ゼレンスキー大統領が自軍の戦死者数に言及、3.1万人の兵士が死亡
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/president-zelenskiy-mentions-the-number-of-soldiers-killed-in-battle-31000-soldiers-died/
『ウクライナ政府が自軍の戦死者数に言及することは滅多にないが、ゼレンスキー大統領は25日の記者会見で「この戦争中に3万1,000人のウクライナ軍兵士が死亡した」「反攻作戦に向けて準備された4個旅団には現在も約束された装備が届いていない」と明かした。
参考:Zelensky: 31,000 Ukrainian soldiers killed in Russia’s war
参考:Зеленский рассказал о плохой подготовке резервов и как 4 бригады не могли воевать
参考:Зеленський пояснив, навіщо Сирський проводить аудит в армії
参考:У нас був “кулак” для контрнаступу, але чотири бригади досі “голі”, – Зеленський
参考:Deep State Digest: 25 лютого
ゼレンスキー大統領の言及が事実なら「4個旅団分=1万6,000人相当」が後方で宙に浮いてことになる
ウクライナ政府が自軍の戦死者数に言及することは滅多になく、ゼレンスキー大統領が2022年3月に約1,300人と、4月に2,500人~3,000人と、ザルジニー総司令官が8月に約9,000人と、ポドリャク大統領府顧問が12月に10,000人~13,000人と明かしただけだったが、ゼレンスキー大統領は25日の記者会見で「この戦争中に3万1,000人のウクライナ軍兵士が死亡した」「ロシア軍の死者は18万人で負傷者と合わせると50万人の死傷者を出した」「戦場から何人が離脱したのか敵に知られたくないので我々の負傷者については明かしたくない」と述べた。
出典:PRESIDENT OF UKRAINE
この数字についてKyiv Independentは「戦争中の死傷者数について政府は厳重に口を閉ざしてきた」「ゼレンスキー大統領は言及した数字がロシアの侵略(2014年~2024年)全体をカバーするものなのか、本格的な侵略の2年間のみをカバーするものなか明かさなかった」「この数字は公式に戦死と計上されたものだけで実際の戦死者はもっと多いだろう(行方不明に分類されている兵士の大半が戦死している可能性が高いという意味)」と報じているが、他の現地メディアは「3万1,000人」が2022年以降の戦死者だと解釈している。
ゼレンスキー大統領は予備戦力とローテーションの問題についても「総司令官が監査を実施中で状況を整理して予備戦力の問題に終止符を打つ必要がある」「兵士にとって休息は戦うのと同じぐらい重要だ。軍は適切な予備戦力を準備すべきだったが何もしてこなった。これは事実であり、我々は自身の欠陥を特定して修正しなければならない。そのためには何が起こっているのかを理解する必要がある」「誰がオフィスに居座っているのか、なぜそこにいるのか、何人が動員されたのか、そのうち何%が前線で戦ったのか解明しなければならない」と言及。
出典:Головнокомандувач ЗСУ
さらに「我々は反攻作戦のための戦力を持っていた。これについて多くの人々が知っているはずだ。どれだけ準備されていたか詳しく述べるつもりはないが、現在でも(反攻作戦に向けて準備していた)4個旅団は裸のままで約束された装備が届いていない。こんな状態で4個旅団が戦えただろうか?彼らは装備が届くの待ち続けたため戦闘に参加しなかった。私は彼らを非難するつもりはない。しかし疑問があり、それに応える必要がある。そのための監査が行われている」と付け加えた。
ウクライナは反攻作戦に向けて12個旅団(9個旅団は欧米で訓練を行い編成+3個旅団は国内で訓練を行い編成)=6万人相当の戦力を準備していたが、ゼレンスキー大統領は「このうち4個旅団分の装備が現在も届いていない」と述べており、1万6,000人相当の戦力が後方で宙に浮いて格好だ。
出典:Генеральний штаб ЗСУ
与党(国民の奉仕者)のデービッド・アラカミア議員も23日「シルシキー総司令官の監査によって一度も前線に出たことがない兵士を8,000人発見している」「この数字は監査が進めばもっと増えるだろう」「(発見された兵士が所属する部隊には)既に命令が下され、増援やローテーションとして前線に赴く準備を行っている」と述べており、一度も前線に出たことがない兵士の数がどこまで増えるのか注目される。
因みにゼレンスキー大統領は「(ウクライナ支援において)EUがリーダーシップを発揮しているものの米国の先行きが不透明で、これが幾つかの国に影響を及ぼしているため難しい時期になるだろう」「3月から4月にかけては政治的にも財政的にも様々な圧力の波が押し寄せてくる」「ロシア軍は5月下旬から初夏に実施する攻勢の準備を行っている」「ウクライナは今後数ヶ月以内にパトリオットシステムを10台導入し、これを前線に近い場所で使用できれば敵は撤退するだろう」とも言及している。
出典:U.S. Army photo by Eugen Warkentin パトリオットシステム
10台のパトリオットシステムが何を指しているのか不明だが、RTX(旧レイセオン)のヘイズ最高経営責任者は昨年「パトリオットシステムの年間生産量を12基まで引き上げた」「2024年末までに5基のパトリオットシステムをウクライナに引き渡す予定だ」と明かしている。
ニューヨーク・タイムズ紙は2023年10月「古いウクライナ製レーダーシステムで作動するパトリオットシステムのテストがホワイトサンズで行われている」と報じ、ウクライナのカムイシン戦略産業相も2024年1月「FrankenSAMとは西側製防空システムの一部をウクライナ軍で使用されている旧ソ連製防空システムに統合するプロジェクトだ」「米国製ミサイルが入ったコンテナを旧ソ連製ランチャーに統合するだけの取り組みもあれば、米国製ランチャーをS-300のような防空システムに統合する取り組みもある」と言及。
出典:Photo by Sgt. 1st Class Jason Epperson
シルスキー総司令官も24日「我々はロシアの占領者に対して近い将来、空中でも非対称な対応をとることになると思う。ロシア軍の航空機はさらに燃えることになるだろう」と、ウクライナ人が運営するDEEP STATEも25日「パトリオットシステムを構成する高価なAN/MPQ-53を置き換えるため、PAC-2弾(MIM-104CやMIM-104D)とS-300で使用されているレーダー(もしくはウクライナ製レーダー)が統合されたという情報がある」と言及している。
以上の情報を加味すると、ゼレンスキー大統領は言及した「10台のパトリオットシステム」とは「AN/MPQ-53やAN/MPQ-65を除いたシステム」と「ウクライナ製レーダー」の組み合わせである可能性が高く、中々興味深い話だ。
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※アイキャッチ画像の出典:PRESIDENT OF UKRAINE
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投稿者: 航空万能論GF管理人 ウクライナ戦況 コメント: 27 』