日中ビジネス往来、出足低調 中国側が厳格要件

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『【北京=羽田野主】11月に日中両政府が合意したビジネス往来の出足が極めて低調だ。日本のビジネスマンが出張を申請しても、中国側が滞在先での「専用車」の用意や「専用エレベーター」の設置などの厳しい要件を求めているためだ。中国側はこうした内容を一般に公開しておらず、不透明な対応に疑問の声もでている。

ビジネス往来では、短期の出張者や駐在員を対象に、新型コロナウイルスで厳しく制限されてきた両国間の往来を再開する。新型コロナの陰性証明や行動計画を提出すれば相手国に渡航しても、2週間の外出自粛を特別に免除されるのが目玉だ。王毅(ワン・イー)国務委員兼外相が11月下旬に訪日し、茂木敏充外相と会談して合意した。

ところが在中国日本大使館関係者は足元で「利用実績はほぼゼロだ」と明かす。深刻なのは日本からの出張者だ。

中国当局は日本のビジネスマンが訪中した際、空港からの「直接移送」と滞在先での「閉鎖管理」を求めている。中国の日本大使館や日系企業が具体的な内容を照会すると、中国側は専用の車と運転手を用意することや、会社や宿泊するホテル内に専用のエレベーターや通路を確保するよう要求してきた。直接のビジネスの相手でない社員らとの接触は禁止で、食事スペースも別に用意する必要があるという。

日本を出る前に中国の地方政府や関係官庁が発行する「招待状」の取得も義務づけているが、実際の入手は極めて難しい。

北京駐在の大手家電メーカーの関係者は「普通のビジネスマンはまず利用ができない。運用基準も不透明でリスクがある」と話す。日本政府関係者も「活用するにしても、中国が求める工場勤務の日本の技術者くらいではないか」と話す。

日本側は中国のビジネスマンや中国駐在員らに入国から14日間の公共交通機関の使用を禁止したうえで、滞在先と仕事先の往復を認めている。だが、中国からの出張者は帰国後、2週間程度の外出自粛を義務付けられている。

中国外務省の趙立堅副報道局長は「お互いの人の往来を促進し、業務・生産再開を支援する積極的措置だ」とアピールする。日本政府関係者からは「このままでは中国の宣伝に使われるだけになりかねない」との声も聞かれる。』