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『国内の不満の原因は外国にあると国民に訴えて国際協調から背を向ける。今の保護主義の台頭とよく似た構図が1930年代にもあった。コロナ禍という危機への対処で過去から何を学ぶべきか。米ブランダイス大教授のポール・ヤンコフスキ教授に聞いた。
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――なぜ1932~33年に注目するのでしょうか。
「ドイツでヒトラーが政権を握り、日本は国際連盟を脱退し、米国でルーズベルトが大統領に就任した。一見すると関連のない出来事だが共通点はある。世界を潜在的な脅威とみなし、単独行動を是とし、国際協力に背…
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世界を潜在的な脅威とみなし、単独行動を是とし、国際協力に背を向ける姿勢だ」
「1930年代と今ではもちろん状況は大きく異なる。当時は第1次世界大戦の記憶と世界恐慌が各国で危機感を募らせた。今は公に議論ができる国際機関が多くある点でも異なる」
「ただ英国の欧州連合(EU)離脱や米国におけるトランプ現象などには『一人でやる』という感情があり、パンデミック(世界的大流行)はその流れを強めた。過去と今との比較には注意深くあるべきだが、気がかりな兆候はみられる」
――世界を敵視するような感情はどうやって生じたのでしょうか。
「総力戦だった第1次大戦で欧州は広く戦地となり、あらゆる国が犠牲者意識を持った。戦勝国も犠牲に値するものは得られなかったと感じた」
「指導者も国民それぞれの個人的な被害者意識を国全体の意識にひもづけた。抱えた不幸や貧しさは外国の陰謀や世界的な不正のせいだと説いた。すべては虚偽だが、人々は信じた」
――今も同じような構図でしょうか。
「国民の抱える不安について、例えば移民やEUなどの国際機関のせいにして非難することで説明すると、不幸なことに大概うまくいく」
「格差の真の要因は別にあっても国内のマイノリティーに矛先を向ける。時代や状況は全く異なるが、国際社会から自分たちの国が攻撃されているとの訴え方には過去と同じようなメカニズムが働いている」
――我々はどう対処すべきでしょうか。
「人々を教育し、意見を伝え合い、理性の声を拾うことが助けになる。産業化が遅れた地域での労働者の再教育は一例だ。国が費用を負担し、新たな資格や技能を身につけてもらう。真の解決策があると示すのは効果がある」
「バイデン米政権の施策には希望が持てる。パリ協定に復帰する一方で、ロシアに報復的な対応もするなど常識と現実の間をとる。人々はバイデン氏に世界への展望を求め始めるだろうが、急ぐべきではない」
「成功する未来像は時間をかけて現実的な問題に対処して初めて生まれる。米国の歴史において真の展望と呼べるものの多くは大統領任期の後半に出てきた」
(聞き手はニューヨーク=大島有美子)