『中東の2大国であるトルコとサウジアラビアの原発戦略は、地政学的な思惑やエネルギー事情の違いを反映しており、国際社会からは対照的、かつそれぞれ非常に野心的なアプローチとして分析されています。 [1, 2]
両国の戦略と国際的な分析の要点は以下の通りです。
トルコの原発戦略:「全方位多角化」と「ロシア依存からの脱却」
トルコは「2050年代までに原発による発電容量を2,000万kW(20GW)超にする」という巨大な目標を掲げています。大型原発3カ所(計12基)の建設に加え、小型モジュール炉(SMR)も組み合わせて導入する計画です。 [3, 4]
- 分析①:驚異的な「全方位多角化」とそのリスク
トルコは現在、地中海沿岸の「アックユ原発」でロシア(ロスアトム)主導の建設を進める(2026年稼働目標)一方で、第2・第3原発については中国、韓国、カナダ(キャンドウ・エナジー)などと交渉を行っています。さらに、SMRに関しては米国や英国と協議しています。
専門家からは、これほど異なる複数の国の技術を同時並行で導入する戦略は「華麗なエネルギー多角化の推進」と評価される一方、規制手続きや互換性、財政面での「規制上の悪夢(障害)」になりかねないと懸念されています。 [1, 3, 4, 5, 6]
- 分析②:ロシア依存の低下と経済制裁の直撃
トルコ初の原発であるアックユ原発は、ウクライナ侵攻や2025年以降の中東情勢緊迫化に伴う米国の対露経済制裁により、ロシアからの資金送金が差し止められるなどの影響が出ており、建設に遅れが生じていると分析されています。
トルコとしては、エネルギーの「ロシア依存」を薄めるために米国製のSMR導入を急ぎたい本音があり、安全保障上のバランスを模索しています。 [2, 3, 7, 8, 9]
サウジアラビアの原発戦略:「ビジョン2030」と「核の潜在能力(ヘッジ)」
サウジアラビアは、脱石油・経済多角化を掲げる「ビジョン2030」の一環として、初の大型原発(2基計画)およびSMRの導入を目指しています。
2025年末以降、プロジェクトに「具体的な進展」が見られると報じられています。 [10, 11, 12, 13, 14]
- 分析①:経済的合理性よりも「技術的自立」を優先
シンクタンク等の分析では、サウジアラビアの豊富な太陽光発電や天然ガスのコストに比べ、原発の導入は必ずしも経済的に最も有利な選択肢ではないと指摘されてきました。
しかし、サウジは「ウランの国内採掘から低濃縮ウランの製造まで、自国で完結する原子燃料サイクル」の確立にこだわっています。
これは、単なる電力確保ではなく「高度技術を持つ先進国家」としての地位確立と、将来のエネルギー主権を握るための戦略と分析されています。 [2, 15]
- 分析②:トランプ米政権とのディールと「核不拡散」を巡る駆け引き
サウジの原発戦略で最も注目されているのが、米国との「包括的取引(グランド・バーゲン)」です。
サウジは米国からの原子力技術供与や安全保障上のコミットメントを求めてきました。
国際社会が懸念してきたのは、サウジが「ウラン濃縮やプルトニウム再処理を自発的に放棄する(UAEが受け入れた通称:ゴールド・スタンダード)」ことを拒否している点です。
イランとの緊張関係を背景に、サウジは将来的に軍事利用(核兵器保有)へ転用できる「戦略的柔軟性」を残そうとしていると分析されています。
米トランプ政権が核不拡散合意を条件から除外する方針を示すなど、米国の支援獲得に向けた政治的ディールが加速しています。 [8, 13, 15, 16, 17, 18, 19]
比較まとめ
| 評価軸 | トルコ 🇹🇷 | サウジアラビア 🇸🇦 |
|---|
| 主たる動機 | 化石燃料の輸入依存脱却、エネルギー自給率向上 | 脱石油(原油を国内消費せず輸出に回す)、経済多角化 |
| 外交姿勢 | ロシア、中国、欧米、韓国を天秤にかける「全方位」 | 米国との同盟・ディールを軸にしつつ、戦略的自立を狙う |
| 核不拡散への懸念 | 比較的低い(民生利用に徹する姿勢) | 高い(イランへの対抗から、核武装の選択肢を残す意図を警戒) |
日米韓の「第三国へのSMR輸出協力」という観点から見ると、トルコはロシア依存を減らしたい米国側にとってSMRの格好の売り込み先(顧客)です。
一方、サウジアラビアは巨大な資金力を持つ魅力的な市場ですが、核不拡散の国際ルールや地政学リスクとのバランスをどう取るかという、より高度な政治判断を伴う対象として分析されています。 [2, 3, 8, 17]
[1] https://forbesjapan.com
[2] https://www.sciencedirect.com
[3] https://jp.reuters.com
[4] https://www.fepc.or.jp
[5] https://www.jetro.go.jp
[6] https://emb-media.com
[7] https://www.nikkei.com
[8] https://www.ifri.org
[9] https://www.nuclearbusiness-platform.com
[10] https://www.jetro.go.jp
[11] https://world-nuclear.org
[12] https://unidir.org
[13] https://www.nikkei.com
[14] https://www.arabnews.jp
[15] https://www.inss.org.il
[16] https://jp.reuters.com
[17] https://inpsjapan.com
[18] https://www.govinfo.gov
[19] https://nsbt-japan.com
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