役世代の負担はあまりにも重い。一人っ子政策の歪みは大きい。

2022年1月18日 7:54 (2022年1月18日 7:57更新)

木村幹のアバター
木村幹
神戸大学大学院国際協力研究科 教授
コメントメニュー

別の視点

少子高齢化は東アジア諸国の共通の問題。

国連の推計では「中位水準」の予測でも、この地域で、2050年までに6000万人以上、2100年までには実に4億5千万人以上の人口が減少します。

当然の事ながら、この様な巨大な人口減少を他地域からの移民により補うことはできません。「人口ボーナス」から「人口オーナス」の時代に入り、経済も大きく低迷することが予想され、「東アジアの時代」の到来が叫ばれたのは、過去の事になるのかもしれません。
2022年1月18日 13:33

柯 隆のアバター
柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
コメントメニュー

分析・考察

出生率が低下する背景はきわめて複雑である。

子育てのコストがかかるのはその一つ。そして、介護などの社会保障制度が整備されていないため、老後の生活が心配なのも出生率を下げる要因。

さらに一人当たりGDPが1万ドルを超え(大都市では、2万ドルないし3万ドルを超えている)、人々の生活様式が変化してしまっている。

多くの若者は子供を産んで育てるより、もっと人生を楽しみたい。したがって、子供手当のような財政出動をしても、出生率を上げることができない。むろん、このままいくと、少子高齢化は深刻な社会問題をもたらすことになる

2022年1月18日 7:56 (2022年1月18日 11:09更新)

上野泰也のアバター
上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
コメントメニュー

分析・考察

00年代前半、幼い長女を連れて中国・大連に旅行した際、現地の家族に声をかけられビールをおごってもらったことがある。

当時、2人目の子供を持つには罰金が必要だったが、彼は富裕層のようで、罰金を払ってそうしたと言っていた。

中国が一人っ子政策をやめるまで、それから10年以上かかった。中国は後ろを歩いてきているので、日本の教訓を学び、同じトラップにはまらないようにできるのが強みだと、筆者は機関投資家向けに以前よく説明していた。平成バブル崩壊の教訓は(政策としての良し悪しは別にして)活かされている。

だが、子育てにはお金がかかるという厳しい現実などから、人口問題では結局、日本と同じトラップにはまりつつある。

2022年1月18日 7:31 』