「独立投票」相次ぐ南太平洋 広がる中国への警戒

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64240820V20C20A9000000/

『【シドニー=松本史】南太平洋のフランス領ニューカレドニア、ソロモン諸島で「独立」の是非を問う住民投票の計画が相次いでいる。状況をみると、この地域で影響力を広げる中国への「警戒」が浮かび上がる。

■ニューカレドニア、経済依存への警戒強く
ニューカレドニアは10月4日、フランスからの独立の是非を問う住民投票を予定する。同テーマの投票は2回目だ。2018年の前回は56%の反対で否決された。今回は賛否がさらに拮抗する可能性があるとみられている。

仮に独立が決まり、仏の財政支援が途絶えれば「中国が(経済を)全面支援するのではないか」(外交関係者)との見方が浮上する。ニューカレドニアは人口約28万人の仏特別自治体で、ステンレス鋼の材料となるニッケルの産地だ。中国の投融資の担保として十分な価値がある。新国家と国交を結べば、中国は南太平洋で勢力圏をさらに広げることができる。

19年には地元メディアが、ニューカレドニアでの領事館開設を中国が検討していると報じた。報道によると、地元政府職員の一人が中国の「帝国主義」に警戒感を示していた。

オーストラリア外務貿易省によると、18年は中国がニューカレドニア産品の最大の輸出先。モノの輸出の3割が向かう。

南太平洋では19年、ソロモン諸島とキリバスが相次ぎ台湾と断交し、中国と国交を結んだ。中国はインフラ支援などを通じて南太平洋へ進出し、この地域と関係が深い豪州やニュージーランドは懸念を強めている。

ニューカレドニアでは1998年、仏政府、独立派、独立反対派の3者協定で住民投票の実施が決まった。地元議会の3分の1が要請すれば最大で3回の投票が可能だ。

■ソロモン諸島、国交樹立に地方が反乱
ソロモン諸島で地方の州首相が中央政府に反乱を起こしている。2019年に台湾と断交し中国と国交を結んだ中央政府を批判し、州の独立の是非を問う住民投票の実施を求めている。中央政府は投票を認めない方針で、対立が深まっている。

中国と国交樹立後、北京を訪問したソガバレ首相(右)(19年10月)=AP

ソロモン東部、マライタ州のダニエル・スイダニ首相が9月、住民投票の意向を表明した。同州は人口約16万人で、ソロモン全体の23%を占める最大州だ。スイダニ氏は日本経済新聞に「マライタの人々が中央政府にどんな意見を持つのか知るためだ」と説明した。

ソロモンは1983年に台湾と外交関係を結んだが、中央政府のソガバレ首相が2019年9月に断交した。スイダニ氏は「中国との国交樹立の前に、中央政府は当然(州首相など)人々から意見聴取すると思っていたが、そうはならなかった」と不満を表明。「中国は民主主義国家のソロモンとは異なる信念と価値観を持つ」と主張した。

ソロモンは住民の大半がキリスト教徒だ。スイダニ氏は宗教に関して寛容さに欠けるといわれる共産党が支配する中国への不信感もにじませた。

マライタ州はソロモンの中国との国交樹立前、特に台湾と関係が良好といわれていた。新型コロナウイルスがまん延するなか、6月には州として台湾から独自に医療品などの支援を受け入れた。

中国は23年にソロモンで開かれる国際スポーツ大会で使う屋外スタジアムの建設支援を表明している。』