戦況はロシア軍優勢に見えるも、ロシア経済はすでに破綻寸前https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/84437
『漁夫の利に笑い止まらぬ中国、ロシアは偉大なるポチョムキン村に? 2024.11.18(月) 杉浦 敏広 followフォローhelp ロシア 安全保障 経済 シェア4
ロシアのソチで開かれた第21回バルダイ・クラブに出席したプーチン大統領(11月7日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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10枚の画像を見る プロローグ/欧州情勢不安定化 欧州では今年(2024)9月と10月に多くの選挙が実施され、極右が台頭。欧州情勢は混沌としてきました。
ドイツでは9月に3州で州議会選挙が実施され、ネオナチ極右AfD(ドイツのための選択肢)が躍進。
オーストリア(墺)では9月29日に総選挙(下院/計183議席)が実施され、下馬評通り、移民反対を掲げる親露派ネオナチ極右政党『墺自由党』が29.2%の得票率で第一党に躍進。
中道右派の政権与党『墺国民党』は第二党(26.5%)に沈みました。
しかし過半数を制した政党はなく、墺大統領は第二党になった国民党に連立組閣交渉を要請しました。
10月26日にはジョージア議会選挙が実施され、親露派与党『ジョージアの夢』が過半数を制し、勝利。
10月20日に実施されたモルドバ大統領選挙では過半数を制した候補がでず、11月3日に上位2候補による決選投票が実施され、親欧米派のM.サンドゥ候補が勝利しました。
注目の11月5日の米大統領選挙では事前の接戦予測とは異なり、D.トランプ候補の圧勝となりました。
来年1月26日はベラルーシ大統領選挙が予定されていますが、これは現職A.ルカシェンコ氏圧勝の構図です。
ロシア軍が2022年2月24日にウクライナに全面侵攻開始してから11月18日でプーチンのウクライナ侵略戦争は999日目となり、11月19日に1000日目を迎えます。
短期決戦・勝利のはずが長期戦となり、ウクライナ戦争はプーチン大統領(72歳)にとり誤算の連続となりました。
ちなみに、筆者はウクライナ戦争におけるプーチン大統領最大の誤算は、ウクライナ侵攻開始後、油価(露ウラル原油)が下落したことだと考えております。
油価はロシアの生命線です。
油価下落により財政が悪化して、ロシア経済は戦争経済に突入。戦争長期化に伴い、ロシア軍・ウクライナ軍ともに兵器不足・兵員不足が表面化しました。
今後ウクライナ戦線では降雪季節となり、軍用車輛の軍事行動にも制限が出てくるものと推測します。これが、今回10月のロシア軍大攻勢の背景かもしれません。
プーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記は今年6月、露朝軍事同盟「包括的戦略パートナーシップ」を平壌で調印。
この条約は、ロシアでは10月24日に露下院採択、11月6日上院承認、9日にプーチン大統領が署名して批准されました(北朝鮮でも批准成立)。
この軍事同盟がプーチン・金正恩両氏にとり吉と出るか・凶と出るか、今後の戦況が注目されますが、筆者は両独裁者にとり諸刃の剣になると考えます。
ウクライナ東部2州では露軍の猛攻が続いており、露クルスク戦線では露・朝枢軸軍5万人に対し、ウクライナ軍が防衛しています。
北朝鮮軍のクルスク戦線投入により、露クルスク州に進軍したウクライナ精鋭部隊はウクライナ東部2州への転進が不可能になりました。
ウクライナ東部戦線も燃えています。
ウクライナ東部兵站補給要衝の地クピャンスクでは既に戦闘開始、ポクロウシクとクラホベにはロシア軍が指呼の間に迫っており、クピャンスクやポクロウシク、クラホベなどがロシア軍に占領されると、ウクライナ軍は総崩れとなる可能性大です。
一方、ウクライナ軍が防衛に成功すれば、油価が低迷している今日、ロシア軍の戦費や兵站補給に支障がでてロシア軍の継戦能力低下は不可避と筆者は予測します。』
『第1部:2油種(北海ブレント・露ウラル)週次油価動静(2021年1月~24年11月) 最初に、2021年1月から24年11月までの代表的2油種の週次油価推移を概観します。
北海ブレントはFOB(Free on Board=本船渡し)スポット価格、ウラル原油は露黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB油価です。
原油需給は均衡しており、地政学的要因以外に油価上昇材料は現状存在しません。
ゆえに油価は下落傾向にて、油価下落はロシア財政の悪化を招いています。
北海ブレントは軽質・スウィート原油(硫黄分0.5%以下)。
ロシアの代表的油種ウラル原油は、西シベリア産軽質・スウィート原油と南部ヴォルガ流域の重質・サワー原油(同1%以上)のブレンド原油で、中質・サワー原油。
中国に輸出されているシベリア産ESPO原油は軽質・スウィート原油です。
米国は2022年5月度よりロシア産石油(原油と石油製品)の輸入を停止しました。
一方、日本が2022年5月まで輸入していた露産原油3油種(S-1ソーコル原油/S-2サハリン・ブレンド/シベリア産ESPO原油)はすべて軽質・スウィート原油で、日本はウラル原油を輸入していません。
油価は2021年初頭より22年2月まで上昇基調でしたが、ウラル原油はロシア軍のウクライナ侵攻後下落開始。
2022年4月のOPEC+によるサウジアラビア自主減産合意を受け、油価は上昇開始。
その後、油価は乱高下を繰り返しながら、今年4月以降の油価は下落傾向に入りました。
露ウラル原油の2024年10月28日~11月1日週次平均油価は$60.31/bbl(前週比▲$2.30)と下落。
北海ブレントとウラル原油の値差はロシア軍のウクライナ侵攻後、一時期最大バレル$40の大幅値差となりましたが、最近は値差$13まで縮小。
しかし原油性状の品質差による正常値差は$2~3程度ゆえ、依然としてウラル原油のバナナの叩き売り状態が続いています。
これが欧米による対露経済制裁効果です。
この安値ウラル原油を輸入し、自国で精製して石油製品(主に軽油)を欧州に国際価格で輸出して、“濡れ手に粟”の状態がインドです。
しかしこれはビジネスそのものであり、政治的動機はありません。付言すれば、中国がESPO原油輸入量を拡大しているのも同じ理由です。
出所:EIA資料より筆者作成/黒色縦実線:2022年2月24日/横線赤字:露国家予算案想定油価/黒字:油価実績』
『第2部:ロシア経済/油価(露ウラル原油)と露GDP実質成長率の相関関係 ロシア経済は油上の楼閣にて、油価はロシアの生命線です。もちろんロシア経済のみならず、石油・ガスに依存する国々の経済は「油上の楼閣」構造になっています。
アゼルバイジャンのI.アリエフ大統領はCOP29の会場で「石油・ガスは天の恵みである」と公言。
米大統領選挙で当選したトランプ候補は、「掘って、掘って、掘りまくれ」と号令をかけています。
世界最大の産油国たる米国が原油増産すれば、油価は今後さらに下落していくこと必至です。
新生ロシア連邦のB.エリツィン初代大統領は油価低迷により退陣。後任の新生ロシア連邦2代目V.プーチン大統領は油価上昇を享受しました。
では、ロシア経済はどの程度油価(ウラル原油)に依存しているのか、数字で検証したいと思います。
露ウラル原油の油価と露GDP(国内総生産)実質成長率の関係は下記グラフの通りです。
このグラフをご覧いただければ、油価と露GDP成長率の間には強い正の相関関係が存在することが一目瞭然です。
GDP成長率=消費(主に個人消費)+投資(主に設備投資)+国家支出(公共投資等)+外需(輸出-輸入)です。
2022年は油価上昇したのにGDP成長率がマイナスになったのは、ウクライナ侵略戦争の影響です。欧米各国の対露経済制裁措置強化策により、露経済はマイナス成長となりました。
一方、2023年の油価(ウラル原油)は前年比で下落したのに、GDP成長率がプラス成長(+3.6%)となったのは、「国家購買」が増大したからです。
2023年1~11月度の「国家購買」は5.55兆ルーブルと公表されていましたが、通期(1~12月)は未発表となりました(1ルーブル約1.6円)。
昨年の露GDPは約170兆ルーブルゆえ、GDP成長率+3.6%はほぼこの「国家購買」額に相当するものと推測されます。
「国家購買」が何を意味するのか不明ですが、武器弾薬購入費や国防産業への発注費と考えれば、平仄は合います。
ある経済評論家が、「ロシア経済の2023年GDP成長率は+3.6%となり、好調である」とテレビで解説していましたが、ロシア経済の実態を知らない評論家の机上の空論と言わざるを得ません。
出所:露ウラル原油は露財務省統計資料、露GDP成長率はIMF(国際通貨基金)2024 Oct. 統計資料より筆者作成』
『第3部:油価 (露ウラル原油) とロシア国庫歳入に占める石油・ガス税収推移 都合の悪い情報は隠す。
これは情報操作の鉄則です。ゆえに発表されている数字よりも発表されていない数字および発表されなくなった数字の方がより重要となります。
プーチン大統領は「ロシア経済は順調である」と豪語していますが、事実は正反対です。
従来水面下で深く静かに進行していたことが、徐々に顕在化・表面化してきました。典型例を3つ挙げます。
1つ目はロシア国家歳出の月次支出項目です。
露財務省は2021年12月までは歳出欄の個別支出項目に数字が明記されていましたが、2022年1月以降は白紙になりました(歳出総額のみ記載)。
従来は支出項目の国防費を数字で検証できたのですが、今では支出明細がブラックボックスになりました。
2つ目は原油・天然ガス生産量です。
生産量減少が表面化したためか、露政令により2023年3月度から露原油生産量は発表禁止。露ガスプロムは同年4月度から自社天然ガス生産量を非開示としました。
3つ目は露ガスプロムの経営悪化です。
筆者は昨年から「ガスプロムの経営悪化必至」と主張してきましたが、その通りになりました。
露コメルサント紙によれば、2023年は6290億ルーブルの純損(約1兆円)、今年1~9月度は3090億ルーブルの純損を計上しました。
筆者は、最近ロシア石油産業再編成構想が浮上した背景も同根と推測しております。
ロシア財政は油価(露ウラル原油)に依存しています。
油価と石油・ガス関連税収に強い相関関係があることは、下記グラフより一目瞭然です(出所:露財務省統計資料)。
プーチン新大統領が登場した2000年の露石油・ガス関連税収依存度は約2割。その後油価上昇とともに石油ガス税収が増加して、プーチン大統領は油価上昇を享受。プーチン権力の源泉は油価上昇です。
なお、この場合の石油・ガス関連税収とは、2018年までは炭化水素資源採取税と石油・ガス輸出関税の2種類のみで、2019年には主に石油精製業者を対象とする3番目の追加税が加わりました。
出所:露財務省統計資料より筆者作成 ギャラリーページへ 上記グラフより、油価(ウラル原油)と露石油・ガス税収の間には強い相関関係があることが一目瞭然です。
露プーチン大統領は「石油・ガス税収は3割にすぎない」と豪語しましたが、石油・ガス税収以外の税収を増税した結果にすぎません。
今ロシアで起こっていること、それはロシア経済の弱体化です。』
『第4部:ロシア国家予算案概観 最初に、2022年と2023年の期首予算案と実績を概観します。
2022年の予算案期首想定油価(ウラル原油)バレル$62.2に対し、実績は$76.1でした。 ゆえに本来ならば予算収支黒字案はさらに黒字幅拡大予定が、ウクライナ戦争により実績は大幅赤字となりました。
2023年は期首予算案$70.1に対し実績は$63.0となり、赤字幅は増大しました。
ギャラリーページへ
次に、2024年期首予算案と9月現在の予算案見通し、および現在露下院にて審議中の2025年期首予算原案を概観します(bcm=10億立方メートル)。
ロシア政府は9月30日、2025年政府予算原案(26年・27年計画)を露下院に提出。この予算原案は下院総会にて3回審議・採択後、露上院に回付されます。
露上院にて承認後、露大統領の署名をもって予算原案は成立・発効します。現状では予算原案ですが、数字が大きく変わることはなく、今年12月初旬までにはプーチン大統領が署名して発効するはずです。
註:1ルーブル=1.6円』
『第5部:ロシア国家予算案遂行状況概観
露財務省発表によれば2023年国家予算案遂行状況は下記の通りにて、油価下落により石油・ガス税収は前年比▲24%、非石油・ガス税収は+25%になりました。
非石油・ガス増収は大幅増税に起因します。
油価(ウラル原油)と生産量が下落すれば、露経済・財政を直撃。油価・生産量下落→露経済弱体化→戦費減少・枯渇となります。
これが、ウラル原油の油価動静と原油・ガス生産量が注目されるゆえんです。
ギャラリーページへ 露財務省は11月7日、今年1~10月度のロシア国家予算案遂行状況を発表しました。
しかし、露財務省サイトにはアクセス不可能なので、露各紙の新聞情報から数字を抜粋します。
今年1~10月度は赤字幅2200億ルーブル(GDP比0.1%)ですが、今年通期の歳入見通しは36.1兆ルーブル、歳出見通し39.4兆ルーブル、赤字幅3.3兆ルーブル(GDP比1.7%)です。 ただし、露ウラル原油の油価は下落傾向ゆえ、今年の国家財政赤字はさらに拡大必至と言えましょう。
』
『第6部:ロシア経済は 「戦争経済」 に突入
本稿では、露予算案に占める国防費割合推移を概観します。
ウクライナ戦争前の2021年の露国家予算に占める国防費は3.6兆ルーブル(14.4%)でした。
戦争開始後の2023年期首予算案国防費は5.0兆ルーブル(17.1%)でしたが、実績は6.4兆ルーブル(19.8%)。
今年2024年期首予算案国防費は10.8兆ルーブル(29.4%)、現在露下院で審議中の25年期首予算原案では13.5兆ルーブル(32.5%)です。
国防費は露国防省の予算案ですが、これに治安・情報費を算入すると、2023年実績は30%、24年期首予算案は39%、25年期首予算原案では41%になります。
ウクライナ戦争の行方次第では、当然さらなる国防費増大も不可避となりましょう。
ギャラリーページへ 2024年の期首予算案と25年の予算原案を見れば、ロシア経済は実質既に「戦争経済」に突入していることが一目瞭然です。
今年2024年の期首予算案国防費はウクライナ戦争前の21年実績比3倍、25年の予算原案では約4倍に膨張しています。
国防費に治安関連費用を加えると国家歳出案の約4割が治安・国防費となりますが、露大統領府の秘密資金等も勘案すれば、実質国家予算歳出案の約半分が国防・治安・情報関連費になるものと推測されます。
戦争経済は確実にロシア経済とロシア国民の生活を蝕んでいると言えましょう。
付言すれば、2023年の露GDPが+3.6%になったことに鑑み、ロシア経済は復活したと説明している人もいますが、それは正鵠を射ていません(はっきり言えば間違い)。
ロシアの国家財政支出が増えたことが、露GDPのプラス化に貢献したと理解するのが合理的です。
しかし、戦争経済がその国に持続的繁栄をもたらすことはありません。
国家支出増大により一時的にGDP成長率がプラスになったとしても、中長期的観点からはロシア経済弱体化の要因となるでしょう。
筆者は、ロシア経済は徐々にかつ確実に破滅の途を歩んでいると考えております。』
『第7部:ロシア原油・天然ガス生産量概観(2024年1月~9月度)
都合の悪い情報は隠す。都合が悪くなった情報は開示停止。
これは情報操作の基本動作にて、ロシアはこの基本動作を忠実に守っています。ゆえに、開示されている情報よりも開示されていない情報、開示停止された情報の方が重要な意味を持っています。
ロシアでは2023年4月26日付け露政令「#1074-r」により、2023年3月度分から原油生産量が発表停止となりました。
当初1年間の時限立法措置でしたが、今年に入りさらに1年間延長されました。
世界最大のガス会社、露ガスプロムも昨年から自社天然ガス生産量発表を停止しました。
今年に入り、石油製品生産量も非開示となりました。これは、石油製品生産量低下を示唆しています。
石油製品減少が何をもたらすかと申せば、国内燃料価格の上昇とインフレ高進です。
生産が順調であれば情報隠蔽は不必要にて、減少しているので情報非開示にしたと理解するのが合理的です。
これこそ欧米による対露経済制裁措置の効果であり、最近のウクライナ軍による石油精製所へのドローン攻撃の結果とも言えるでしょう。
この状態が長期化すれば、露経済のさらなる弱体化は必至です。
露プーチン大統領は核使用に言及しました。換言すれば、これはロシア国家の弱体化を別の言葉で表現したものと筆者は理解します。
「戦況の泥沼化・長期化により、核使用に言及せざるを得ない状況までプーチン大統領は追い込まれている」と理解することが正鵠を射ていると考えます。
露連邦統計庁は今年10月23日、今年1~9月度鉱工業生産指数と主要商品生産量を発表。
現状公開されている石油・石炭・ガス関連統計数字は下記の通りにて、石油(原油と石油製品)・ガス生産量に関してはほぼブラックボックスとなりました(bcm=10億立方メートル)。
生産量が低下している石炭も、早晩発表停止になるかもしれません。
出所:露連邦統計庁統計資料より筆者作成』
『エピローグ/露プーチン王朝の近未来は? 露V.プーチン大統領は今年9月12日、サンクトペテルブルクで開催された文化フォーラムの席上、露マスコミ向け記者会見に出席。
記者からの質問に答える形で、ウクライナ戦争におけるロシア側のレッドラインを明示。露大統領府サイトには、レッドラインに関する質疑応答全文が記載されています。
露大統領府プレス・リリースにはこのレッドライン部分のみ全文掲載されているので、この質問自体ヤラセで、欧米に警鐘を鳴らす意味での質疑応答・レッドライン掲載と筆者は理解しました。
関連部分を一部訳出します。
「欧米がウクライナに対し長距離ミサイル使用を許可する場合、それは取りも直さず、ウクライナ戦争においてNATO・米国・欧州諸国が直接戦争に参入することを意味するので、これは紛争の本質を変えることになる」
(ロシア語原文)Если это решение будет принято, это будет означать не что иное, как прямое участие стран НАТО, Соединённых Штатов, европейских стран в войне на Украине. Это их прямое участие, и это уже, конечно, существенным образом меняет саму суть, саму природу конфликта.
上手の手から思わず水が漏れました。
今までクレムリンは一度も「戦争」という言葉を使ったことがありません。クレムリンにとりウクライナ戦争はあくまで「特別軍事作戦」であり、「対テロ作戦」です。
ところが、プーチン大統領自ら「ウクライナ戦争」という言葉を使ったのです。
プーチン発言の中に、もう一つ注目すべき一句があります。彼は続けて次のように述べています。
「すなわち、これはNATOや米国、欧州諸国がロシアと戦うことを意味する。もしそうなれば、この紛争の本質が変化し、我々はそれ相応の対応を迫られることになる」
「それ相応の対応」が何を意味するのか不明ですが、従来の文脈から考えれば「核使用」となり、「ウクライナに対する長距離精密ミサイル使用容認」がレッドラインであることが透けて見えてきます。
換言すれば、プーチン大統領はそれほど「欧米による長距離精密ミサイルの対ウクライナ供与・使用容認を恐れている」ことになります。
露国家予算案の戦費不足が表面化してきました。
今年5月に誕生した新内閣は戦時内閣です。プーチン大統領が経済専門家を国防相の重職に任命したことは、ウクライナ戦費捻出の必要性を物語っています。
依然として戦争終結の姿は見えず、中国は漁夫の利を得ています。
習近平国家主席にとっては内心笑いが止まらないことでしょう。口先介入だけで、熟柿が落ちてくるのを待っていればよいのですから。
中国の利益=ロシアの損失であり、これは莫大な国富がロシアから中国に移転している構図です。
換言すれば、「ロシアの国益」を標榜するプーチン大統領は実態としてロシアの国益を「毀損」している構図にて、ロシアの対中資源属国化は今後ますます深化していくことになるでしょう。
プーチン大統領は2024年2月29日に2023年度の大統領年次教書を発表。ウクライナ戦争勝利に自信を示し、成果を誇示。
「ロシア経済は順調に発展している」と語りましたが、実態やいかに?
露財務省発表では、2023年1~11月の「国家購買」は5.55兆ルーブルでした(以後、発表停止)。
一方、露連邦統計庁発表によれば、2023年の露GDPは172兆ルーブルです。仮に2023年通期の国家購買を6兆ルーブルと仮定すれば、この国家支出はGDPを3.6%押し上げる主因となります。
「戦争経済」は縮小再生産にて、国家が戦争経済により持続的発展・繁栄を享受することは不可能です。
ロシア経済は今、偉大なる「ポチョムキン村」(見せかけの繁栄)への道を歩んでいると筆者は考えます。
プーチン大統領はついに、自分の周辺を身内で固める独裁体制構築に着手しました。
人治国家プーチン王朝の近未来は、実は我々が想像している以上に脆弱なのかもしれません。 』