ドイツ 「もう戦争の過去に縛られたくない」という社会の意識変化に呼応する極右AfD台頭

ドイツ 「もう戦争の過去に縛られたくない」という社会の意識変化に呼応する極右AfD台頭
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2025-08-17 23:06:31 | 欧州情勢

(【8月17日 テレ朝NEWS】)

【極右AfDの躍進 その支持層の特徴・・・「ナチス責任を過度に強調する記憶文化」に批判的で「自国への誇りを持ちたい」と感じる歴史認識】

今年2月23日投開票のドイツ総選挙で「極右」と称される「ドイツのための選択肢(AfD)」は21%を獲得し第2党となりまし。特に、地域ごとの得票で旧東ドイツ地域のほぼ全域で首位となり圧倒的強さを見せています。

極右AfDの躍進についてはこれまでも再三取り上げてきましたが、AfDは2025年8月現在、全国支持率で24%〜26%と、政権与党CDU/CSUと並ぶかそれを上回る勢いで、特に旧東独地域では32~35%という強い支持を得ています。

****AfD支持層の特徴****

1.地理的分布

旧東ドイツ(特にザクセン州・テューリンゲン州)で強い支持→ 経済格差、インフラの遅れ、人口減少が大きい。
西ドイツでも支持は存在するが、旧東独ほどの比率には至らない。

2.社会経済的属性

学歴・所得が低めの層が多い 特に「経済的に取り残された」と感じる層。
ただし「高学歴・中産階級」の保守層も一定数存在(ナショナルな誇り回復を支持)。
失業経験や非正規雇用が多い層に支持が厚い。

3.年齢・性別

中高年男性(40~60代)に多い。
若者支持は比較的弱いが、旧東独の若い世代には広がっている傾向。
女性支持は男性より少なめ。

4.意識・価値観

移民・難民政策への不満
2015年以降の「難民危機」で大きく支持を伸ばした。移民を「治安・文化的脅威」とみる層が多い。

エリート・既存政党への不信
「自分たちの声を代弁しない」という不満が支持動機。 特に農村部や小都市の「政治的に忘れられた層」に強い。

歴史認識
「ナチス責任を過度に強調する記憶文化」に批判的。 「自国への誇りを持ちたい」と感じる層。 

グローバル化・EU統合への反発 
「主権をEUに奪われている」という意識。

5.世論調査での傾向(最近の研究から)

AfD支持者は、他政党支持層に比べて「移民制限」「ドイツ文化の防衛」を強く重視。
「民主主義そのものを否定」しているわけではなく、むしろ「既存政党が民意を反映していない」という認識が強い。
経済的不安よりも「文化的・アイデンティティ上の脅威認識」が支持の中心動機とされる。

✅ まとめると

AfD支持層は、地理的には旧東独を中心に、社会的には学歴・所得が低め、中高年男性が多く、心理的には「取り残され感」「移民・EUへの反発」「誇りの回復欲求」が強い。
つまり「経済的弱者」と「文化的保守層」の両方を取り込んでいるのが特徴です。【ChatGPT】

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【AfD支持層の歴史認識は、ドイツ社会全体の戦争・ナチスという「負の歴史」への認識の変化と連動・相互に呼応】

AfD支持層の特徴は日本で躍進した参政党支持層とかなりオーバーラップしているようにも思えます。

「ナチス責任を過度に強調する記憶文化」に批判的で「自国への誇りを持ちたい」と感じる・・・そういう意識は、ドイツ社会全体の戦争・ナチスという「負の歴史」への認識の変化と連動・相互に呼応するものがあります。

****ドイツにおける、戦争・ナチスの「負の歴史」への社会の認識の変化、及びAfDの「負の歴史」への認識・対応との関連性****

1.ドイツ社会における「戦争・ナチスの負の歴史」への認識の変化

戦後から長らくの基本姿勢

第二次世界大戦後のドイツ(特に西独)は「過去の克服(Vergangenheitsbewältigung)」を国家と社会の柱としてきました。ナチスの戦争責任・ホロコーストを学校教育やメディアで徹底的に学ぶことが制度化され、記念碑・博物館・追悼行事も盛んです。

冷戦後・統一後の変化

東西統一以降、旧東独地域で「自分たちはナチスに加担していない」という感覚があり、西独の「負の歴史教育」に対する距離感が存在しました。

さらに世代交代により戦争を直接知る人が少なくなり、「ナチス責任」よりも「戦後の成功」や「ドイツ人自身の被害」(空爆、追放など)に目を向ける傾向も強まっています。
近年の傾向

若い世代の間でも「歴史教育は重要」との共通認識は依然として強い。

しかし「過去を強調しすぎていないか」「誇れるドイツの歴史をもっと語るべきでは」という声も広がっている。
難民・移民問題、EU財政負担など現代的な課題への不満が、歴史認識への反発と結びつくこともある。

2.AfD(ドイツのための選択肢)の歴史認識・対応

公式の立場

AfDは「ナチスの犯罪は認める」とは表明しつつも、他の主要政党と比べると 「過去を強調しすぎている」という立場 が目立ちます。

特徴的な発言例

アレクサンダー・ガウラント(元党首)が「ヒトラーとナチスはドイツの歴史における“鳥の糞”のようなものだ」と発言(2017年)。→ 大きな批判を浴びたが、党支持層には一定の共感も。

ビョルン・ヘッケ(極右色の強い指導者)は、ベルリンのホロコースト記念碑を「恥の記念碑」と呼び、撤去を主張した。

党内の二重性

AfDは公然とナチス礼賛はせず、法的にも禁止されているため「犯罪は否定しない」とするが、同時に「もう過去に縛られるべきでない」「ドイツ人も誇りを持てる」と主張。→ 実質的には 「歴史相対化」「記憶文化の転換」 を求めている。

3.両者の関連性

社会全体の認識の変化(過去を重視しつつも「未来志向」を強める傾向)が、AfDの主張と一部重なる部分を生んでいる。特に旧東独地域の若者や社会不満層に響きやすい。

AfDはこの空気を利用して「ナチス犯罪を否定はしないが、過去をいつまでも強調するのは不健全だ」と訴えることで支持を広げている。

他方で、ドイツ社会の主流(教育機関、メディア、主要政党)は依然として「過去の記憶を軽視する動き」に警戒しており、AfDの姿勢を危険な歴史修正主義と批判。

まとめると

ドイツ社会では「過去を記憶する文化」は依然強いが、世代交代・現代的課題により「もう十分では」という声も増えている。

AfDはこの風潮を政治的に利用し、歴史を相対化しつつ「誇りの回復」を唱えている。

結果として、社会の歴史認識の変化がAfD台頭の土壌になり、AfDの言動がまた社会の分断を深める――という双方向的な関係がある。【ChatGPT】

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【「もう過去に縛られたくない」という人々 “負の歴史”を伝える遺産への攻撃も】

“社会の歴史認識の変化がAfD台頭の土壌になり、AfDの言動がまた社会の分断を深める――という双方向的な関係がある。”・・・社会全体とAfD台頭が相互に呼応する形で進行しています。

****「戦後80年」ドイツ “ホロコースト”の過去 “負の歴史”伝える史跡で異変****
ナチスによるユダヤ人の大量虐殺。その“負の歴史”の爪痕が、今も各地に残るドイツ。戦後80年、歴史を語り継ぐはずの史跡で今、“異変”が起きています。(8月16日OA「サタデーステーション」)

■根付く“負の歴史”への反省 ドイツ“ダークツーリズム”取材
(中略)
ドイツ人女性(24) 「次世代をよりよくするためにも過去を振り返り、反省すべきです」
ドイツ人男性(21) 「記憶し2度と繰り返さないことが重要です」

ドイツ国民に根付くのは、“負の歴史”に対する反省。その姿勢は街にも刻まれています。中心部の広大な敷地にはー“棺”のようなモニュメント。ユダヤ人犠牲者を追悼する“ホロコースト記念碑”です。地下には、犠牲者の写真や手紙が展示されています。

こうした“負の歴史”の爪痕を巡る“ダークツーリズム”。ドイツでは、記憶を伝える場として浸透しています。

多くの観光客が訪れるホロコースト記念碑

さらに住宅街でみかけたのは…街灯につけられたパンのイラスト。その裏側にはドイツ語でこう書かれています。
パンのイラストが書かれた看板
1940年7月4日 (パンの看板:裏側)「ユダヤ人が食料品を購入していい時間は午後4時から午後5時の間のみ」

帽子や音符のイラストの裏には… ユダヤ人を差別する当時の条例や法律
同じような看板がこの地区に80枚。いずれもユダヤ人を差別する当時の条例や法律です。“負の歴史”を日常的に思い出せるよう、あえて目のつく場所に設置しているといいます。

ユダヤ人迫害を伝えるボランティア マクダレーナ・レッシュ氏

「私たちドイツ人には特に厳しい過去、悲惨な過去があります。たとえ経験していなくても、責任があります」

■“負の歴史””の舞台巡る “ダークツーリズム”に異変

ところが今、“ダークツーリズム”への攻撃が相次いでいます。ドイツ中部・チューリンゲン州、年間30万人が訪れるブーヘンバルト強制収容所記念館では…

イェンツ・ワーグナー館長 「250本のうち、これまでに50本以上の木が切り倒されました」
館長のワーグナーさんによると、犠牲者を弔うために植えられた木々が何者かによって切り倒されたといいます。

イェンツ・ワーグナー館長 「あぜんとしました。この行為は犠牲者を2度殺すようなものです」

飢餓、過労、人体実験などによってユダヤ人を含む、およそ5万6000人が犠牲となったこの収容所。
イェンツ・ワーグナー館長 「囚人たちは木製の四段ベッドの狭いスペースに収容されました。言葉にできないほどの劣悪な衛生状態、絶え間なく続く飢餓、そして執拗な虐待行為。常に死と隣り合わせでした。犠牲者たちは、殺害の痕跡を消すために焼却炉で焼かれました」

犠牲者を冒涜するような“攻撃”は他にも…
イェンツ・ワーグナー館長 「何者かがここに“かぎ十字”を彫りました。ここには“かぎ十字”と“ヘイト”の文字も刻まれています」

案内板に刻まれたのは、ナチスの象徴として知られる“かぎ十字”。ドイツでは法律で使用が禁止されています。
イェンツ・ワーグナー館長 「記念碑に対する攻撃は常にありましたが、特にここ数年で増えています」

■“負の歴史”向き合い方に変化?変わるドイツ社会の空気

なぜダークツーリズムへの“攻撃”が増えているのでしょうか。
イェンツ・ワーグナー館長 「ナチスの犯した罪と向き合うことに対するドイツ人の意識は明らかに低下しているのです」

背景にあるのは、“負の歴史”への向き合い方の変化です。
ドイツ人男性(35) いつまでも過去にとらわれていても、状況は良くなりません」
ドイツ人男性(45) 「ドイツ国民として、共に未来に目を向ける必要があります」

取材でみえてきたのは、「“ナチスの過去”に縛られたくない」という本音。最新の調査でも、「“ナチスの過去”に終止符を打つべきだ」という考えに4割近くが賛成し、反対を初めて上回る結果となったのです。

同様の発言は、政治家からもー
AfD ビョルン・ヘッケ氏 「首都の中心に“恥の記念碑”が立っている」

ホロコースト記念碑を“恥”と評したのは極右政党AfD(ドイツのための選択肢)の政治家・ヘッケ氏。“ナチスの過去”を反省し続けるべきでないと主張しています。

しかし、こうした一面を持つAfDが2月の総選挙で第2党に躍進。最新(8月)の世論調査では、与党第1党を抜いて首位となりました。支持を集めるワケは、移民・難民問題や現政権に対する不満から。さらに“自国ファースト”を掲げた訴えも共感を呼んでいます。私たちは、AfDの議員に話を聞くことができました。

AfDチューリンゲン州議会 ヴォルフガング議員
「我々はAfDとして、愛国者としてドイツを愛しています。歴史の中でナチス時代の12年間に焦点が当てられ、それ以前の素晴らしい1000年の文化はすべて否定されるー何かが間違っています」

■戦後80年 “歴史の書き換え”に懸念…記憶どうつなぐ?

ワーグナーさんは、“ナチスの過去”に対するAfDの姿勢が“攻撃”に少なからず影響しているといいます。

イェンツ・ワーグナー館長
「ナチスの思想を受け継ぐ集団がAfDの政治的メッセージに扇動され、攻撃するようになったのです」

さらに、“ナチスの過去”を軽んじる風潮が“歴史の書き換え”に繋がっていくのではと懸念しています。
イェンツ・ワーグナー館長
「ナチス時代を経験した人はほぼ残っていません。そのため間違った知識や情報をうのみにした主張がネット上に溢れ、作り話やフェイクが瞬く間に広まるのです」

こうした状況に対応するため、記念館では若い世代への歴史教育に力を入れています。フェイクニュースについてただ否定するのではなく、信憑性を議論するプログラムを用意しています。

教育部門責任者 ホルガー・オバリウス氏

「例えば、TikTokなどでは、ユダヤ人を嫌う言葉、人を差別する言葉、歴史を否定するようなデマが出てきます。『その情報はどこからか?』『発信している人は誰なのか?』情報源を確認することが重要だと認識させます」
だからこそ、自分の目で“戦争の記憶”を確かめ、考えることが重要だといいます。

イェンツ・ワーグナー館長

「私たちは皆、歴史と向き合うべきです。歴史の中でどのような過ちを犯したのか学ぶべきです。平和的、人道的、民主的な世の中を求めるのであれば」

【取材後記】

街の中心部に広がる追悼のモニュメント。街灯に掲げられた当時のユダヤ人差別の法律や条例。そして道には、かつてそこに暮らしていたユダヤ人の名前が刻まれ、小学校の校庭にも、子どもたちの手でつくられた記念碑が建っています。

ナチスによる“負の歴史”を抱えるドイツでは、人々の心だけでなく、街の風景そのものからも「戦争を忘れてはならない」という強い決意が伝わってきました。これは “記憶の文化”と呼ばれ、長く社会に根付いてきたものです。

しかし取材を通して見えてきたのは、「もう過去に縛られたくない」という人々の声。時代の流れの中で、こうした考えが生まれるのは自然なことかもしれません。

戦後80年が経ち、当時を知る人々が少なくなる今、私たちにできるのは、残された記録や証言を守り、自ら触れ、考え続けることだと思います。国際情勢が揺れ動く今こそ、節目の年に限らず、“負の歴史”に向き合い、現在、そして未来を見つめていくことが求められていると深く感じました。(サタデーステーション 若林奈織)【8月17日 テレ朝NEWS】

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