https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN201BE0Q0A221C2000000

『【ワシントン=河浪武史】米議会の与野党指導部は19日、9000億ドル(約93兆円)規模の追加の新型コロナウイルス対策を発動することで大筋合意した。20日にも最終法案を策定し、上下両院で採決する。中小企業の雇用対策や失業保険の特例加算などを盛り込み、景気回復の減速懸念を払拭する。
米東部時間19日深夜(日本時間20日昼)、民主党のシューマー上院院内総務は記者団に「今後なんらかの問題が起きなければ、あす採決できるだろう」などと述べた。米与野党は11月の大統領選・連邦議会選後、追加のコロナ対策を発動する方向で協議してきたが、最終決定が大幅に遅れている。共和党が同日昼に民主党側に法案の文言案を提示し、民主党が同日夜に受け入れた。
20日にも採決する9000億㌦の追加コロナ対策は、失業保険の特例措置や中小企業の雇用維持策を延長するのが柱だ。いずれも3月に発動したコロナ対策の中核施策だったが、12月末に制度が失効し、低所得層や中小企業の資金繰りが大きく悪化する懸念があった。大人1人当たり600㌦を支給する現金給付も盛り込み、低所得層を中心に家賃の支払いや食費の確保を支援する。
トランプ大統領が署名し、追加のコロナ対策が成立すれば、3月以降の臨時の財政出動は合計で4兆ドル規模になる。米国内総生産(GDP)の2割に達し、通常の年間歳出(4.4兆㌦)に迫る大きさだ。公的支援が切れる「財政の崖」を回避して、早期の景気回復につなげる狙いがある。
米経済成長率は4~6月にマイナス31%(年率換算前期比)という大幅な落ち込みを記録した後、7~9月期はプラス33%増と持ち直しに向かった。10~12月期もプラス成長が見込まれるが、新型コロナの新規感染者数が1日20万人を超えて過去最悪の状態が続く。12月の失業率は再び悪化に転じる可能性もあり、ワクチンの普及を前に景気回復に減速感がにじんでいた。
米議会は当初、19日から休会を予定していた。政府機関の運営資金を確保するつなぎ予算も18日が期限で、同日までに2021会計年度(20年10月~21年9月)本予算を成立させる必要もあった。上下両院は20日までの2日間の極めて短期のつなぎ予算を可決して、週末返上でコロナ対策を協議している。20日には21会計年度予算も採決する方針で、バイデン次期政権の発足を前に目先の懸案は解消される。』