スイス「月8万円保険料」に募る不満 老いる欧州、きしむ皆保険

スイス「月8万円保険料」に募る不満 老いる欧州、きしむ皆保険
老いる欧州(上)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA25CZM0V20C25A7000000/

『2025年8月5日 5:00 [会員限定記事]

日本がモデルとしてきた欧州の社会保障がきしんでいる。少子高齢化が進み、人口増を前提とする高福祉型の制度は見直しが急務だが、負担増やサービス低下といった「痛み」は国民の反発が大きい。同じ悩みを抱える日本への教訓を現地で探った。

「スイスの家庭にとって一番の関心事は保険料負担。貧困層だけでなく中間層も支払いに苦しんでいる」。慈善団体、カリタス・スイスのラウラ・ブレヒビュラー氏はこう話す。

スイスでは…

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『スイスでは民間保険会社を通じて、全国民が健康保険に入ることを義務付けられている。原則として世帯の収入や経済状況にかかわらず均一の保険料を支払う。26歳以上の保険料は1人平均月450スイスフラン(約8万3000円)で、配偶者や子どもがいればさらに保険料がかかる。』

『高齢化で医療費が膨らみ、負担が増す。スイス連邦統計局によると、保険料を全国平均した指数(1999年=100)は2024年に213.9と前年比6%上昇した。25年間で2倍以上だ。

月給の中央値は約6800スイスフラン(約125万円)と高水準だが、物価上昇も激しい。自治体は低所得者に保険料の一部を補助するものの、収入が低い世帯への影響は年々強まっている。

スイス・イタリア語圏専門大学のカルロ・デ・ピエトロ教授は「かつては大多数が保険料を支払えたが、今は状況が大きく違う」と説明する。「公平性を高める努力とみることができる一方、まるで高級車を低所得者に買わせるようなものと考える人もいる」』

『一方、サービス面から医療改革を迫られているのが英国だ。税金を主な財源として診察や治療を無料で提供する国民医療制度(NHS)の財政難が続く。数週間も病院待ちを強いられ国民の不満が高まっている。』

『英スターマー政権は7月、地域で診断やリハビリなどを担う保健センターの新設、デジタル技術の活用などを盛り込んだ10年間の改革計画を打ち出した。運営費として、年290億ポンド(約5兆7500億円)を28年度までに積み増す計画だ。

実現性を疑う意見もある。英ヘルス・ファンデーションのフィービー・ダン上席政策研究員は「追加の費用負担がなければ実現は難しく、財政上厳しい」とみる。財政規律を重視するスターマー政権は増税や歳出削減で支持率が低迷する。6月末には予定していた低所得者向け給付カットの撤回に追い込まれた。』

『医療費負担と医療サービスの質は表裏一体だが、負担増の議論が後回しになるのは日本も変わらない。患者の自己負担を抑える「高額療養費制度」について、政府は負担限度額を段階的に引き上げる方針だったが、患者団体などの反発で再検討を迫られた。

医療技術の進歩も相まって医療費の高騰は今後も続いていく。国民が受け入れられる保険料負担のなかでどこまでサービスを提供するか。バランスの崩れた制度の立て直しに各国が苦しんでいる。

(井田正利)』