第一報:米軍がベネズエラ首都カラカスを深夜に急襲。AIでOSINTを行うとこれだけ詳細に背景情報がわかる
https://blogs.itmedia.co.jp/serial/2026/01/aiosint.html
『2026/01/03
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↑画像はMidjourneyに適切なプロンプトを与えて生成したものです。プロンプト生成にはChatGPT 5.2を使用。米軍ヘリの機体形状は実際のものとは異なります。
2025年1月3日午後5時過ぎ、いつものように海外の最新情報をXで取得していた私は、ベネズエラの首都カラカスを米軍が急襲しているとの報告を国際OSINTのアカウントで知り、趣味としてある時期集中的に見ていた米軍特殊部隊もの映画で得た知識から、米軍特殊部隊(大型ヘリチヌークが投入されている)がカラカスで展開していると推定。すぐにGemini 3 Proを用いて徹底的なOSINTを始めました。それによって得たのが以下のレポートです。午後6時過ぎに作成されています。
この時点で日本で流通しているどの報道記事よりも圧倒的に詳しい、背景情報も手に取るようにわかる資料となっています。これが最新かつ最高のAIを駆使して行うOSINTの威力です。
(今泉注:OSINTとは世界中の公開情報を網羅的に精査して、既存報道メディアでは報道されていない、その時点で最も新鮮な情報を入手し、複数の情報を繋ぎ合わせて鳥瞰的な展望を得ること。)
この後、米国はベネズエラのマドゥロ大統領とその妻を拘束し、米国に送致したことが報道されました。それについてはまた更新版のレポートを掲げます。結果的に以下のレポートは「第一報」となりましたが、数時間後に作成された「第二報」にはない背景情報が細かく書き込まれており、状況を正確に知りたい人には大変に良い資料となっています。特に8.2 結語のまとめ方は、人間の報告者が書いたものとしても必要かつ十分な良識が窺われ、この種の緊急インテリジェンスはもはや人間の仕事ではなくなったと言えるでしょう。
私がこのような投稿を共有する意図は、最新かつ最高のAIのOSINTの威力を是非とも多くの経営者や経営企画系の職業人に知っていただきたいからです。これまで日本は英語の壁があって海外の最新情報がほとんど入って来ていませんでした。日本の既存メディアが報じる海外動向はどれも薄っぺらであり、かつ二次情報、三次情報であることがほとんど。情報鮮度も悪く、最新の地政学状況をベースに経営判断をしなければならない総合商社、海運、航空、自動車などの現場では使えない情報ばかりでした。
かと言ってそれらの企業の中にインテリジェンス機能を置き、優秀な社員数名のチームを常時動かして海外最新動向を収集分析すると言うのも、コストがかかる話です。そこにおいて威力を発揮するのが現在の最新かつ最高のAIをフルに活用した、ニア・リアルタイムのOSINTです。
時系列を勘案して、この投稿は1月3日午後7時前のものとして上げます。
南部戦線とカラカスの火:2026年ベネズエラ危機に関する包括的軍事・地政学的分析報告書
- イントロダクション:カリブ海における「不可逆的な一線」
2026年1月3日、ベネズエラ・ボリバル共和国の首都カラカスは、近代史上稀に見る規模の軍事攻撃に晒された。午前2時(現地時間)に始まった一連の爆発と、首都上空を支配した航空機の轟音は、長らく懸念されていた米国とベネズエラの対立が、経済制裁や外交的圧力といった「冷たい戦争」のフェーズを脱し、直接的な物理的破壊を伴う「熱い戦争」へと突入したことを世界に知らしめた 1。
本報告書は、2025年8月に開始された米軍による「サザン・スピア作戦(Operation Southern Spear)」の展開から、2026年1月3日のカラカス空爆に至るまでの軍事的・政治的経緯を、現在入手可能なオープンソース・インテリジェンス(OSINT)、政府発表、および報道資料に基づき、極めて詳細に分析・再構築するものである。本稿の目的は、単に事象を羅列することではなく、この軍事行動が持つ戦略的意味合い、法的正当性を巡る論争、そして国際秩序およびエネルギー市場に与える深甚な影響を包括的に解明することにある。
米国政府、特に第二次トランプ政権は、この一連の軍事行動を「麻薬テロリズムとの戦い」と位置づけている 1。しかし、展開されている戦力の規模、攻撃対象の性質(軍事中枢への打撃)、そして政治的レトリック(マドゥロ大統領の排除を示唆)を総合的に分析すると、これが単なる麻薬対策作戦の枠組みを逸脱し、事実上の「体制転換(レジーム・チェンジ)」を目的としたハイブリッド戦争、あるいは主権国家への軍事侵攻の初期段階である可能性が強く示唆される。
2026年1月3日の攻撃は、ベネズエラの主権に対する侵害であると同時に、西半球の安全保障環境を一変させる「不可逆的な一線(Point of No Return)」を超えた出来事として歴史に刻まれることになるだろう。以下、その全貌を詳述する。
- 2026年1月3日:カラカス攻撃の戦術的再構築
1月3日未明のカラカスにおける事象は、情報の錯綜と「戦場の霧(Fog of War)」に包まれているものの、複数の証言とデータポイントを統合することで、その戦術的な輪郭を浮かび上がらせることが可能である。これは無秩序な爆撃ではなく、高度に調整された統合作戦であったことが推察される。
2.1 作戦実行のタイムラインと物理的影響
攻撃は深夜、市民が休息している時間帯を狙って開始された。これは奇襲効果を最大化すると同時に、民間人の付随的被害を抑制しようとする軍事的意図、あるいは心理的恐怖を植え付けるための心理戦的側面が読み取れる。
午前2時少し前、カラカス市内の複数の地点で「7回の爆発音」が確認された 1。これらは単発的なものではなく、短時間に集中して発生しており、同時多発的な精密打撃が行われたことを示唆している。目撃者や現地ジャーナリストの報告によれば、爆発音と同時に「低空を飛行する航空機」の音が市内に響き渡った 1。特筆すべきは、一部の目撃情報において、米陸軍の特殊作戦用ヘリコプターであるCH-47チヌーク(あるいはその改修型であるMH-47)と思しき機体が確認されている点である 6。これが事実であれば、この作戦にはスタンドオフミサイルによる遠距離攻撃だけでなく、特殊部隊の潜入や強襲を伴う極めてリスクの高い有人飛行作戦が含まれていたことになる。
攻撃の物理的な爪痕は、ベネズエラ軍の中枢に深く刻まれた。カラカス南西部に位置する「フエルテ・チウナ(Fuerte Tiuna)」軍事基地からは、深夜の空を焦がす巨大な火柱と黒煙が立ち上る様子が確認された 7。フエルテ・チウナは単なる駐屯地ではなく、国防省や軍の総司令部、さらには軍人の居住区も含まれる、いわばベネズエラ軍の心臓部である。この場所への打撃は、マドゥロ政権の指揮統制能力(C2)を物理的に切断しようとする明確な意思表示と解釈できる。
さらに、被害は首都圏の広範囲に及んだ。市内の主要空軍基地であるラ・カルロタ(La Carlota)、通信インフラの要衝であるエル・ボルカン(El Volcán)のアンテナ施設、そして首都の外港であるラ・グアイラ港(La Guaira Port)など、軍事・物流・通信の結節点が標的となったとの情報がある 8。また、攻撃と前後してカラカス南部で大規模な停電が発生したとの報告 4 は、物理的なインフラ破壊に加え、電力網を標的としたサイバー攻撃や、黒鉛爆弾(グラファイト爆弾)のような送電設備無力化兵器が使用された可能性を示唆している。
2.2 攻撃の主体と使用兵器に関する分析
米国政府は公式な記者会見での詳細な作戦発表を避けているものの、複数の「匿名の米政府高官」がメディアに対し、トランプ大統領が攻撃を承認したことを認めている 1。
使用された兵器体系については、展開している戦力から推測が可能である。2025年後半からカリブ海には、ジェラルド・R・フォード空母打撃群(CSG)および強襲揚陸艦イオウジマを中心とする水陸両用即応群(ARG)が展開していた 3。ここから発進可能なF-35C/BライトニングIIステルス戦闘機や、トマホーク巡航ミサイルを搭載した駆逐艦・潜水艦が、攻撃の主力となった可能性が高い。また、米国内の報道では、12月下旬にCIAによるドローン攻撃がすでに行われていたことが報じられており 11、今回の作戦でもMQ-9リーパーなどの無人攻撃機が、監視・偵察(ISR)と精密打撃の両面で重要な役割を果たしたと考えられる。
2.3 ベネズエラ政府の対応と「非常事態」
攻撃直後、ニコラス・マドゥロ政権は迅速に反応した。政府は公式声明を通じて、この攻撃を「帝国的攻撃(imperialist attack)」と断定し、米国が軍事施設のみならず民間施設も標的にしたと激しく非難した 4。
マドゥロ大統領は即座に「国家的非常事態」および「外的騒乱状態」を宣言し、全土に厳戒態勢を敷いた 4。これは、国内の引き締めを図ると同時に、民兵組織や支持者を街頭に動員し、米国の侵攻に対する「人民の抵抗」を演出するための政治的措置でもある。政府声明における「人々よ、街頭へ!(People to the streets!)」という呼びかけ 4 は、この事態を「政権防衛のための聖戦」へと転化させようとするマドゥロの意図を明確に示している。
- 「サザン・スピア作戦」の全貌:2025年8月から2026年1月への軌跡
1月3日の攻撃は突発的な事件ではなく、2025年夏から周到に準備され、段階的にエスカレートさせてきた米軍の軍事圧力キャンペーン「サザン・スピア作戦(Operation Southern Spear)」の頂点に位置するものである。この作戦の推移を時系列で追うことは、米国の戦略的意図を理解する上で不可欠である。
3.1 フェーズ1:戦力展開と「麻薬戦争」の再定義(2025年8月 – 9月)
2025年1月、トランプ大統領は特定の中南米麻薬カルテルを「外国テロ組織(FTO)」に指定する大統領令14157号に署名した 3。これが全ての始まりであった。この法的枠組みの変更により、従来の法執行機関(DEAや沿岸警備隊)主導の麻薬対策は、国防総省主導の「対テロ戦争」へと質的に転換された。
同年8月、米国は「麻薬カルテルとの戦い」を名目に、カリブ海への大規模な軍事展開を開始した。当初、トランプ大統領は駆逐艦3隻の派遣を命じたが、月末までには攻撃型原子力潜水艦を含む7隻の艦艇と4,500名以上の兵員が集結した 3。この戦力増強は、冷たい戦争終結以降、同地域における最大の軍事プレゼンスであり、明らかに通常の麻薬対策を逸脱した規模であった。
9月に入ると、作戦は実力行使の段階へ移行した。9月1日(または2日)、米海軍はベネズエラから出航したとされる船舶に対し、最初の空爆を実施した。トランプ大統領はこの攻撃で11名の「麻薬テロリスト」を殺害したと発表し、攻撃映像を公開した 14。この攻撃は、法的な手続きを経ない「処刑」に近い性質を持っており、後に生存者がその後の追撃で殺害されたことが明らかになるなど、交戦規定(ROE)の極端な緩和を示唆するものであった 14。
3.2 フェーズ2:圧力の最大化と海上封鎖(2025年10月 – 11月)
10月から11月にかけて、米国の圧力はさらに強まった。展開戦力は、最新鋭空母ジェラルド・R・フォード、ミサイル駆逐艦グレーヴリー、ストックデール、ジェイソン・ダナム、強襲揚陸艦イオウジマなどを含む10隻以上の艦隊へと拡大し、兵員数は約15,000名に達した 3。第160特殊作戦航空連隊の一部もプエルトリコ等に展開し、特殊作戦の準備が整えられた。
この時期、米軍による海上での攻撃回数は急増し、12月末までに少なくとも35回の攻撃で115名以上が死亡したとされている 14。これらの攻撃はカリブ海のみならず東太平洋にも拡大した。トランプ政権は、マドゥロ政権そのものを麻薬密売組織「カルテル・オブ・ザ・サンズ」と同一視し、ベネズエラ政府高官を「麻薬テロリスト」として扱うナラティブを強化した 3。
3.3 フェーズ3:本土攻撃への転換(2025年12月 – 2026年1月)
2025年末、事態は決定的な局面を迎えた。トランプ大統領は、制裁対象の石油タンカーに対する「完全封鎖」を宣言し、実際にタンカーの拿捕を開始した 15。これは事実上の戦争行為(Act of War)に該当する措置である。
さらに12月下旬、米軍(またはCIAの指揮下にある部隊)は、ベネズエラ本土にある港湾施設に対してドローン攻撃を実施した 11。これは作戦開始以来、初めて公にされたベネズエラ領土内への直接攻撃であり、トランプ大統領はこれを「我々は船を叩いた、次はエリア(陸地)を叩く」と表現し、さらなるエスカレーションを予告していた 16。そして、年が明けた1月3日、その予告は首都カラカスへの大規模攻撃という形で現実のものとなったのである。
以下の表は、サザン・スピア作戦における主要な戦力と行動の推移をまとめたものである。
時期 展開戦力・主な装備 主要な行動・出来事 死者数 (推定)
2025年8月 駆逐艦3隻、原潜1隻、兵員4,500名 カリブ海への展開開始。作戦目的を「対麻薬カルテル」と発表。 なし
2025年9月 F-35戦闘機(プエルトリコ)、駆逐艦増強 最初の海上空爆実施。トランプ大統領が攻撃映像を公開。 11名
2025年10月-11月 空母ジェラルド・R・フォード、強襲揚陸艦イオウジマ、兵員15,000名、第160特殊作戦航空連隊 「カルテル・オブ・ザ・サンズ」のFTO指定。海上攻撃の頻度増加。 80名以上
2025年12月 B-52戦略爆撃機(飛行確認)、ドローン部隊 石油タンカーの拿捕・封鎖。本土港湾施設への初のドローン攻撃。 100名以上
2026年1月 特殊作戦部隊、CH-47ヘリコプター等 首都カラカスおよび周辺軍事施設への大規模空爆・特殊作戦。 不明(多数の可能性)
- 米軍の戦略意図と侵攻の現実性:占領か、崩壊か
「侵攻(Invasion)」という言葉がメディアや政治家の間で飛び交っているが、軍事専門家の視点から見れば、現在の米軍の行動はイラク戦争型の「全面侵攻・占領」とは異なる様相を呈している。
4.1 兵力密度の欠如と「ハイブリッド侵攻」
ウォール・ストリート・ジャーナルやCSIS(戦略国際問題研究所)の分析によれば、2025年10月時点で展開していた約15,000名の米軍戦力は、ベネズエラの広大な国土と12万5千人の正規軍(プラス数十万の民兵)を制圧・占領するには、数的に圧倒的に不足している 1。古典的な対反乱作戦(COIN)のドクトリンに基づけば、人口3,000万人の国家を安定化させるには数十万規模の地上軍が必要となる。
したがって、現在の作戦は「領土の占領」ではなく、「政権機能の麻痺と内部崩壊の誘発」を主眼に置いたハイブリッドな侵攻形態であると分析できる。空爆による軍事インフラの破壊、海上封鎖による経済的絞殺、そして特殊部隊による「斬首作戦(Decapitation Strike)」あるいは特定の重要人物(HVT)の排除・確保を組み合わせることで、マドゥロ政権を統治不能の状態に追い込み、軍内部の離反やクーデターを誘発しようとしている可能性が高い 11。
4.2 「麻薬テロリズム」という交戦規定(ROE)の転換
この戦略の核となるのが、「敵」の再定義である。トランプ政権は、ベネズエラ政府や軍の高官を「政治的指導者」ではなく「麻薬テロリスト」と定義することで、交戦規定(ROE)を劇的に変更した。これにより、宣戦布告なしに、あたかも中東における対テロ作戦のように、特定の個人や施設をピンポイントで攻撃することが法的に(少なくとも米国内法の手続き上は)可能となった。
1月3日の攻撃で目撃されたヘリコプターや特殊部隊の動きは、マドゥロ大統領を含む政権中枢の人物の拘束、あるいは殺害を狙った作戦であった可能性も排除できない。米国は以前よりマドゥロ大統領に懸賞金をかけ、司法省が起訴しているため、彼を「逮捕」するための軍事力行使というロジックも成立し得るからである。
- 法的論争と米国内の政治的分断
この軍事行動は、米国内においても激しい法的・政治的論争を引き起こしている。
5.1 秘密の法的根拠と議会の無力化
トランプ政権は、ベネズエラ攻撃の法的正当性に関する詳細な根拠を公開していないが、報道によれば司法省法律顧問室(OLC)の秘密メモに基づいているとされる 18。その論理構成は以下の3点に集約されると推測される。
2001年 AUMFの援用: 2001年の同時多発テロ後に成立した「武力行使容認決議(AUMF)」を拡大解釈し、麻薬カルテルをアルカイダ等と同列の「テロ組織」と見なすことで、新たな議会承認を不要とする論理。
自衛権の行使: フェンタニルなどの麻薬流入を、米国民に対する「化学兵器攻撃」や「大量破壊兵器」に準ずる脅威と定義し、国連憲章51条に基づく自衛権の発動を主張。
大統領の固有権限: 憲法第2条に基づく最高司令官としての権限を強調し、議会の干渉を排除。
5.2 議会における攻防
これに対し、民主党を中心とする議会勢力は強い懸念を表明している。ジム・マクガバン下院議員らは、議会の承認なき敵対行為からの米軍撤退を求める決議案(H.Con.Res.64)を提出したが、僅差(211対213)で否決された 18。これは、米国内世論が「麻薬対策」という名目の前には軍事力行使を容認する傾向があること、そして共和党がトランプ大統領の強硬姿勢を全面的に支持していることを示している。
しかし、ランド・ポール上院議員(共和党)のようなリバタリアン系議員からも、「宣戦布告なき戦争は憲法の伝統に反する」との批判が出ており 18、一枚岩ではない。特に、1月3日のような大規模攻撃が泥沼化した場合、議会のチェック機能が再び焦点化することは避けられないだろう。
- 国際社会の反応と地政学的激震
ベネズエラへの攻撃は、西半球の安定を揺るがし、グローバルな地政学的対立を激化させている。
6.1 ラテンアメリカ:恐怖と反発
最も強い衝撃を受けているのは、周辺のラテンアメリカ諸国である。
コロンビア: グスタボ・ペトロ大統領は「今まさにカラカスが爆撃されている」と速報し、国連安保理の緊急開催を要求した 2。コロンビアは長い国境を接しており、紛争による難民の大量流入や、国境地帯での武装勢力の活発化を最も恐れている。左派であるペトロ政権にとって、米国の介入はイデオロギー的にも容認し難いものである。
ブラジル: 地域の大国ブラジルのルーラ大統領は、以前よりトランプ大統領に対して対話による解決を促し、仲介を申し出ていた 19。ブラジル政府顧問のセルソ・アモリムは、米国の介入が南米全体を「炎上」させ、政治的過激化を招くと警告している 20。
メキシコ: シェインバウム大統領は、国際法違反であるとして米国の行動を批判し、国連の介入を求めている 19。メキシコ自身も麻薬カルテル問題を抱えており、トランプ政権の「カルテルを理由とした軍事介入」という論理が、将来的にメキシコ自身に向けられることを深く警戒している 21。
6.2 ロシア・中国:支援のレトリックと限界
反米陣営の盟主であるロシアと中国は、ベネズエラ支持を鮮明にしているが、その対応は慎重さが滲む。
ロシア: 外務省は米国の行動を「意図的なエスカレーション」と非難し、マドゥロ政権への連帯を表明した 22。しかし、ウクライナでの戦争にリソースを集中しているロシアが、カリブ海で米国と軍事的に対峙する余力は乏しい。ロシアの支援は、外交的防壁の提供や、非対称戦(サイバーや情報戦)の支援に留まると見られる。
中国: 中国外務省も「国連憲章違反」として米国を批判し、中南米を「平和のゾーン」とすべきだと主張した 22。中国はベネズエラの主要な債権国であり石油輸入国であるが、遠隔地での紛争に軍事的に介入するドクトリンを持たない。中国の関心は、投資の保全と、米国の一国主義的行動を国際社会で孤立させることにある 25。
6.3 欧州と国連の苦悩
EU諸国は、公式には慎重な姿勢を崩していないが、ジェレミー・コービンら欧州の進歩派政治家60名以上が「ベネズエラとの戦争反対」を掲げる書簡を公開するなど、市民社会レベルでの反発は強い 26。国連安保理では、ベネズエラの要請により緊急会合が開かれたものの、常任理事国である米国の拒否権発動が確実視される中、実効性のある決議を採択することは絶望的である 27。グテーレス事務総長や人権高等弁務官は、国際法遵守と自制を呼びかけるに留まっている 19。
以下の表は、主要国の反応とその戦略的背景をまとめたものである。
国・組織 公式反応 戦略的背景・懸念
コロンビア 強く非難、国連安保理招集要求 国境を接する隣国として、紛争の波及と難民危機を及ぶ恐れ。左派政権としてのイデオロギー的対立。
ブラジル 懸念表明、対話と仲介を提案 南米の地域大国として、米国の介入による地域の不安定化と過激化を警戒。
メキシコ 反対表明、国際法遵守を要求 自国の麻薬カルテル問題に対する米国の介入(メキシコへの飛び火)を警戒。
ロシア 米国を非難、政権への連帯表明 ウクライナ問題への対抗軸としてベネズエラを利用。軍事介入能力は限定的。
中国 米国を非難、主権尊重を主張 経済的権益(石油・債権)の保護。米国の一国主義批判によるグローバル・サウスの取り込み。
EU 慎重姿勢(一部議員は反対) 人権問題と米同盟関係の板挟み。エネルギー供給の安定化への懸念。
- エネルギー戦争の側面:石油市場と「影の船団」への打撃
この軍事行動の裏には、間違いなくエネルギー資源を巡る闘争が存在する。ベネズエラは世界最大級の原油埋蔵量を有しており、その支配権、あるいは市場へのアクセス遮断は、世界経済に直結する問題である。
7.1 原油価格への即時的影響
2026年の取引開始早々、ブレント原油価格は地政学的リスクの高まりを受けて上昇した 29。市場は、ベネズエラからの供給途絶のみならず、この紛争が中東など他の産油地域に飛び火するリスクや、シーレーンの不安定化を織り込み始めている。
一方で、世界的な需要軟化や供給過剰感もあり 31、価格がパニック的な高騰に至るかは不透明である。しかし、タンカーへの直接攻撃や拿捕という事態は、海上輸送保険料の高騰を招き、エネルギーコスト全体を押し上げる要因となる。
7.2 制裁と海上封鎖の実効性
米国は軍事行動と並行して、経済的な絞殺作戦を強化している。特に、ベネズエラ産原油の輸出を支えてきた「影の船団(Shadow Fleet)」や、それに関与する中国・香港の企業(Corniola Ltd.など)に対する制裁指定は、ベネズエラの外貨獲得手段を根底から断つことを狙っている 32。
トランプ大統領が「我々はその石油を接収する」と発言したように 1、この作戦にはベネズエラの資源を米国の管理下に置く、あるいはマドゥロ政権の資金源として使わせないという、極めて実利的な(あるいは略奪的な)側面が見え隠れする。
- 結論と今後の展望:混沌への序曲
2026年1月3日のカラカス攻撃は、米国の対ベネズエラ政策が「封じ込め」から「能動的な破壊」へと完全に移行したことを示す分水嶺であった。
8.1 今後のシナリオ
現状から予測される今後のシナリオは以下の通りである。
政権崩壊シナリオ: 軍事的中枢への反復的な打撃により、ベネズエラ軍の指揮系統が崩壊、あるいは軍幹部が離反し、マドゥロ政権が内部から瓦解する。これは米国が最も望む結末であるが、軍の結束が維持されれば長期化する。
泥沼化シナリオ: マドゥロ政権が持ちこたえ、都市部でのゲリラ戦や民兵による抵抗を展開する。米軍は地上部隊の本格投入を迫られるか、あるいは空爆を継続しつつ、ベネズエラを「破綻国家」として放置する選択を迫られる。
地域紛争化シナリオ: 追い詰められたマドゥロ政権が、コロンビアやガイアナなどの近隣諸国に対して挑発的な行動に出る、あるいはロシア等が軍事支援を強化することで、紛争が地域全体に拡大する。
8.2 結語
「サザン・スピア作戦」は、麻薬対策という名目を纏いつつも、その実態は21世紀型のレジーム・チェンジ戦争である。1月3日の爆発音は、ベネズエラの夜を切り裂いただけではない。それは、大国が「テロ対策」という広範な解釈を用いて、主権国家の中枢を合法的に破壊できるという、新たな、そして極めて不安定な国際秩序の前例を作り出しつつある。今後の情勢は予断を許さないが、一つ確かなことは、ベネズエラと西半球の安全保障環境は、もはや後戻りできない地点を通過したということである。
参照ソース一覧(以下のソースの順番は本文中の上付き番号と整合していません。Geminiの性能上の制約によります。)
US strikes Venezuela and says its leader Maduro has been captured and flown out – Hindustan Timeshttps://www.hindustantimes.com/world-news/us-strikes-venezuela-and-says-its-leader-maduro-has-been-captured-and-flown-out-101767441008583.html
Venezuelan president ‘captured’ by US in ‘brilliant operation’: What happens next? – The Times of Indiahttps://timesofindia.indiatimes.com/world/us/saddam-hussein-laden-maduro-venezuelan-president-captured-by-us-in-brilliant-operation-what-happens-next/articleshow/126321587.cms
Trump bombs Venezuela, US ‘captures’ Maduro: All that we know – Al Jazeerahttps://www.aljazeera.com/news/2026/1/3/trump-bombs-venezuela-us-captures-maduro-all-that-we-know
Maduro captured, taken from Venezuela in US military operation in Caracas: Trump – Washington Examinerhttps://www.washingtonexaminer.com/news/white-house/4400115/maduro-captured-taken-venezuela-us-military-operation-caracas-trump/
Venezuela accuses US of attacking Caracas as explosions rock capital – The Guardianhttps://www.theguardian.com/world/2026/jan/03/explosions-reported-venezuela-caracas
‘Captured, flown out’: Trump says US operation took Venezuela President Maduro into custody – Business Todayhttps://www.businesstoday.in/world/us/story/captured-flown-out-trump-says-us-operation-took-venezuela-president-maduro-into-custody-509277-2026-01-03
Operation Southern Spear – Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Operation_Southern_Spear
Colombia sends armed forces to Venezuela border amid concern over refugee influx – The Guardianhttps://www.theguardian.com/world/2026/jan/03/colombia-sends-armed-forces-venezuela-border-concern-refugee-influx
United States-Venezuela conflict – Wikipediahttps://en.wikipedia.org/wiki/United_States%E2%80%93Venezuela_conflict
今泉 大輔 2026/01/03 18:50:52 』