アメリカ合衆国の国家安全保障戦略 (THE WHITE HOUSE WASHINGTON)

アメリカ合衆国の国家安全保障戦略 (THE WHITE HOUSE WASHINGTON)
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『2025年12月18日 / 最終更新日時 : 2025年12月18日 軍治

軍事に関わるものとして、まずは新しい2025年版のアメリカの国家安全保障戦略を通読することが大切だとの報道番組でのコメントを聞いた。その通りなのだろう。

第1次トランプ政権の国家安全保障戦略は、元米海兵隊大将のマティス国防長官や米陸軍中将のマクマスター安全保障補佐官が起草に関わったと言われている。

これに対し、第2次政権の2025年版NSSは、軍事と経済を国家安全保障の中核に据え、米軍の質的強化と防衛産業再活性化に加え、同盟国への防衛費負担増(GDP比5%)を要求する点が特徴である。

外交は「ディール型和平仲介」と「負担転換」を重視し、情報領域はサイバー防衛にとどまらず、文化・価値観の防衛やAI・量子・バイオ技術覇権確保へと拡張した。

さらに、西半球戦略ではモンロー主義を再定義し、米国本土と中南米を一体視して非半球勢力の影響排除、麻薬カルテル対策、資源・サプライ・チェーン確保を明記している。

欧州正面は米軍増強よりも同盟国の自助努力に依存する一方、インド太平洋は最重要地域として、第一列島線での拒否能力確保、台湾抑止、海軍力強化、技術優位維持を明確化している。

加えて、2025年版は過去の国家安全保障戦略が「脅威を過度に強調し、米国に過剰な負担を課してきた」と批判する姿勢が見え、焦点を絞り、米国の利益に直結する領域に資源を集中する方針を打ち出している。

全体として、2025年版は「経済安全保障+軍事力」を軸に、外交・情報を補完的に組み合わせ、アメリカ第一の戦略を徹底する構造となっている。先ずは通読を。(軍治)』

『アメリカ合衆国の国家安全保障戦略

2025年11月

THE WHITE HOUSE

WASHINGTON

親愛なるアメリカ国民

過去9か月間、我々は国家と世界を破滅と災厄の淵から救い戻した。4年にわたる弱体化、過激主義、致命的な失敗の後、私の政権は緊急かつ歴史的な速さで行動し、国内外におけるアメリカの強さを回復させ、世界に平和と安定をもたらした。

歴史上、これほど短期間でこれほど劇的な転換を成し遂げた政権は存在しない。

就任初日から、我々は合衆国の主権的国境を回復し、我が国への侵略を阻止するため米軍を配備した。軍隊から過激なジェンダー思想と「目覚めた」狂気を排除し、1兆ドルの投資で軍事力の強化を開始した。同盟関係を再構築し、同盟国に共同防衛への貢献拡大を求めた。NATO諸国が国防費をGDP比2%から5%に引き上げるという歴史的約束も得た。アメリカのエネルギー生産を解放して独立性を取り戻し、歴史的な関税を課して重要産業を国内に呼び戻した。

ミッドナイト・ハンマー作戦において、我々はイランの核濃縮能力を完全に破壊した。国内で活動する麻薬カルテルと凶悪な外国ギャングを外国テロ組織に指定した。わずか8ヶ月の間に、カンボジアとタイ、コソボとセルビア、コンゴ民主共和国とルワンダ、パキスタンとインド、イスラエルとイラン、エジプトとエチオピア、アルメニアとアゼルバイジャンの間で激化していた8つの紛争を解決し、ガザ戦争を終結させて生存していた人質全員を家族のもとに帰還させた。

アメリカは再び強く、尊敬される国となった。それゆえに、我々は世界中で平和を築いている。

我々のあらゆる行動において、アメリカを最優先に置いている。

以下に掲げる国家安全保障戦略は、我々が成し遂げた驚異的な進展を説明し、それを基盤としてさらに発展させるものである。この文書は、アメリカが人類史上最も偉大で成功した国家であり、地球上の自由の拠点であり続けることを保証するための道筋を示すものである。今後数年間、我々は国家のあらゆる側面における強さを発展させ続け、アメリカをこれまで以上に安全で、豊かで、自由で、偉大で、強力な国にしていく。

President Donald J. Trump

The White House November 2025

I. はじめに ― アメリカの戦略とは何か?

  1. アメリカの「戦略」が誤った方向へ進んだ経緯
    今後数十年にわたり、アメリカが世界で最も強く、最も豊かで、最も力強く、最も成功した国であり続けるためには、わが国は世界との関わり方について首尾一貫した、焦点を絞った戦略を必要としている。そしてそれを正しく行うためには、すべてのアメリカ国民が、我々がまさに何を成し遂げようとしているのか、そしてその理由を正確に知る必要がある。

「戦略(strategy)」とは、最終目的(ends)と手段(means)の本質的な関連性を説明する具体的かつ現実的な計画である。それは、何が望まれているのか、そして望ましい成果を達成するために利用可能な手段、あるいは現実的に創出可能な手段について、正確な評価から始まる。

戦略は評価し、選別し、優先順位をつけなければならない。いかなる国、地域、問題、大義も-どれほど価値があろうとも-アメリカの戦略の焦点となり得るわけではない。外交政策の目的は中核的な国益の保護にある。それが本戦略の唯一の焦点である。

冷戦終結以降のアメリカの戦略は不十分であった。それらは願望や望ましい最終状態の羅列に過ぎず、我々が何を望むかを明確に定義せず、代わりに曖昧な決まり文句を述べるに留まり、我々が望むべきものをしばしば誤って判断してきた。

冷戦終結後、アメリカの外交政策エリートたちは、全世界に対するアメリカの恒久的な支配こそがわが国の最善の利益であると自らを納得させた。しかし他国の事情がわが国の関心事となるのは、その活動がわが国の利益を直接脅かす場合に限られる。

わが国のエリート層は、アメリカ国民が国益との関連性を認めない国際的負担を、アメリカが永遠に背負い続ける意思があるという点を著しく誤算した。彼らは、巨大な福祉・規制・行政国家と、巨大な軍事・外交・インテリジェンス・対外援助複合体を同時に資金面で支えるアメリカの能力を過大評価していた。

彼らはグローバリズムといわゆる「自由貿易(free trade)」に、極めて誤った破壊的な賭けをした。その結果、アメリカの経済的・軍事的優位性の基盤である中産階級と産業基盤そのものが空洞化した。同盟国やパートナー国が防衛コストをアメリカ国民に転嫁することを許し、時には自国の利益の中核でありながら我々にとっては周辺的あるいは無関係な紛争や論争に巻き込むことも許した。

そして彼らはアメリカの政策を国際機関のネットワークに縛り付けた。その中には露骨な反アメリカ主義に駆られるものもあれば、個々の国家主権を解体することを公然と目指す超国家主義に動かされるものも多い。要するに、我々のエリート層は根本的に望ましくなく達成不可能な到達目標を追求しただけでなく、その過程で到達目標達成に必要な手段そのもの、すなわち、国家の力と富と良識の礎となってきた、我々の国家の特質そのものを損なったのである。

  1. トランプ大統領の必要かつ歓迎すべき是正措置
    こうした事態はいずれも必然ではなかった。トランプ大統領の第一期政権は、適切な指導者が正しい選択を行えば、上記の事態はすべて回避可能であり、回避すべきであったこと、そしてさらに多くの成果が達成できたことを証明した。大統領とそのチームは、アメリカの偉大な強みを効果的に結集し、進路を修正し、わが国に新たな黄金時代をもたらし始めた。合衆国をその道筋に導き続けること-それがトランプ大統領の第二期政権、そして本書の究極の目的である。

我々が今直面している問題は次の通りである:1) 合衆国は何を望むべきか?2) それを得るために我々が利用できる手段は何か?3) 最終目的(ends)と手段(means)をどのように結びつけて実行可能な国家安全保障戦略を構築できるか?

II. 合衆国は何を望むべきか?

  1. 全体として、我々は何を望んでいるのか?
    何よりもまず、我々は、政府が国民の天与の自然権を保障し、その福祉と利益を最優先する独立した主権国家としての合衆国の存続と安全を望む。

我々は、この国、その国民、領土、経済、そして生活様式(way of life)を、軍事攻撃や敵対的な外国の影響力から守りたい。その影響力とは、スパイ活動、略奪的な貿易慣行、麻薬・人身取引、破壊的なプロパガンダや影響工作(influence operations)、文化的破壊工作、あるいは我が国に対するその他のあらゆる脅威を指す。

我々は国境、移民制度、そして合法・違法を問わず人々が我が国に入る交通網を完全に管理したい。移民が単に「秩序ある(orderly)」ものではなく、主権国家が不安定化をもたらす人口移動を促進するのではなく阻止するために協力し、誰を受け入れ誰を受け入れないかを完全に管理できる世界を求めている。

我々は、自然災害に耐え、外国の脅威に抵抗し阻止し、アメリカ国民に危害を加えたりアメリカ経済を混乱させたりする可能性のあるあらゆる事象を防止または軽減できる、強靭な国家インフラを望んでいる。いかなる敵対者や危険も、アメリカをリスクに晒すことがあってはならない。

我々は、自国の利益を守り、戦争を抑止し、必要ならば迅速かつ決定的に勝利し、自軍への犠牲を可能な限り最小限に抑えるために、世界で最も強力で、最も殺傷力が高く、技術的に最も進んだ軍隊を募集し、訓練し、装備し、配備することを目指す。そして、すべての軍人が自国を誇りに思い、自らの任務に自信を持つ軍隊を望む。

我々は、世界最強かつ信頼性が高く現代的な核抑止力に加え、次世代ミサイル防衛システム-アメリカ本土を守る「ゴールデン・ドーム」を含む-を構築し、アメリカ国民、海外のアメリカ資産、そしてアメリカの同盟国を保護することを目指す。

我々は世界最強で、最も活力に満ち、最も革新的で、最も先進的な経済を望む。合衆国経済はアメリカの生活様式(way of life)の基盤であり、広範かつ包括的な繁栄を約束し実現し、上昇志向を生み出し、勤労を報いるものである。わが国の経済はまた、国際的な地位の基盤であり、軍事力の必要不可欠な土台でもある。

我々は世界最強の産業基盤を構築する。アメリカの国家力は、平時・戦時を問わず生産需要に対応できる強固な産業部門に依存している。そのためには防衛産業の直接生産能力だけでなく、防衛関連生産能力も必要だ。アメリカの産業力の育成は、国家経済政策の最優先課題とならねばならない。

我々は、世界で最も強靭で生産性が高く革新的なエネルギー産業を望んでいる。それは単にアメリカ経済の成長を支えるだけでなく、それ自体がアメリカの主要な輸出産業の一つとなる能力を備えたものである。

我々は、科学的にも、技術的にも世界で最も先進的かつ革新的な国であり続け、これらの強みをさらに発展させたい。そして、知的財産を外国による窃取から守りたい。アメリカの開拓者精神は、我々の持続的な経済的支配性と軍事的優越性の重要な柱であり、これを守らねばならない。

我々は、合衆国の比類なき「ソフト・パワー(soft power)」を維持し、それを通じて世界中に積極的な影響力を行使し、我々の利益を促進したい。その過程で、我々は自国の過去と現在を詫びることなく、他国の異なる宗教、文化、統治システムを尊重する。アメリカの真の国家利益に資する「ソフト・パワー(soft power)」は、自国の本質的な偉大さと良識を信じる場合にのみ効果を発揮する。

最後に、我々はアメリカの精神的・文化的健全性の回復と活性化を望む。これなくして長期的な安全保障は不可能である。我々は、過去の栄光と英雄を尊び、新たな黄金時代を展望するアメリカを望む。我々は、誇りに満ち、幸福で、楽観的な国民を望む。彼らは自国を、自分たちが受け継いだ時よりも優れた状態で次世代に託すことを確信している。

我々は、誰もが傍観者となることなく、自らの仕事が国家の繁栄と個人・家族の幸福に不可欠であると自覚し、そのことに満足感を得る、有意義な雇用を得た市民を望んでいる。これは、健全な子供を育てる強固で伝統的な家族が増えなければ達成できない。

  1. 我々は世界の中で、そして世界から何を望むのか?
    これらの到達目標を達成するには、国家のあらゆる資源を結集する必要がある。しかしこの戦略の焦点は外交政策にある。アメリカの外交政策における核心的利益とは何か。我々は世界において、また世界から何を望むのか。

我々は、西半球が合衆国への大規模な移民を防止・抑止するのに十分な安定性と適切な統治を維持することを確保したい。麻薬テロリスト、カルテル、その他の国際犯罪組織に対して我々と協力する政府を有する半球を望む。敵対的な外国の侵入や重要資産の支配から自由であり、重要なサプライ・チェーンを支える半球を望む。そして、戦略的に重要な拠点への継続的なアクセスを確保したい。言い換えれば、我々はモンロー主義に対する「トランプ的帰結(Trump Corollary)」を主張し、これを実行に移すのである。

・ 我々は、インド太平洋地域の自由で開かれた状態を維持し、全ての重要な海路における航行の自由を守り、安全で信頼できるサプライ・チェーンと重要物資へのアクセスを確保しつつ、外国勢力がアメリカの経済に与え続けている損害を食い止め、逆転させたいと考えている。

・ 我々は、同盟国が欧州の自由と安全を守りながら、欧州の文明的自信と西洋的アイデンティティを回復することを支援したい。

・ 我々は、敵対者が中東地域、その石油・ガス供給源、およびそれらの輸送路となる要衝を支配することを阻止すると同時に、莫大な代償を払って我々をその地域に足止めした「終わりのない戦争(forever wars)」を回避したいと考えている。

・ 合衆国技術と合衆国基準-特にAI、バイオテクノロジー、量子コンピューティング分野において-が世界を前進させることを確実にしたい。

これらは合衆国の核心的かつ極めて重要な国益である。他にも国益は存在するが、これらこそが我々が何よりも優先して注力すべき利益であり、これを無視したり軽視したりすれば、我々自身の危険を招くことになる。

III. アメリカが望むものを得るために利用できる手段とは何か?
アメリカは世界一の羨望の的となる地位を維持しており、世界トップクラスの資産、資源、優位性を有している。具体的には、以下を含んでいる。

・ 依然として機敏で軌道修正が可能な政治システム

・ 世界で最も大きく革新的な単一経済体であり、戦略的利益に投資できる富を生み出すと同時に、我々の市場へのアクセスを求める国々に対する影響力を提供する。

・ 世界を代表する金融システムと資本市場、ドルの世界的な基軸通貨としての地位を含む

・ 世界で最も先進的で革新的、かつ収益性の高い技術分野は、わが国の経済を支え、軍事力に質的優位性をもたらし、世界的な影響力を強化するものである。

・ 世界で最も強力かつ有能な軍隊

・ 世界的に戦略的に最も重要な地域における条約同盟国やパートナーを含む、広範な同盟ネットワーク

・ 羨むべき地理的条件と豊富な天然資源、我々の半球に物理的に支配的な競争する勢力(competing powers)が存在せず、軍事侵攻の危険性のない国境、そして他の大国とは広大な海を隔てている。

・ 比類なき「ソフト・パワー(soft power)」と文化的影響力

・ アメリカ国民の勇気、意志力、そして愛国心。

さらに、トランプ大統領の強力な国内政策を通じて、合衆国は、

・ 能力主義の文化を再構築し、いわゆる「DEI」やその他の差別的・反競争的慣行を根絶する。これらは我々の組織を貶め、発展を阻害するものである。

・ 成長と革新を推進し、中産階級を強化・再構築するための戦略的優先課題として、我々の膨大なエネルギー生産能力を解き放つこと

・ 経済の再工業化を推進し、中産階級のさらなる支援と、自国のサプライ・チェーン及び生産能力の管理を図るため

・ 歴史的な減税と規制緩和の取り組みを通じて国民に経済的自由を回復させ、合衆国をビジネスと資本投資の最高の場所とする

・ 新興技術と基礎科学への投資により、将来の世代に向けた持続的な繁栄、競争優位性、軍事的支配性を確保する。

この戦略の到達目標は、これら世界トップクラスの資産やその他の要素を結びつけ、アメリカの力と卓越性を強化し、わが国をかつてないほど偉大な国にすることにある。

IV. 戦略

  1. 原則
    トランプ大統領の外交政策は、「実用主義(pragmatist)」ではないものの実用的(pragmatic)であり、「現実主義(realist)」ではないものの現実的(realistic)であり、「理想主義(idealistic)」ではないものの原則的(principled)であり、「タカ派(hawkish)」ではないものの強力(muscular)であり、「ハト派(dovish)」ではないものの抑制的(restrained)である。伝統的な政治思想に基づくものではない。何よりもアメリカにとって効果的なもの、つまり一言で言えば「アメリカ・ファースト(America First)」によって動機づけられている。

トランプ大統領は「平和の大統領」としての遺産を確固たるものにした。歴史的なアブラハム合意で初任期中に達成した目覚ましい成功に加え、トランプ大統領は交渉手腕(dealmaking ability)を駆使し、二期目のわずか8か月間で世界8か所の紛争において前例のない平和を確保した。トランプ大統領はカンボジアとタイ、コソボとセルビア、コンゴ民主共和国とルワンダ、パキスタンとインド、イスラエルとイラン、エジプトとエチオピア、アルメニアとアゼルバイジャンの間で和平交渉を成立(negotiated peace)させ、ガザ戦争を終結させて生存していた人質全員を家族のもとに帰還させた。

地域紛争が大陸全体を巻き込む世界大戦へと発展する前に阻止することは、最高司令官の注目に値する課題であり、現政権の最優先事項である。戦争が我が国の海岸に迫る炎上する世界は、アメリカの国益にとって有害だ。トランプ大統領は非従来型の外交、アメリカの軍事力(military might)、経済的影響力を駆使し、核保有国間の対立の火種や、数世紀にわたる憎悪が引き起こす暴力戦争を外科手術的に鎮火させている。

トランプ大統領は、アメリカの外交・防衛・インテリジェンス政策は次の基本原則に基づいて推進されなければならないことを証明した:

・ 国家利益の焦点化(Focused Definition of the National Interest)-少なくとも冷戦終結以降、歴代政権はしばしば国家安全保障戦略を発表し、アメリカの「国益(national interest)」の定義を拡大しようとしてきた。その結果、その範囲外と見なされる問題や取り組みはほとんど存在しない状態となった。しかし、すべてに焦点を当てようとするのは、結局何も焦点化しないことに等しい。アメリカの核心的な国家安全保障上の利益こそが、我々の焦点であるべきだ。

・ 強さによる平和(Peace Through Strength) – 強さこそが最良の抑止力である。アメリカの国益を脅かすことを十分に抑止された国やその他の主体は、そのような行動を取らない。さらに、強さは平和の実現を可能にする。なぜなら、我々の強さを尊重する当事者は、しばしば我々の支援を求め、紛争解決と平和維持に向けた我々の取り組みに協力的だからである。したがって、合衆国は最強の経済を維持し、最先端の技術を開発し、社会の文化的健全性を強化し、世界最高の能力を持つ軍隊を配備しなければならない。

・ 非干渉主義への傾向性(Predisposition to Non-Interventionism)――独立宣言において、アメリカの建国者たちは他国の内政への非干渉主義を明確に志向し、その根拠を明示した。すなわち、すべての人間が神から与えられた平等な自然権を有するのと同様に、すべての国家は「自然の法と自然の神の法(the laws of nature and nature’s God)」によって、互いに対して「独立かつ平等な地位(separate and equal station)」を享受する権利を有するというのである。我が国のように多様な利益を有する国家にとって、非干渉主義への硬直的な固守は不可能である。しかしこの傾向性は、正当な介入を構成する要素に対する高い基準を設定すべきである。

・ 柔軟な現実主義(Flexible Realism) – 合衆国は他国との取引(dealing)において、実現可能かつ望ましい目標を現実的に追求する。我々は、世界の諸国に対し、その伝統や歴史から大きく異なる民主主義その他の社会変革を押し付けることなく、良好な関係と平和的な商業関係を追求する。我々は、このような現実的な評価に基づいて行動すること、あるいは統治システムや社会が我々と異なる国々と良好な関係を維持すること自体に、矛盾や偽善は一切ないことを認識し、断固として主張する。同時に、志を同じくする友好国(like-minded friends)に対し、我々の共通の規範を守るよう働きかけ、そうすることで我々の利益を促進していくのである。

・ 国家の優位性(Primacy of Nations)――世界の基本的な政治単位は国家であり、今後もそうあり続ける。全ての国家が自国の利益を最優先し、主権を守ることは自然かつ正当である。国家が自国の利益を優先するとき、世界は最も円滑に機能する。合衆国は自国の利益を最優先し、他国との関係においても、各国家が自国の利益を優先するよう促す。我々は国家の主権的権利を擁護し、最も干渉的な国際機関による主権を蝕む介入に反対し、それらの機関が個々の主権を阻害せず支援し、アメリカの利益を促進するよう改革することを支持する。

・ 主権と尊重(Sovereignty and Respect) – 合衆国は自らの主権を断固として守る。これには、超国家的・国際的組織による主権の浸食、外国勢力や団体による言論統制や市民の表現の自由の制限、政策誘導や外国紛争への巻き込みを目的としたロビー活動や影響工作、国外の利益に忠実な投票基盤を国内に構築するための移民制度の悪用などが含まれる。合衆国は世界の舞台で自らの進路を定め、外部からの干渉を受けずに自らの運命を決定する。

・ バランス・オブ・パワー(Balance of Power) – 合衆国は、いかなる国も自国の利益を脅かすほどに支配的になることを許容できない。我々は同盟国・パートナー国と連携し、支配的な敵対者の台頭を阻止するため、世界的・地域的なバランス・オブ・パワー(Balance of Power)を維持する。合衆国が自国のための世界支配という不運な構想を拒むのと同様に、我々は他国による世界規模、場合によっては地域規模での支配をも阻止しなければならない。これは世界の全ての強国・中堅国の影響力を抑制するために血と財を無駄に費やすことを意味しない。より大きく、より豊かで、より強力な国家の過大な影響力は、国際関係における不変の真理である。この現実には、時に共同の利益を脅かす野心を挫くため、パートナーと連携することが伴う。

・ 親アメリカ労働者(Pro-American Worker) – アメリカの政策は単なる成長重視ではなく労働者重視であり、自国の労働者を最優先する。繁栄が広く基盤を持ち、広く共有される経済を再構築しなければならない。繁栄が頂点に集中したり、特定の産業や国内の一部に偏ったりする経済であってはならない。

・ 公平性(Fairness) – 軍事同盟から貿易関係、そしてそれ以上に至るまで、合衆国は他国から公平に扱われることを主張する。我々はもはや、フリーライダー行為、貿易不均衡、略奪的な経済慣行、そして我々の利益を損なう歴史的な善意へのその他の押し付けを容認せず、また許容することもできない。我々が同盟国に豊かで能力ある存在であることを望むのと同様に、同盟国もまた、合衆国が豊かで能力ある状態を維持することが自らの利益にかなうことを認識しなければならない。特に、同盟国には自国の国防費を国内総生産(GDP)に占める割合を大幅に増やし、数十年にわたり合衆国がはるかに多額の支出を続けてきたことで生じた巨大な不均衡を是正し始めることを期待する。

・ 能力と実績(Competence and Merit)-アメリカの繁栄と安全保障は、能力の開発と促進にかかっている。能力と実績は我々の文明が誇る最大の強みである。優れたアメリカ人が採用され、昇進し、称賛される場所には、革新と繁栄が必ず続く。もし能力が破壊されたり、体系的に阻害されたりすれば、インフラから国家安全保障、教育、研究に至るまで、我々が当然と考えている複雑なシステムは機能しなくなるだろう。

実績が抑圧されれば、科学・技術・産業・防衛・革新におけるアメリカの歴史的優位性は消滅する。能力と実績を特定の集団の地位で置き換えようとする過激なイデオロギーが成功すれば、アメリカは認識不能な姿となり、自衛すらできなくなる。同時に、実績主義(meritocracy)を口実に「グローバル人材(global talent)」獲得の名目でアメリカの労働市場を世界に開放し、アメリカ人労働者を貶める行為を許してはならない。あらゆる原則と行動において、アメリカとアメリカ国民が常に最優先されねばならない。

  1. 優先順位
    ・ 大量移民の時代は終わった(The Era of Mass Migration Is Over)――どの国が、どの程度の規模で、どこから移民を受け入れるかは、その国の未来を必然的に決定づける。主権国家を自認する国には、自らの未来を定義する権利と義務がある。歴史を通じて、主権国家は無秩序な移民を禁止し、外国人への市民権付与は稀であり、厳しい条件を満たす必要があった。過去数十年の西側の経験は、この不変の知恵を正当化している。

世界各国において、大規模な移民は国内資源を逼迫させ、暴力やその他の犯罪を増加させ、社会的結束を弱体化させ、労働市場を歪め、国家安全保障を損なってきた。大規模移民の時代は終わらせねばならない。国境の安全保障は国家安全保障の主要な要素である。我々は、無制限な移民だけでなく、テロリズム、麻薬、スパイ活動、人身売買といった国境を越えた脅威からも、我が国を侵略から守らねばならない。アメリカ国民の意思に基づき政府によって実施される国境管理は、主権国家としての合衆国の存続に不可欠である。

・ 基本的人権と自由の保護(Protection of Core Rights and Liberties) – アメリカ政府の目的は、アメリカ市民が神から与えられた自然権を保障することにある。この最終目的のために、合衆国政府の各省庁には恐るべき権限が付与されてきた。それらの権限は、「過激化防止(deradicalization)」や「民主主義の保護(protecting our democracy)」その他の口実の下であれ、決して濫用されてはならない。権限が濫用された場合、その濫用者は責任を問われなければならない。

特に、言論の自由、宗教と良心の自由、そして共通の政府を選択し運営することを決定する権利は、決して侵害されてはならない中核的権利である。これらの原則を共有する、あるいは共有すると主張する国々に対して、合衆国はそれらの原則が文字通りかつ精神的に遵守されるよう強く主張する。我々は、欧州、アングロ圏(Anglosphere)、その他の民主主義世界、特に同盟国において、エリート主導の反民主的な核心的自由への制限に反対する。

・ 負担分担と負担転嫁(Burden-Sharing and Burden-Shifting)――合衆国がアトラス(Atlas)のように世界秩序全体を支えてきた時代は終わった。我々の数多くの同盟国・パートナーには、数十もの富裕で洗練された国家が含まれており、それらは自らが属する地域に対する主要な責任を担い、我々の集団防衛にはるかに多くの貢献をしなければならない。トランプ大統領はハーグ・コミットメントにより新たな世界的基準を打ち出した。これはNATO加盟国に対しGDPの5%を防衛費に充てることを約束するものであり、我々のNATO同盟国はこれを支持し、今や達成しなければならない。

トランプ大統領が同盟国に対し、自地域における主要な責任を担うよう求める方針を引き継ぎ、合衆国は負担分担ネットワークを構築する。我が国政府が調整役および支援者として機能する。このアプローチにより負担が共有され、あらゆる取り組みがより広範な正当性を獲得する。モデルとなるのは、経済的手段を用いてインセンティブを調整し、志を同じくする同盟国(like-minded allies)と負担を分かち合い、長期的な安定を基盤とする改革を堅持する対象を絞ったパートナーシップである。

この戦略的明確性により、合衆国は敵対的・破壊的影響力に効率的に対処しつつ、過去の取り組みを損なった過度の拡大や焦点の拡散を回避できる。合衆国は、近隣地域の安全保障においてより多くの責任を自発的に引き受け、輸出管理を合衆国と整合させる国々に対し、商業問題におけるより有利な待遇、技術共有、防衛調達などを通じて支援する用意がある。

・ 平和を通じた再調整(Realignment Through Peace)――大統領の指示のもと、我々の核心的利益から外れた地域や国々においても和平合意を追求することは、安定性を高め、アメリカの世界的影響力を強化し、諸国や地域を我々の利益に沿って再調整し、新たな市場を開く効果的な手段である。必要な資源は大統領外交に集約され、この偉大な国家がそれを実現するには有能な指導力のみが不可欠である。その見返り――長年の紛争終結、救われる命、新たな友好関係の構築――は、比較的軽微な時間と注力のコストをはるかに上回る。

・ 経済的安全保障(Economic Security) – 最後に、経済的安全保障は国家安全保障の基盤であるため、我々はアメリカの経済のさらなる強化に努め、特に以下の点に重点を置く:

– 均衡ある貿易(Balanced Trade) – 合衆国は貿易関係の均衡化、貿易赤字の削減、輸出障壁への反対、アメリカの産業と労働者に損害を与えるダンピングその他の反競争的慣行の終結を優先する。相互利益と尊重に基づき我々と貿易を望む国々との公正かつ互恵的な貿易協定を追求する。しかし我々の最優先事項は自国の労働者、自国の産業、自国の国家安全保障でなければならないし、そうする。

– 重要なサプライ・チェーンと資材へのアクセス確保(Securing Access to Critical Supply Chains and Materials) – アレクサンダー・ハミルトン(Alexander Hamilton)が共和国の創設期に主張したように、合衆国は、国防や経済に必要な原材料から部品、完成品に至るまで、中核的な部品を外部勢力に依存してはならない。自国を守るために必要な物資を、自立的かつ確実に確保し、我々の生活様式(way of life)を守らなければならない。そのためには、略奪的な経済慣行に対抗しながら、アメリカが重要な鉱物や資材を入手できる手段を拡大することが必要となる。さらに、インテリジェンス機関(Intelligence Community)は、アメリカの安全と繁栄に対する脆弱性や脅威を確実に把握し、軽減するために、世界中の主要なサプライ・チェーンや技術の進歩を監視する。

– 再工業化(Reindustrialization) – 未来は製造者に属する。合衆国は経済の再工業化を推進し、工業生産を「国内回帰(re-shore)」させ、未来を形作る重要かつ新興技術分野に焦点を当て、我が国の経済と労働力への投資を促進・誘致する。この実現には、関税の戦略的活用と新技術の導入を通じ、国内全域での広範な工業生産を促進し、アメリカの労働者の生活水準を向上させるとともに、重要製品・部品において、現在および将来のいかなる敵対者にも依存しない体制を確立する。

– 防衛産業基盤の再生(Reviving our Defense Industrial Base) – 強固で有能な防衛産業基盤なくして、強固で有能な軍隊は存在し得ない。近年の紛争で明らかになった、低コストのドローンやミサイルと、それらに対抗するために必要な高価な防衛システムとの間の巨大な格差は、我々が変化と適応を必要としていることを露呈した。アメリカは、低コストで強力な防衛手段を革新し、最も有能で近代的なシステムや兵装を大規模に生産し、防衛産業のサプライ・チェーンを国内回帰させるための国家的総動員を必要としている。

特に、我々は戦闘員に対し、大半の敵対者を撃破可能な低コスト兵器から、洗練された敵との紛争に必要な最高性能のハイエンド・システムに至るまで、あらゆる能力を提供しなければならない。そしてトランプ大統領の「強さによる平和」というビジョンを実現するため、これを迅速に行う必要がある。また、集団防衛を強化するため、全ての同盟国・パートナー国の産業基盤の活性化を促進する。

– エネルギー支配性(Energy Dominance)– 石油、ガス、石炭、原子力におけるアメリカのエネルギー支配性を回復し、必要な主要エネルギー部品の国内回帰を図ることは、最優先の戦略的課題である。安価で豊富なエネルギーは、合衆国に高賃金の雇用を生み出し、アメリカの消費者と企業のコストを削減し、再工業化を促進し、AIなどの先端技術における優位性の維持に寄与する。エネルギー純輸出の拡大は、同盟国との関係深化と敵対者の影響力抑制、国土防衛能力の保護、そして必要に応じて必要な場所への軍事力投射を可能にする。我々は、欧州に甚大な損害を与え、合衆国を脅かし、敵対者に利益をもたらす破滅的な「気候変動(climate change)」および「ネット・ゼロ(Net Zero)」イデオロギーを拒否する。

– アメリカの金融セクターにおける支配性の維持と拡大(Preserving and Growing America’s Financial Sector Dominance) – 合衆国は世界をリードする金融・資本市場を有しており、これらは政策立案者にアメリカの国家安全保障上の優先事項を推進するための重要な影響力と手段を提供する、アメリカの影響力の柱である。しかし、この主導的立場は当然のものとは考えられない。我々の支配性(our dominance)の維持と拡大には、ダイナミックな自由市場システムとデジタル金融・イノベーション分野におけるリーダーシップを活用し、わが国の市場が世界で最も活力に満ち、流動性が高く、安全な状態を維持し、世界の羨望の的であり続けることが不可欠である。

  1. 各地域
    こうした文書では、世界のあらゆる地域や問題を網羅的に言及することが慣例となっている。それは、何かを省略すれば盲点や軽視と見なされるという前提に基づくものだ。その結果、こうした文書は肥大化し焦点がぼやける-戦略が本来あるべき姿とは正反対のものとなる。

焦点を絞り優先順位をつけるとは、選択することである-すべてが等しく重要ではないこと、すべての人にとってそうではないことを認めることだ。それは、いかなる民族や地域、国家が本質的に重要でないなどと主張するものではない。合衆国はあらゆる尺度で史上最も寛大な国家である-しかし我々は世界のあらゆる地域や問題に等しく注意を払う余裕などないのだ。

国家安全保障政策の目的は、中核的な国益の保護にある。一部の優先事項は地域的な枠組みを超越する。例えば、さほど重要でない地域におけるテロ活動が、我々の緊急の注意を迫ることもある。しかし、その必要性から周辺地域への持続的な関与へと飛躍するのは誤りである。

A. 西半球(Western Hemisphere):モンロー主義の「トランプ的帰結(Trump Corollary)」
長年放置されてきたモンロー主義を合衆国は再確認し、西半球におけるアメリカの優位性(American preeminence)を回復し、わが国の国土及び地域全体の重要地域へのアクセスを保護するため、これを徹底的に実施する。我々は、非西半球の競争相手が、我々の西半球に軍隊やその他の脅威となる能力を配置したり、戦略的に重要な資産を所有・支配したりする能力を否定する。このモンロー主義への「トランプ的帰結(Trump Corollary)」は、アメリカの安全保障上の利益に沿った、アメリカのパワーと優先事項の常識的かつ強力な回復である。

西半球における我々の到達目標は「引き込みと拡大(Enlist and Expand)」と要約できる。西半球の既存の友好国と連携し、移民管理、麻薬流通の阻止、陸海における安定と安全の強化を図る。新たなパートナーの育成・強化を通じて拡大を図ると同時に、我が国が西半球における経済・安全保障面での最良のパートナーとしての魅力を高めていく。

引き入れる
アメリカの政策は、地域内のパートナー国を越えても許容可能な安定を創出できる地域の主導国を巻き込むことに焦点を当てるべきである。こうした国々は、違法かつ不安定化をもたらす移民の阻止、カルテルの無力化、沿岸地域での製造業の育成、地域民間経済の発展などに貢献するだろう。我々は、我々の原則と戦略に広く沿う地域の政府、政党、運動に対して報奨を与え、奨励する。しかし、見解は異なるものの、我々と利害を共有し、協力したいと考えている政府を見逃してはならない。

合衆国は西半球における軍事プレゼンスを再考しなければならない。これは四つの明白なことを意味する

・ 我々の半球における緊急の脅威、特に本戦略で特定された任務に対処するため、またここ数十年あるいは数年間でアメリカの国家安全保障に対する相対的な重要性が低下した戦域から離れるべく、我々の世界的な軍事プレゼンスの再調整。

・ 海上交通路の管理、不法移民その他の望ましくない移民の阻止、人身取引及び麻薬密輸の削減、危機時の主要な通過ルートの管理のため、より適切な沿岸警備隊及び海軍の展開

・ 国境の安全確保とカルテル撲滅のための重点的な展開。これには、過去数十年にわたる法執行機関のみに依存した失敗した戦略に代わり、必要に応じて致死的な武力行使を含む。

・ 戦略的に重要な地域におけるアクセスの確立または拡大。

合衆国は商業外交を優先し、関税と相互主義に基づく貿易協定を強力な手段として活用し、自国の経済と産業を強化する。到達目標は、パートナー諸国が国内経済を育成すると同時に、経済的により強固で洗練された西半球が、アメリカの商業と投資にとってますます魅力的な市場となることである。

この半球における重要サプライ・チェーンの強化は、依存度を減らしアメリカの経済的回復力を高める。アメリカとパートナー国との間に構築される連携は双方に利益をもたらすと同時に、域外競争者が地域での影響力を拡大することを困難にする。商業外交を優先しつつも、武器販売からインテリジェンス共有、共同演習に至るまで、安全保障上のパートナーシップ強化にも取り組んでいく。

拡大
アメリカが現在強固な関係を築いている国々との連携を深める一方で、我々は地域におけるネットワークの拡大を図る必要がある。他国に我々を第一の選択肢として認識させるとともに、様々な手段を通じて他国との協力を抑制していく。

西半球には多くの戦略的資源が存在し、アメリカは近隣諸国と自国双方の繁栄を図るため、地域同盟国と連携して開発を進めるべきである。国家安全保障会議は直ちに強力な省庁間プロセスを開始し、インテリジェンス機関(Intelligence Community)の分析部門の支援のもと、各機関に対し西半球における戦略的拠点と資源を特定する任務を課す。その目的は、地域パートナーとの共同開発(joint development)と保護にある。

非半球(Non-Hemispheric)の競争相手は、我々の半球に大きく進出してきた。これは現在において我々に経済的不利益をもたらすだけでなく、将来的に戦略的に我々に損害を与える可能性もある。こうした侵入を真剣な反撃もなく許容することは、ここ数十年におけるアメリカのもう一つの重大な戦略的過ちである。

合衆国の安全保障と繁栄の条件として、合衆国は西半球において卓越した地位を維持しなければならない。この条件こそが、地域内で必要とされる時と場所で自信を持って行動することを可能にする。同盟関係の条件、およびあらゆる形態の支援を提供する条件は、敵対的な外部勢力の影響力を縮小させることに依存しなければならない。その対象は、軍事施設・港湾・重要インフラの支配権から、広義に定義される戦略的資産の購入に至るまで多岐にわたる。

特定のラテン・アメリカ諸国政府と外国勢力との政治的連携を考慮すると、一部の外部の影響力は逆転が困難だろう。しかし多くの政府は、イデオロギー的に外国勢力と一致しているわけではなく、低コストや規制障壁の低さなど他の理由から彼らとの取引に魅力を感じている。合衆国は、いわゆる「低コスト(low cost)」の外国援助に、諜報活動、サイバーセキュリティ、債務の罠など、いかに多くの隠れたコストが内在しているかを具体的に示すことで、西半球における外部勢力の影響力を後退させることに成功してきた。我々は、金融と技術における合衆国の影響力を活用して各国にこうした援助を拒否させるなど、こうした取り組みを加速させるべきである。

西半球において―そして世界のあらゆる地域において―合衆国は、アメリカの製品・サービス・技術が長期的に見てはるかに優れた選択であることを明確に示すべきである。それらはより高品質であり、他国の支援に付随するような条件が付いていないからだ。とはいえ、我々は自国の制度を改革し、承認や認可を迅速化する―繰り返すが、自らが第一の選択肢となるパートナーとなるためである。各国が直面すべき選択は、主権国家と自由経済が共存するアメリカ主導の世界に生きるか、それとも地球の反対側に位置する国々の影響下にある並行世界を選ぶかである。

この地域で勤務する全ての合衆国政府関係者は、有害な外部影響の全容を把握するとともに、同時に圧力をかけつつ、パートナー国に対してインセンティブを提供し、我々の半球を守るよう働きかけなければならない。

米州の安全保障を成功させるには、合衆国政府とアメリカ民間セクターの緊密な連携も不可欠である。全米大使館は、駐在国における主要なビジネス機会、特に政府調達案件を把握しなければならない。これらの国々と関わる全ての合衆国政府職員は、自らの職務の一環としてアメリカ企業の競争力強化と成功支援に努めるべきであることを理解すべきである。

合衆国政府は、当該地域におけるアメリカ企業向けの戦略的買収・投資機会を特定し、これらを国務省、国防総省、エネルギー省、中小企業庁、国際開発金融公社、輸出入銀行、ミレニアム・チャレンジ・コーポレーションを含む(ただしこれらに限定されない)全ての合衆国政府融資プログラムによる評価に付す。

また、地域政府や企業と連携し、拡張性と回復力に優れたエネルギーインフラを構築し、重要鉱物へのアクセスに投資し、アメリカの暗号化技術とセキュリティの潜在能力を最大限に活用した既存および将来のサイバー通信ネットワークを強化すべきである。前述の合衆国政府機関を活用し、海外での合衆国製品購入費用の一部を賄うべきである。

合衆国はまた、合衆国企業を不利にする対象を絞った課税、不公正な規制、収用などの措置に抵抗し、これを覆さねばならない。特に我々に最も依存し、したがって我々が最大の影響力を持つ国々との協定条件は、合衆国企業にとって単独供給契約でなければならない。同時に、同地域でインフラを建設する外国企業を排除するためあらゆる努力を払うべきである。

B. アジア:経済的未来を勝ち取り、軍事的対立を防止せよ
強い立場からリーダーシップを発揮する
トランプ大統領は単独で、30年以上にわたるアメリカの中国に関する誤った前提を覆した。すなわち、市場を中国に開放し、アメリカ企業の中国投資を奨励し、製造業を中国にアウトソーシングすることで、中国がいわゆる「ルールに基づく国際秩序(rules-based international order)」に組み込まれると考えたのだ。しかしそれは実現しなかった。中国は富と力を得て、その富と力を自らの大きな利益に利用した。アメリカのエリート層-二大政党の四つの政権にわたり-は、中国の戦略を喜んで助長するか、あるいは現実を否定するかのいずれかであった。

インド太平洋地域は、購買力平価(PPP)ベースでは世界のGDPのほぼ半分、名目GDPベースでは3分の1を占めている。この割合は21世紀を通じて確実に拡大する。つまりインド太平洋は、すでに次世紀の主要な経済・地政学的戦場の一つであり、今後もその地位を維持するだろう。自国で繁栄を続けるためには、この地域で競争に勝利しなければならない-そして我々は勝利しつつある。トランプ大統領は2025年10月の訪問中に主要協定に署名し、商業・文化・技術・防衛における強固な連携をさらに深化させるとともに、自由で開かれたインド太平洋へのコミットメントを再確認した。

アメリカは依然として膨大な資産を有している-世界最強の経済力と軍事力、世界をリードする革新性、比類なき「ソフト・パワー(soft power)」、そして同盟国やパートナー国に利益をもたらしてきた歴史的実績-これらが我々の競争優位を支えている。

トランプ大統領は、インド太平洋地域において同盟関係を構築し、パートナーシップを強化している。これらは将来にわたって安全保障と繁栄の基盤となるだろう。

経済学:究極の賭け
1979年に中国経済が世界に再開されて以来、両国間の商業関係は基本的に不均衡であり続けてきた。成熟した豊かな経済大国と世界最貧国の一つとの間で始まった関係は、ほぼ対等な関係へと変貌を遂げた。それにもかかわらず、ごく最近までアメリカの態勢は過去の想定に根ざしたままであった。

中国は2017年に始まった合衆国の関税政策転換に対応するため、サプライ・チェーンへの支配力を強化した。特に今後数十年の最大の経済戦場となる世界の中低所得国(一人当たりGDP1万3800ドル以下)においてその動きが顕著である。中国から低所得国への輸出は2020年から2024年の間に倍増した。

合衆国はメキシコを含む十数カ国の中間業者や中国資本の工場から間接的に中国製品を輸入している。中国の低所得国向け輸出額は現在、合衆国向け輸出額のほぼ4倍に達している。トランプ大統領が2017年に就任した当初、中国の対米輸出額はGDPの4%を占めていたが、その後GDP比2%強まで低下した。しかし中国は、他の代理国を通じて合衆国への輸出を継続している。

今後、我々はアメリカと中国の経済関係を再調整し、相互主義と公平性を優先してアメリカの経済的自立を回復させる。中国との貿易は均衡を保ち、非敏感分野に焦点を当てるべきである。アメリカが成長軌道を維持し、北京との真に相互に有益な経済関係を維持しながらそれを持続できるならば、現在の30兆ドル規模の経済は2025年までに40兆ドル規模へと拡大し、2030年代には世界最大の経済大国としての地位を維持する羨望の的となるだろう。我々の究極の到達目標は、長期的な経済活力の基盤を築くことである。

重要なのは、これと並行して、インド太平洋地域における戦争を防止するための抑止力への強固かつ継続的な注力が不可欠である点だ。この複合的アプローチは好循環を生み得る。すなわち、強力なアメリカの抑止力がより規律ある経済行動の余地を創出すると同時に、より規律ある経済行動が長期的な抑止力の維持に必要なアメリカの資源増強につながるのである。

これを達成するには、いくつかのことが不可欠である。

第一に、合衆国はあらゆる国や源からの危害から、わが国の経済と国民を守り、防衛しなければならない。これは(とりわけ以下を含む)終結を意味する。

・ 略奪的な、国家主導の補助金と産業戦略

・ 不公正な取引慣行

・ 雇用破壊と脱工業化

・ 大規模な知的財産窃盗および産業スパイ活動

・ 合衆国の鉱物や希土類元素を含む重要資源へのアクセスを脅かすサプライ・チェーンへの脅威

・ アメリカのオピオイド危機を助長するフェンタニル前駆体の輸出

・ プロパガンダ、影響工作、その他の文化的破壊活動

第二に、合衆国は条約同盟国およびパートナー国と協力しなければならない。これらの国々は、我が国の30兆ドル規模の国家経済にさらに35兆ドルの経済力を加え(合わせて世界経済の半分以上を占める)、略奪的な経済慣行に対抗し、統合された経済力を活用して世界経済における我が国の主導的地位を守り、同盟国の経済が競合するいかなる勢力にも従属しないよう確保すべきである。

我々は、インドとの商業(その他)関係を継続的に改善し、オーストラリア、日本、合衆国(「クアッド(the Quad)」)との継続的な四者間協力を通じて、ニューデリーがインド太平洋地域の安全保障に貢献するよう促さねばならない。さらに、いかなる単一の競争国による支配も防止するという共通の利益(joint interest)に沿って、同盟国・パートナー国の行動を調整するよう努める。

合衆国は同時に、最先端の軍事技術および軍民両用技術における優位性を維持・発展させるための研究に投資しなければならない。特に合衆国の優位性が最も強い分野に重点を置く必要がある。これには水中・宇宙・核分野に加え、軍事力の未来を決定づけるAI、量子コンピューティング、自律システムなどの分野、そしてこれらの分野を支えるためのエネルギーが含まれる。

さらに、合衆国政府とアメリカの民間セクターとの重要な連携関係は、重要インフラを含む合衆国ネットワークに対する持続的な脅威の監視維持に寄与している。これにより合衆国政府は、合衆国経済の競争力を保護しアメリカの技術セクターの回復力を強化しつつ、リアルタイムでの脅威の発見、帰属特定、対応(すなわちネットワーク防御および攻撃的サイバー作戦)を実施する能力を確保している。

これらの能力を向上させるには、競争力をさらに高め、イノベーションを促進し、アメリカの天然資源へのアクセスを拡大するため、大幅な規制緩和も必要となる。その過程で、合衆国および地域の同盟国にとって有利な軍事バランスを回復することを目指すべきである。

合衆国は、経済的優位性を維持し同盟体制を経済グループとして強化するだけでなく、今後数十年にわたり世界経済成長(global economic growth)の大部分が発生すると見込まれる国々において、強力な外交的取り組みと民間主導の経済的関与を実行しなければならない。

アメリカ・ファースト外交は、世界貿易関係の再均衡を目指す。我々は同盟国に対し、アメリカの経常赤字が持続不可能であることを明確に伝えてきた。欧州、日本、韓国、オーストラリア、カナダ、メキシコ、その他の主要国に対し、中国の経済を家計消費へと再均衡させる貿易政策の採用を促さねばならない。東南アジア、ラテン・アメリカ、中東だけでは中国の膨大な過剰生産能力を吸収しきれないからだ。欧州やアジアの輸出国もまた、中所得国を輸出先として限定的ながら成長する市場と見なすことができる。

中国の国営企業や政府系企業は物理的・デジタルインフラの構築に優れており、中国は貿易黒字の約1.3兆ドルを貿易相手国への融資に再投資してきた。アメリカとその同盟国は、いわゆる「グローバル・サウス(Global South)」に向けた共同計画(joint plan)を策定はおろか実行すらしていないが、合わせて膨大な資源を有している。欧州、日本、韓国などは7兆ドルの純対外資産を保有している。多国間開発銀行を含む国際金融機関は合計1.5兆ドルの資産を有する。任務の拡大がこれらの機関の有効性を損なっている面はあるものの、現政権はその指導的立場を活用し、アメリカの利益に資するよう改革を実施することに尽力している。

アメリカを他国と一線を画すもの-開放性、透明性、信頼性、自由と革新への献身、そして自由市場資本主義-が、今後も我々を世界が真っ先に選ぶパートナーたらしめる。世界が必要とする重要技術において、アメリカは依然として主導的立場にある。我々はパートナーに対し、ハイテク協力、防衛装備品の購入、資本市場へのアクセスなど、決定を我々有利に導く一連の誘因を提示すべきである。

トランプ大統領が2025年5月にペルシャ湾岸諸国を公式訪問した際、アメリカの技術力とその魅力が示された。同大統領は湾岸諸国に対し、アメリカの優れたAI技術への支持を勝ち取り、パートナーシップを深化させた。アメリカは同様に、欧州やアジアの同盟国・パートナー(インドを含む)を巻き込み、西半球における共同の立場(joint positions)を固め強化するとともに、重要鉱物に関してはアフリカにおける共同の立場を強化すべきである。

我々は、金融と技術における比較優位性を活用し、協力国との輸出市場を構築する連合を形成すべきである。アメリカの経済パートナーは、過剰生産能力や構造的不均衡を通じて合衆国から収益を得ることを期待すべきではなく、戦略的連携に基づく管理された協力を通じ、また合衆国の長期投資を受け入れることで成長を追求すべきである。

世界で最も深く効率的な資本市場を有するアメリカは、低所得国が自国の資本市場を発展させ、自国通貨を米ドルに緊密に連動させることを支援できる。これにより、米ドルが世界の基軸通貨としての将来を確固たるものとする。

我々の最大の強みは、依然として政府のシステムと活力ある自由市場経済にある。しかし、このシステムの優位性が当然のように持続するとは考えられない。したがって、国家安全保障戦略は不可欠である。

軍事的脅威の抑止
長期的には、アメリカの経済的・技術的優位性を維持することが、大規模な軍事衝突を抑止し防止する最も確実な方法である。

有利な通常戦力バランスは、戦略的競争において依然として不可欠な要素である。台湾への注目が集まっているのは当然であり、その背景には台湾の半導体生産における支配性(dominance of semiconductor production)もあるが、主に台湾が第二列島線への直接アクセスを提供し、北東アジアと南東アジアを二つの明確な戦域に分断する役割を果たしているからである。世界の海上輸送の3分の1が南シナ海を通過していることを考慮すると、これは合衆国経済に重大な影響を及ぼす。したがって、台湾をめぐる紛争を抑止すること、理想的には軍事的優位性を維持することが優先課題である。また、我々は台湾に関する長年の宣言的政策を維持する。すなわち、合衆国は台湾海峡における現状の一方的変更を支持しない。

我々は第一列島線全域における侵略を阻止できる軍隊を構築する。しかしアメリカの軍はこれを単独で行うことはできず、また単独で行うべきでもない。

我々の同盟国は集団防衛のため、支出を増やすだけでなく、より重要なのは行動を起こすことで、はるかに多くの貢献をしなければならない。アメリカの外交の取組みは、第一列島線の同盟国・パートナーに対し、米軍が自国の港湾やその他の施設へのアクセスを拡大すること、自国の防衛費を増やすこと、そして最も重要なのは侵略を阻止する能力への投資を促すことに焦点を当てるべきである。これにより第一列島線沿いの海上安全保障課題が相互に連動すると同時に、台湾の占領や防衛不可能なほど不利な戦力均衡の達成といったあらゆる企てを阻止する米軍と同盟国の能力が強化される。

関連する安全保障上の課題は、いかなる競争相手も南シナ海を支配する可能性があることだ。これにより、潜在的に敵対的な勢力が、世界で最も重要な商業航路の一つに通行料制度を課すか、さらに悪いことに、その航路を自由に閉鎖・再開する可能性が生じる。いずれの結果も合衆国経済および合衆国の広範な利益に損害を与えるだろう。これらの航路を開放状態に保ち、「通行料(tolls)」を課さず、一国による恣意的な閉鎖を受けないよう抑止力と併せて強力な措置を構築しなければならない。これには軍事力(特に海軍力)へのさらなる投資だけでなく、この問題が解決されない場合に被害を受ける可能性のあるインドから日本、そしてそれ以上の全ての国々との強力な協力も必要となる。

トランプ大統領が日本と韓国に対し負担増を強く要求していることを踏まえ、我々はこれらの国々に防衛費の増額を促す必要がある。その焦点は、敵対者を抑止し第一列島線を防衛するために必要な能力(新たな能力を含む)に置かれるべきだ。同時に、西太平洋における軍事プレゼンスの強化・強化を図るとともに、台湾やオーストラリアとの交渉(dealings)においては防衛費増額に関する断固たる姿勢を堅持する。

紛争を防止するには、インド太平洋地域における警戒態勢の維持、防衛産業基盤の再構築、自国および同盟国・パートナー国による軍事投資の拡大、そして長期的な経済・技術競争での優位性確保が不可欠である。

C. 欧州の偉大さを推進する
アメリカの当局者は、欧州の問題を軍事費不足と経済停滞という観点で捉えることに慣れきっている。これには一理あるが、欧州の真の問題はさらに根深い。

欧州大陸は世界GDPに占める割合を低下させている-1990年の25%から現在では14%まで減少した-その一因は、創造性と勤勉さを損なう国内および越境的な規制にある。

しかしこの経済的衰退は、文明の消滅という現実的でより深刻な見通しに影を潜めている。欧州が直面するより大きな問題には、政治的自由と主権を損なう欧州連合(EU)やその他の超国家的機関の活動、大陸を変容させ紛争を生む移民政策、言論の自由の検閲と政治的反対勢力の弾圧、急落する出生率、そして国民的アイデンティティと自信の喪失が含まれる。

現在の傾向が続けば、20年以内にこの大陸は様変わりするだろう。したがって、特定の欧州諸国が信頼できる同盟国であり続けるのに十分な経済力と軍事力を維持できるかどうかは、まったく明らかではない。こうした国々の多くは現在、現状路線をさらに強化している。我々は欧州が欧州であり続け、文明としての自信を取り戻し、規制による窒息状態という失敗した方針を放棄することを望む。

この自信の欠如は、欧州とロシアの関係において最も顕著である。核兵器を除けば、ほぼあらゆる指標において欧州同盟国はロシアに対して圧倒的なハードパワーの優位性を有している。ロシアのウクライナ侵攻の結果、欧州とロシアの関係は今や著しく悪化しており、多くの欧州人はロシアを存亡の脅威と見なしている。欧州とロシアの関係を管理するには、ユーラシア大陸全体における戦略的安定の条件を再構築するとともに、ロシアと欧州諸国間の紛争リスクを軽減するため、合衆国の外交的関与が不可欠となる。

合衆国にとって、ウクライナにおける敵対行為の迅速な停止を交渉することは中核的な利益である。これにより欧州経済を安定させ、戦争の意図せざる拡大やエスカレーションを防ぎ、ロシアとの戦略的安定を回復するとともに、ウクライナが存続可能な国家として生き残るための戦後復興を可能とするためである。

ウクライナ戦争は、欧州、特にドイツの対外依存度を高めるという逆効果をもたらした。現在、ドイツの化学企業は中国に世界最大級の加工プラントを建設中だが、その原料となるロシア産ガスは自国では入手できない。トランプ政権は、不安定な少数与党政権に支えられた欧州当局者らと対立している。彼らは戦争への非現実的な期待を抱きつつ、多くの場合、反対派を弾圧するために民主主義の基本原則を踏みにじっている。

欧州の大多数は平和を望んでいるが、その願望は政策に反映されていない。その主な理由は、各政府が民主的プロセスを破壊しているためである。欧州諸国が政治危機に陥っている限り自らを改革できないという事実こそが、合衆国にとって戦略的に重要な点なのである。

しかし欧州は、戦略的にも文化的にも合衆国にとって依然として極めて重要である。大西洋横断貿易は世界経済とアメリカの繁栄を支える柱の一つであり続けている。製造業から技術、エネルギーに至る欧州の各分野は、世界で最も堅調な分野の一つである。欧州は最先端の科学研究と世界をリードする文化機関の本拠地でもある。欧州を切り捨てる余裕などないばかりか、そうすることは本戦略が達成しようとする目標にとって自滅的である。

アメリカの外交は、真の民主主義、表現の自由、そして欧州諸国の個性的特徴と歴史を臆することなく称える姿勢を今後も堅持すべきである。アメリカは欧州の政治的同盟国に対し、この精神の復興を推進するよう促しており、愛国的な欧州政党の影響力拡大は確かに大きな楽観材料となっている。

我々の到達目標は、欧州が現在の進路を修正する手助けをすることであるべきだ。我々が競争に勝ち抜くためには強力な欧州が必要であり、いかなる敵対者も欧州を支配することを防ぐためにも、我々と協調して行動する欧州が必要だ。

アメリカがヨーロッパ大陸、そしてもちろん英国とアイルランドに感情的に愛着を抱いているのは当然のことである。これらの国々の特性は戦略的にも重要だ。なぜなら我々は、創造的で有能、自信に満ちた民主的な同盟国に依存し、安定と安全の基盤を築くことを期待しているからだ。我々は、かつての偉大さを取り戻そうとする志を同じくする国々と協力したいと考えている。

長期的には、遅くとも数十年以内に、特定のNATO加盟国が非欧州系住民が過半数を占めるようになる可能性は十分にある。したがって、そうした国々が自らの国際的な立場や合衆国との同盟関係を、NATO憲章に署名した国々と同じように捉えるかどうかは、未解決の問題である。

欧州に対する我々の包括的な政策は、以下の点を優先すべきである:

・ 欧州における安定状態の再構築とロシアとの戦略的安定性の確保

・ 欧州が自らの足で立ち、対立するいかなる敵対者の力にも支配されることなく、自らの防衛に対する主要な責任を担うことを含め、結束した主権国家群として機能できるようにすること

・ 欧州諸国において、欧州の現在の進路に対する抵抗力を育むこと

・ 欧州市場を合衆国製品・サービスに開放し、合衆国労働者と企業に対する公正な待遇を確保すること

・ 中央・東欧および南欧諸国の健全な国家建設を、商業的結びつき、武器販売、政治的協力、ならびに文化・教育交流を通じて推進する

・ NATOが恒久的に拡大する同盟であるという認識を終わらせ、その現実を防ぐこと

・ 欧州に対し、重商主義的な過剰生産能力、技術窃盗、サイバー諜報活動、その他の敵対的な経済慣行に対抗するための行動を取るよう促す。

D. 中東:負担を転換し、平和を築く
少なくとも半世紀にわたり、アメリカの外交政策は中東を他のどの地域よりも優先してきた。その理由は明らかだ。中東は何十年にもわたり世界最大のエネルギー供給源であり、超大国の競争の主戦場であり、世界全体、さらには我々の国土にまで波及する恐れのある紛争が蔓延していた。

今日、少なくともその力学のうち二つはもはや成立していない。エネルギー供給は大幅に多様化し、合衆国は再び純エネルギー輸出国となった。超大国の競争は、合衆国が最も羨望すべき地位を維持する大国の駆け引きへと移行した。トランプ大統領が湾岸諸国、その他のアラブ諸国、そしてイスラエルとの同盟関係を成功裏に再活性化させたことで、この地位はさらに強化されている。

中東における紛争は依然として最も厄介な要因であるが、この問題は今日、見出しが示唆するほど深刻ではない。地域最大の不安定要因であるイランは、2023年10月7日以降のイスラエルの行動と、2025年6月にトランプ大統領が実施した「ミッドナイト・ハンマー作戦」によって著しく弱体化しており、同作戦はイランの核計画を大幅に損なった。

イスラエル・パレスチナ紛争は依然として難題だが、トランプ大統領が仲介した停戦と人質解放により、より恒久的な平和に向けた進展が見られた。ハマスを支持する主要勢力は弱体化するか撤退した。シリアは潜在的な問題を抱えるが、アメリカ、アラブ諸国、イスラエル、トルコの支援により安定化し、地域における不可欠かつ建設的な役割を担う正当な地位を取り戻す可能性がある。

この政権が制限的なエネルギー政策を撤廃または緩和し、アメリカのエネルギー生産が拡大するにつれ、アメリカが中東に焦点を当ててきた歴史的な理由は後退するだろう。代わりに、同地域は石油・ガスをはるかに超えた産業-原子力エネルギー、AI、防衛技術など-において、国際投資の供給源かつ目的地としてますます重要性を増す。また、中東のパートナーと連携し、サプライ・チェーンの確保から、アフリカなど世界の他の地域における友好的な開放市場の育成機会の強化に至るまで、その他の経済的利益を推進することも可能である。

中東のパートナー諸国は過激主義との闘いへの決意を示しており、アメリカの政策はこの傾向を今後も後押しすべきである。ただしそのためには、特に湾岸君主国に対し、伝統や歴史的な統治形態を放棄するよう強要するというアメリカの誤った試みを断念する必要がある。改革が外部からの押し付けではなく、自発的に生じた時と場所で、それを奨励し称賛すべきである。中東との良好な関係構築の鍵は、共通の利益分野で協力しつつ、この地域とその指導者、諸国をありのままに受け入れることにある。

アメリカは常に、湾岸地域のエネルギー供給が完全な敵の手に渡らないこと、ホルムズ海峡が開放された状態を維持すること、紅海が航行可能な状態を維持すること、同地域がアメリカの国益やアメリカの本土に対するテロの温床や輸出拠点とならないこと、そしてイスラエルの安全が確保されることを核心的利益として堅持する。我々はこの脅威に対し、何十年も続く無益な「国家建設(nation-building)」戦争に頼ることなく、思想的・軍事的に対処でき、また対処しなければならない。また我々は、アブラハム合意を地域のより多くの国々やイスラム世界の他の国々へ拡大することにも明確な利益を有している。

しかし、中東がアメリカの外交政策において長期計画と日常的な実行の両面で支配的だった時代は、ありがたいことに終わった。中東がもはや重要でないからではなく、かつてのような絶え間ない刺激源であり差し迫った大惨事の潜在的要因ではなくなったからだ。むしろ中東は、協力関係と友好、投資の場として台頭しつつある。この傾向は歓迎され、奨励されるべきである。実際、トランプ大統領がシャーム・エル・シェイクでアラブ諸国を結束させ、平和と正常化を追求する能力は、合衆国が遂にアメリカの利益を最優先にできることを可能にするだろう。

E. アフリカ
あまりにも長い間、アメリカのアフリカ政策はリベラルなイデオロギーの提供、そして後にその拡散に焦点を当ててきた。合衆国はむしろ、紛争の緩和、相互に有益な貿易関係の育成、そして外国援助のパラダイムから、アフリカの豊富な天然資源と潜在的な経済的可能性を活用できる投資と成長のパラダイムへの移行を図るため、選りすぐりの国々との連携を模索すべきである。

関与の機会としては、進行中の紛争(例:コンゴ民主共和国・ルワンダ、スーダン)の解決交渉や新たな紛争(例:エチオピア・エリトリア・ソマリア)の防止、ならびに援助・投資アプローチの見直し(例:アフリカ成長機会法)が挙げられる。また、アフリカの一部地域で再燃するイスラム過激派テロ活動には警戒を怠らず、同時にアメリカの長期的な駐留やコミットメントは避ける必要がある。

合衆国はアフリカとの援助中心の関係から、貿易・投資中心の関係へと移行すべきである。合衆国製品・サービスへの市場開放を約束する、能力があり信頼できる国家とのパートナーシップを優先すべきだ。アフリカにおける合衆国の投資先として、投資収益の見込みが高い分野には、エネルギー部門と重要鉱物資源の開発が含まれる。

合衆国が支援する原子力エネルギー、液化石油ガス、液化天然ガス技術の開発は、合衆国企業に利益をもたらし、重要鉱物やその他の資源をめぐる競争において我々を支援する。

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国際情勢』