民主主義における衆愚政治に堕す危険性と、賢人政治におけるエリート専制への危険性の相克の歴史は？
『AI による概要
民主主義における衆愚政治（オクロクラシー）に陥る危険性と、賢人政治（アリストクラシー、哲人政治）におけるエリート専制への危険性という二つの政治体制間の相克は、古代ギリシア哲学にその起源を持ち、洋の東西を問わず現代に至るまで続く政治思想上の主要なテーマです。
古代ギリシアにおける起源
この相克の歴史的起点は、古代ギリシアの都市国家（ポリス）における政治変動と、それに対する哲学者たちの考察にあります。
プラトンの哲人政治論:
ソクラテスの弟子であるプラトンは、アテナイ民主政が師ソクラテスを処刑した経験から民主主義を嫌悪しました。
彼は、無知な大衆による政治（衆愚政治）の危険性を指摘し、理想的な国家は、「善のイデア」を認識した哲学者（賢人）が統治する「哲人政治（賢人政治）」であると主張しました。
これは、専門的な知識と徳を備えたエリートによる統治が、大衆の感情に流される政治よりも優れているという思想です。
アリストテレスの政体分類:
プラトンの弟子であるアリストテレスは、政治体制を「誰が統治するか」と「誰の利益のために統治するか」で分類しました。
彼は、民主政（多数者支配）の堕落形態が衆愚政（デマゴーグによる扇動政治）であり、貴族政（少数者支配）の堕落形態が寡頭政（私利私欲のための支配）であるとしました。
アリストテレスは、衆愚政への転落の危険を認めつつも、現実的には、特定のエリートによる専制よりも、多数の合意に基づく民主政の方が安定しており、被害が少ないと考えました。
近代・現代における展開
古代ギリシア以来、この二つの危険性の間の緊張関係は、様々な歴史的文脈で繰り返されてきました。
ローマ共和政の崩壊:
共和政ローマ末期には、キケロなどがカエサルによる独裁を警戒し、法治主義に基づく共和制の維持を目指しましたが、最終的には内乱を経て帝政へと移行しました。
これもまた、衆愚化への懸念が独裁を招く一例と見ることができます。
近代民主主義とエリート:
近代以降の代議制民主主義は、古代ギリシアの直接民主主義とは異なり、選挙で選ばれた「エリート」が政治を行うことで、衆愚政治の危険性を回避しようとする側面を持っています。
しかし同時に、選ばれたエリートが国民から乖離し、既得権益の確保に走る「エリート専制」の危険性も常に指摘されています。
20世紀の全体主義:
20世紀には、ヴァイマル共和政下のドイツのように、民主主義の混乱（衆愚政治と捉えられた）を批判する形で、アドルフ・ヒトラーのような指導者への服従や独裁を主張する全体主義体制が出現した例もあります。
これは、衆愚政治への恐怖が、より危険な専制政治を招きうることを示しています。
現代のポピュリズム:
現代においても、ポピュリズム（大衆迎合主義）の台頭が衆愚政治の現れとして警戒される一方、既存のエリート政治家に対する不信感も根強く存在しています。
結論
歴史を通じて、政治体制は「無知な大衆による混乱や扇動政治（衆愚政治）の危険性」と「特権的な少数者による独善的・非民主的な支配（エリート専制）の危険性」という二つの極の間で揺れ動いてきました。
現代の民主主義は、チャーチルの言うように「最悪の政治形態だが、これまでに試みられた他のあらゆる政治形態を除けば」最もましな制度として、この二つの危険性のバランスを取りながら運用されています。
重要なのは、いずれかの極端に陥ることを避けるために、国民の政治的教養の向上や、法の支配の徹底、権力分立といった仕組みが機能し続けることです。
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ジジイがあれこれ考えた 