中国、アフリカ・中東で軍事拠点計画 米国が警戒

中国、アフリカ・中東で軍事拠点計画 米国が警戒
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN070CS0X01C21A2000000/

『【ワシントン=中村亮、北京=羽田野主】中国がアフリカや中東で新たな軍事拠点の確保を探っている。中国軍のグローバル展開を進めて米国に対抗する狙いとみられ、バイデン米政権は懸念を強めている。軍事をめぐる米中競争がアジア太平洋から広がってきた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、中国はアフリカの赤道ギニアで軍事基地の確保を目指している。艦船が軍事物資を補給したり、補修作業をしたりする拠点となる可能性があると米国はみている。米情報機関は2019年ごろから軍事基地の確保に向けた中国の動きがあり、注視してきたという。

赤道ギニアは米本土と同じく大西洋に面しており、米国の危機感は強い。米政府高官によると米政権は赤道ギニアに対して「中国の潜在的な活動が安全保障上の懸念にあたる」と伝えた。米国防総省のカービー報道官は12月上旬の記者会見で軍事力を背景に「中国がアフリカ諸国に対して威圧的行動をとる」との懸念を示した。

中国は17年、海外拠点として初となる軍事基地をアフリカ東部ジブチに設けた。ジブチはインド洋と紅海を結ぶマンダブ海峡に面する要衝だ。21年に入り、中国がジブチの軍事基地で空母の受け入れ施設を完成させたことも判明した。最新鋭の強襲揚陸艦も停泊できる体制を整えた。

米軍基地が近くにあり、米軍のパイロットが中国軍からレーザー照射を受けることがあったとされるが、米本土からは遠く、米国の安保への影響は比較的小さいと位置づけられてきた。ここにきて中国は米国などの「自由で開かれたインド太平洋」構想に対抗する動きをみせている。

米メディアによると、中国はアラブ首長国連邦(UAE)でも軍事向けと疑われる施設の建設を秘密裏に進めていた。バイデン政権が2国間関係を脅かすとUAEに警告し、建設は中止になったという。米国が中国への機密流出を懸念し、UAEが調達を目指す最新鋭ステルス戦闘機F35を巡っても米・UAE間に隔たりが生まれた。

国防総省は11月に公表した中国の軍事力に関する年次報告書で、中国がアジア諸国に加え、ケニアやタンザニア、アンゴラ、セーシェルでも軍事拠点の確保を狙っていると分析した。中国軍が将来的に世界での米軍の作戦を妨害する可能性があると主張した。

オースティン米国防長官も4日の演説で「中国は部隊の海外展開や軍事基地のグローバルネットワークの確立に向けた能力を向上させている」と危機感を表明した。

中国共産党系の環球時報(英語版)は7日付の紙面に匿名の軍事専門家の話として「WSJの記事は不正確で中国脅威論をあおっている」と批判する記事を掲載した。

習近平(シー・ジンピン)指導部が東・南シナ海からインド洋まで中国軍の広域展開を目指しているのは疑いがない。1月に改正国防法を施行し軍の目標に「海外利益の保護」を明記した。アフリカや中東など海外に進出する中国企業や在外中国人などを守るのが目的だ。

広域経済圏構想「一帯一路」を巡る海上交通路(シーレーン)の防衛にも意欲をみせている。習氏は20年10月に赤道ギニアの大統領と国交樹立50周年で祝電を交換している。そのなかで「一帯一路の共同建設と中国アフリカ協力フォーラムの枠組みでの実務協力を深化させよう」と呼びかけている。

米中は台湾海峡や南シナ海をめぐって対立してきたが、今後はアジア太平洋以外の地域で競争が激しくなる可能性がある。米国が中国対抗に向けてインド太平洋地域にヒト・モノ・カネを重点配分するほど、中東やアフリカが手薄になって中国に付け入る隙を与えかねない。

【関連記事】

・「弱ぶる米国」と「強がる中国」 非対称な軍事対立
・[FT]中国、アフリカ支援減額 「債務のわな」批判に配慮 』