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『インドで農産物取引を自由化する新法に反対する農家の大規模デモが、大手財閥リライアンス・インダストリーズ(RIL)に打撃を与えている。傘下の小売業が新法の恩恵を受けるとみなされたことが波及し、RILグループが手掛ける携帯電話の基地局が破壊されるといった被害が出ている。デジタル技術を活用して急成長してきたが、自国内での思わぬ事態に頭を悩ませている。
RILは4日、傘下の通信会社を通じて北部のパンジャブ…
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・RILは4日、傘下の通信会社を通じて北部のパンジャブ州とハリヤナ州の高等裁判所に嘆願し、農家が破壊行為をやめるよう政府の介入を求めたことを明らかにした。「暴力は多くの従業員の命を危険にさらし、2州で重要な通信インフラの断絶を引き起こしている」と訴えた。
契約者流出も
・地元紙によると、2州にある約9千の基地局のうち1500が壊されたり電力を遮断されたりし、広範囲で通信サービスが断絶したもようだ。RILが手掛ける通信サービスの利用を拒む農家も増え、相当数の利用者が競合の2位バルティ・エアテルなどに乗り換えたとされる。
・ただでさえ、RILの携帯電話事業は一時の勢いを失っている。契約者の純増数は8月から3カ月続けてエアテルに後れを取った。人口13億人超の6割が農村部に住むだけに、農家の反発が続けば契約者の流出が加速しかねない。
・インドでは2020年9月、農作物の取引や契約を巡る新たな農業関連法が成立した。農産物の販路は原則、各州政府が指定する地域の卸売市場に限られていたが、新法でスーパーマーケットなどに直接卸すことができるようになった。
・農家には大手小売業者などの価格決定力が強まれば農作物を買いたたかれ、収入が減るとの不安が強い。政府による最低保証価格が撤廃されるとの懸念もあり、新法廃止を求める大規模デモが20年11月下旬から続いている。複数の場所で数千人規模の農家が集まっており、その規模は数万人とみられる。40日以上も続くのは異例とされる。
・RILがデモの標的となったのは、インド最大の小売業であることが大きい。傘下のリライアンス・リテールは20年9月末で食品スーパーなどをインド全土に約1万2千店持つ。食品のネット通販にも参入した。農産物の取引自由化で同社が恩恵を受けると連想されたようだ。
・「リライアンス・リテールは農家にとって不公平な取引となるような長期の売買契約を結んだことはないし、今後もしない」。RILは4日の声明でこう強調した。「農業に参入したことも農地を購入したこともなく、今後も予定は全くない」と加え、沈静化を図っている。
・リライアンスは1950年代に貿易商として創業し、繊維や石油化学などへ多角化した。創業者の父から石油化学事業を引き継いだRILのムケシュ・アンバニ会長兼社長は近年、携帯電話や小売業に注力してグループを成長させてきた。
他産業にも打撃
・RIL傘下の通信企業には20年に米グーグルや米フェイスブックが出資。傘下の小売企業にも米投資ファンドが出資した。成長力に対する期待はなお高いものの、水を差された格好だ。
・過激さを増すデモの影響はRILにとどまらない。米小売り最大手ウォルマートの店舗や中堅財閥エッサール・グループのガソリンスタンドなどでも抗議活動が起きている。デモによってサプライチェーン(供給網)が寸断し、幅広い産業に影響が出ているとの指摘もある。
・パンジャブ・ハリヤナ両州とデリー周辺地域の企業でつくる商工会議所によると、20年10~12月期に7000億ルピー(約9800億円)以上の損失が出たという。デモ隊による道路封鎖で供給網が寸断し、自動車や農業機械、食品、繊維・衣類などが打撃を受けた。
・インドではデモや労働者のストライキが珍しくない。20年12月にはiPhoneを受託生産する台湾の緯創資通(ウィストロン)のインド工場で大規模なストが発生し、事務所などを破壊した。
・特に消費者向けビジネスに携わる企業はイメージが事業に直結しやすい。消費者向け分野を成長させてきたRILは反発にどう対処するのか。リスク管理の面で試練を迎えている。(早川麗)