海自がやってる、「遠洋練習航海」ってのがある…(その3)

 バルセロナを出航して、次の寄港地は、スウェーデンのストックホルムなんだが、この間マップの日付けでは、2週間くらい掛かってる…。
 その間、全く補給無しというのは、ちょっと考えにくいんで、マップに記載はないが、あるいはドーバー辺りにでも寄って、補給したかもな…。
いずれ、マップには、往きには、ポーツマスには、寄港していないことになっている…。

洋上訓練

洋上訓練7_s

 そして、イギリス周辺の北海を通って、デンマークのあるユトランド半島の沖を回って、スカンジナビア半島の先端を回って、スウェーデンのストックホルムに寄港した。

ストックホルム入港

ストックホルム(スウェーデン)入港_s

 観光地としても、キレイに整備されている感じだな…。

 そして、わずか1日で、フィンランドのヘルシンキに寄港している…。

ヘルシンキ入港

ヘルシンキ(フィンランド)入港_s

 特筆すべきは、たぶんこの海域でだと思うのだが、やたらNATO海軍と親善訓練を、行っているんだよ…。

NATO加盟国海軍士官(ベルギー、ドイツ、デンマーク、オランダ、英国、米国)に対する乗艦研修

NATO加盟国海軍士官(ベルギー、ドイツ、デンマーク、オランダ、英国、米国)に対する乗艦研修2_s

親善訓練 デンマーク海軍艦艇(NATO軍)「ESBERN SNARE 」

親善訓練 デンマーク海軍艦艇(NATO軍)「ESBERN SNARE 」_s

親善訓練 フィンランド海軍

親善訓練 フィンランド海軍_s

 その理由だが…。ロシアに対する牽制くらいしか、思いつかんな…。

ロシアの軍事行動と周辺国の警戒

ロシアの軍事行動と周辺国の警戒_s

 まあ、これだけ軍事的な行動をされたんじゃ、周辺国は警戒せざるを得ないだろう…。
 スウェーデンの危機感は、相当なものだ。今年の1月には、二次大戦中の「戦争パンフレット」を復刻して、国民に配布した、って話しだ。
( http://lifeupupup.com/sweden-war-book-1862 このサイトに、載っていた。画像も、そこからお借りした。)

スウェーデンの戦争パンフレット

パンフレット1_s

 核攻撃まで、想定されているようだな…。

パンフレット2_s

 すぐに持ち出せるように、荷造りしとけということのようだ…。日本の、災害に備える防災グッズみたいなものか…。

パンフレット3_s

 避難経路の指示だ…。やはり、普段からどう避難するのか、考えておかないとな…。

ロシア軍の予想侵攻ルート

ロシア軍の侵攻ルート_s

 まず、フィンランドとエストニア・ラトビア・リトアニアのバルト三国に侵攻して、それからポーランドへと攻め入るだろう…、という予想のようだ…。

 しかし、これをロシア側から見ると、無理からぬところもある…。ソ連崩壊後、旧ソ連の衛星国は、次々と寝返って、NATOに加入した…。ロシア側からしたら、ジワジワとNATOが攻め入って来てる感じなんだろう…。

拡大するNATO

拡大するNATO_s

 2004年には、バルト三国どころか、ルーマニア、ブルガリア、スロバキアまでNATOに加盟した。
(プーチン政権は、2000年から開始。クリミア併合は、2014年。)

ロシア周辺のNATO非加盟国

中・東欧、地図_s

 あとは、ベラルーシとウクライナくらいしか、残っていない感じだ…。それで、ウクライナ東部を実効支配しようとしたってわけか…。

 しかし、どうなんだ…。海自がこの海域に到達するまでは、3か月くらい掛かってるぞ…。助太刀はおろか、補給任務を担うにしろ、到底急場の用には、間に合わんだろ…。
しかし、これはあくまで遠洋練習航海なわけで、各寄港先で歓迎セレモニーとか、演習とか、一定の行事をこなしつつの話しだ。
そういうものを一切省いて、水と食料と燃料の補給だけに専念したら、相当短縮できるには、できるんだろう。それでも、1か月半くらいは、掛かるんじゃないのか…。そういう状況で、ロシアの軍事行動の牽制になるのかは、相当疑問な感じだ…。
 また、あれか…。ユーラシア大陸の東のへりから、日本にロシアを牽制させようとする、日英同盟の時の大戦略か…。日本が、NATO側に立つ…、その意思表示だけで、充分に牽制の役には立つ…、って話しなのか…。そして、それに乗っかると、梯子をはずされて、孤立するっていう結末だけは、もうゴメンだぞ…。
 いずれ、日本は中国とロシアの二国を、同時に敵に回す愚だけは、何としても回避しないとな…。

 ロシアは、エネルギー資源大国で、特に天然ガスについては、ヨーロッパ各国は大きくそれに依存している。

欧州の天然ガスパイプラインの分布

欧州における天然ガスパイプライン_s

 このように、ヨーロッパ全土に網の目のようにガスパイプラインが敷設され、その相当数がロシアからの天然ガスだ。

各国の依存度

天然ガス供給のロシア依存度_s

 バルト三国とフィンランドは、100%だ。ブルガリア、スロバキア、ハンガリーの旧衛星国は80%以上、スロベニア、オーストリア、ポーランドが60%くらい、意外なところでは、トルコが6割くらいの依存度だ。ドイツが、4割くらい(フランスからも、電力供給を受けてるはずだが、旧東独をかかえているんで、その関係もあって、ロシアから天然ガスも買っているんだろう)。
 原子力大国のフランスは、16%…。そこから、電力の供給を受けているスイス、ルクセンブルクは2割くらい。
 北海油田のある英国が0なのは、当然だ。同じく、北海油田のあるノルウェーが見当たらないな…、と思ったら、EU未加盟国だった。スウェーデンは、ノルウェーから供給を受けているんだろう。
 スペイン、ポルトガルは、むしろ北アフリカ方面から供給を受けているんだろう。ジブラルタル海峡のあたりに海底パイプラインでも、有るんじゃないか。マップだと、ちょっと赤いラインが見えてるが、途中で切れてて、判然とはしないな…。

ヨーロッパ諸国のエネルギーの相互依存

ヨーロッパ諸国のエネルギーの相互依存_s

 ああ、こっちのマップで見ると、明かだ…。やはり、ジブラルタル海峡にパイプラインが敷設されてるようだ…。
 面白いのは、イタリアだ。南部は、北アフリカ方面から、北部は、ロシア方面から供給されてるようだ…。
 スウェーデンは、ノルウェーからではなく、デンマーク経由で北海油田地帯の天然ガスの供給をうけているんだな…。
 スウェーデンとノルウェー間には、スカンジナビア山脈ってのがあって、とてもパイプラインは敷設できない地形のようだ…。

スカンジナビア半島の地形図
スカンジナビア半島、地形図_s

 こんな風に、各国とも対立しながら相互に依存関係にある…、ということだ。
 しかし、「依存関係」というものは、直ちに「従属関係」に陥りがちだ…。
 「独立」を保持するには、「相互」依存関係(平たく言えば、「持ちつ、持たれつ」の関係)である必要がある。
 そこが、難しいところだな…。