『まさに現在、多くの経営者・投資家・経済学者が注目している論点です。
あなたの問いを一言で表現すると、
「AIは企業間格差を縮小する技術なのか、それとも拡大する技術なのか」
という問題です。
現在のところ、有力な分析の多くは、
AIは、少なくとも2030年代までは格差拡大型の技術になる可能性が高い
と見ています。
第一次IT革命との比較
歴史を見ると分かりやすいです。
1980年代
コンピュータ導入
↓
業務自動化
↓
生産性向上
が始まりました。
しかし、
すべての企業が同時に導入できたわけではありません。
結果として
ウォルマート
トヨタ
GE
デル
のような企業が圧倒的な競争優位を獲得しました。
特にウォルマートは、
店舗運営よりも
情報システムへの巨額投資
によって競争力を獲得した企業です。
AI時代はさらに厳しい
AI投資には実は4層あります。
「第1層 ハードウェア」
GPU
クラウド
ネットワーク
「第2層 データ基盤」
データレイク
統合DB
API
「第3層 業務改革」
業務標準化
手作業削減
自動化
「第4層 AI活用」
AIエージェント
予測
最適化
自律運転業務
企業が欲しいのは第4層ですが、
実際には第1~3層を先に整備しなければなりません。
日野自動車が実施したような基幹刷新は、
第2層・第3層に相当します。
なぜ大企業が有利なのか
簡単な計算です。
仮にAI化の総投資額が
50億円
だとします。
売上
5兆円企業
なら
売上比 0.1%
です。
しかし
500億円企業
だと
売上比 10%
になります。
負担感が100倍違う。
つまり、
AI投資は本質的に固定費です。
固定費の大きな技術革新は、
常に大企業有利になります。
「ネットワーク効果も発生する」
さらに恐ろしいのは、
AIの性能が
データ量
に依存することです。
例えば自動車業界。
世界販売台数
1000万台
を持つ企業と
10万台
しか持たない企業。
収集できるデータ量が全然違います。
すると
AI性能
↓
顧客満足向上
↓
販売増加
↓
さらにデータ増加
という正の循環が生まれます。
「勝者総取り」現象
デジタル経済では昔から
Winner Takes Most (勝者総取り)
が起きやすい。
例えば
Google
Amazon
Microsoft
NVIDIA
です。
AIはこれをさらに強化する可能性があります。
なぜなら、
AIが優秀であるほど
業務効率
↓ 利益率
↓ 追加投資
が可能になるからです。
一方で中堅企業にもチャンスがある
しかし最近は別の見方も出ています。
それは
生成AIによってITコストが急落する
という考え方です。
以前なら
100人/月
必要だった開発が
20〜30人/月
で済む可能性があります。
また、
クラウド型AIサービスの登場で
自社AIを開発
しなくても済む。
つまり
AIを所有する
↓
AIを利用する
への転換です。
これは中堅企業にとって有利です。
おそらく今後起こること
私が最も可能性が高いと思うのは、
企業が3層に分かれるシナリオです。
「第一グループ」
AIネイティブ企業
Microsoft
Amazon
Google
NVIDIA
TSMC
など。
AIを自ら開発し、 世界標準を握る。
「第二グループ」
AI活用企業
トヨタ
日立
三菱重工
伊藤忠
のような大企業。
AIは外部から取得するが、
基幹システムを刷新し、 AIを使いこなす。
今後の勝者候補。
「第三グループ」
レガシー企業
古い業務
紙文化
属人管理
が残る企業。
AI導入が進まず、
競争力が徐々に低下。
「国家レベル」でも同じ問題が起きる
実はこの現象は企業だけではありません。
AI時代は
国家
↓
企業
↓
個人
すべてで格差拡大が起きる可能性があります。
「AIインフラを持つ国」
米国
中国
と、
「持たない国」との差です。
これはあなたが関心を持たれている第四次産業革命を考える上で極めて重要な視点です。
私の見方
私は、
「AIそのもの」よりも「AI導入前の土台整備能力」が企業格差を決める
と考えています。
実はAIモデル自体は、今後どんどん安くなります。
しかし、
・業務知識の構造化
・データ統合
・API整備
・レガシー刷新
は企業固有の資産であり、外から買うことができません。
つまり将来の競争は、
「誰が一番賢いAIを持つか」
ではなく、
「誰が一番早く、自社をAIが働ける組織へ変えられるか」
の競争になる可能性が高いのです。
その意味で、日野自動車のような基幹刷新は単なるIT更新ではなく、「AI時代への入場券」を取得するための投資と見ることができます。
そして、「その入場券を取得できる企業」と「できない企業」の間には、2030年代にかなり大きな生産性格差が生じる可能性があります。』