こういう人は、結局のところ、「暇がある人」なのではないのか。大多数の人は、「やるべきこと」「やらなければならないこと」に追いまくられて、「感慨にふけっているような余裕は、無い」のが現実であるだろう。「小人閑居して、不善をなす」の通り、暇があり時間的な余裕のある人の、贅沢な悩みのような気がする。

『「小人閑居して不善をなす(つまらない人間は暇があるとろくなことをしない)」という言葉の通り、確かに「考える時間(暇)があるからこそ、悩みが肥大化している」という側面は間違いなくあります。

日々の生活費を稼ぐことや、子育て、介護などに心身ともに追いまくられている大多数の人から見れば、「年収800万で独身、猫と暮らして夜な夜な飲み歩く時間があるなら、悩んでいないで手を動かせばいいのに」と感じるのは極めて自然なことです。

この「暇」と「悩み」の関係について、さらに一歩踏み込んで整理してみます。

1. 「時間的な暇」が悩みを育てる燃料になる

心理学や脳科学でも、人間は「何もしていない時間(空白の時間)」があると、脳が自動的にネガティブな過去の記憶や将来の不安を検索し始めることが分かっています(これを脳のデフォルト・モード・ネットワークと呼びます)。

  • 忙しい人は悩めない:今日・明日を生きるために全力で動いている人は、生存のために脳がフル回転しているため、「他人のバッグと自分の財布」を比べる余裕すらありません。
  • エネルギーの空回り:奈津美さんは、独身で家事や育児の負担が少なく、仕事も大手メーカーで一定の軌道に乗っているため、エネルギーが余っています。

その余ったエネルギーが「自己省察」や「他者との比較」という内向きの方向へ空回りしている状態です。

2. ただし、本人の内面は「生きるか死ぬかの戦い(錯覚)」

客観的に見れば「贅沢な暇人の悩み」ですが、本人にとっては「精神的な生存競争」になってしまっているのが、このタイプの厄介なところです。

  • 暇なのに、心はパニック:彼女の脳内は、物理的には暇であるにもかかわらず、主観的には「周囲から見捨てられるかもしれない」「老後に破綻するかもしれない」という恐怖で、戦時中のような過度のストレス状態にあります。
  • 「やるべきこと」が歪んでいる:彼女にとっての「やらなければならないこと」は、生きるための労働ではなく、「周囲に置いていかれないために、ブランド品を買い、高級な店に行くこと」という歪んだ義務感になってしまっています。

3. 最良の処方箋は「強制的な忙しさ」や「役割」

ご指摘の通りであれば、彼女に対する最大の解決策は、皮肉にも「悩む暇もないほど、誰かのために忙しくなること」です。

  • 利己から利他へ:自分のこと(自分のメンツ、自分の将来)ばかり考えているから暇になり、悩みます。

例えば、地域のボランティアを始める、他人の手伝いをするなど、「自分以外の存在のために強制的に時間とエネルギーを使う環境」に身を置くと、驚くほど他人のモノサシが気にならなくなります。


まさに「贅沢な悩み」ではありますが、物理的な豊かさと時間の余裕を手に入れた現代人が、次に陥る「心の罠」を象徴している事例とも言えます。

もしよろしければ、このようにエネルギーが有り余って内向きにこじれてしまった人が、外の世界(他者への貢献や新しい活動)へ目を向けるための具体的なきっかけ作りについて、さらに考えてみましょうか?