米研究者、75%がトランプ政権下で国外移動検討 英調査
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN28D0G0Y5A320C2000000/
『2025年3月29日 6:54
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神武直彦竹内薫
政権はNASAが請負業者と結ぶ契約を大量に解除した(西部カリフォルニア州)=ロイター
【ワシントン=赤木俊介】米国で頭脳流出が進む恐れが出てきた。英科学誌ネイチャーが米研究者1600人以上を対象に実施した調査で、研究活動への締め付けを強めるトランプ米政権を理由に「米国を離れることを検討している」と回答した割合は75%に上った。若手の研究者は特に移動を検討する傾向にあった。
ネイチャーが27日発表した。博士研究員(ポスドク)では約79%が国外への移動を検討していると回答した。移住先の候補はカナダや欧州など、共同研究者や家族がいる国が中心となった。「科学を支援する国ならどこでもいい」という回答もあった。
トランプ政権は「政府内の無駄と詐欺行為撲滅」の名目で大規模な人員削減と研究活動費の凍結を進めている。
米紙ワシントン・ポストによると、政権が発足した1月20日〜3月後半までで米国立衛生研究所(NIH)の予算が約30億ドル(およそ4500億円)減と前年同期比で6割減った。政権はNIHと米疾病対策センター(CDC)に新型コロナウイルスに関するあらゆる研究活動費を凍結すると通告し、エイズウイルス(HIV)の研究活動費も凍結した。
米航空宇宙局(NASA)では実業家イーロン・マスク氏が率いる米政府効率化省(DOGE)が計4億2000万ドル分の請負契約を解除した。気象データを集計、分析する米海洋大気局(NOAA)でも大幅な人員削減が進んでいる。
米商務省によると、研究開発(R&D)は21年に米国内総生産(GDP)の2.3%を占めた。米国のR&Dは主に民間部門が中心となっているものの、データ共有など官民の協力が欠かせない。研究者が国外に流出すれば米経済への打撃となる。
政権の締め付けは研究活動が活発な米大学にも波及している。トランプ政権下で大学が受け取る研究助成金が大幅に減額されたり、差し止められたりする可能性が高まっており、米ハーバード大は教職員の新規採用を中止した。ペンシルベニア大も大学院生の受け入れ枠を縮小した。
政権の強硬な移民政策も頭脳流出を加速させる可能性が高い。米移民当局が25日、タフツ大に在籍するトルコ国籍の大学院生を拘束するなど、留学生の言動やSNSへの投稿を巡り学生査証(ビザ)が取り消される事態が相次ぐ。
2月には米移民当局がハーバード大に勤務するロシア国籍の医学研究者を拘束した。同氏は税関への申告漏れを理由にビザが取り消しになったが、申告漏れの処分は通常、罰金や品物の没収に限られる。同氏は過去にウクライナ戦争への抗議活動に参加したため、ロシアへの退去が命じられればロシア当局に逮捕される恐れがあるという。
米国立科学財団(NSF)が24年3月に発表した報告書によると、21年時点で博士号を持つ米科学者やエンジニアのうち43%が外国生まれだった。留学生や外国生まれの研究者が減れば、研究分野における米国の優位性が崩れかねない。
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神武直彦
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授
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ひとこと解説米研究者の75%が国外移動検討を検討しているとのこと。実際の国外移動が加速されることで、頭脳流出が進むことによるデメリットもありますが、様々な知見が世界を循環しやすくなることによるメリットも少なからずあると思います。ただ、地球規模で考えた場合には、そのような知見がネガティブな作用を生み出さないような仕組みを作り出すべきであり、日本としては、高度人材が足りていない状況でもありますから、世界的な研究者と積極的に交流し、受け入れる機会でもあるので、その受け皿になる取り組みを積極的に行うべきではないかとも感じます。
2025年3月29日 9:38 (2025年3月29日 9:48更新)
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竹内薫
サイエンスライター
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別の視点アメリカの繁栄の基礎は、海外からの頭脳流入にあります。相次ぐ研究機関、大学への締め付けは、アメリカ国外への頭脳流出につながり、長期的にアメリカ経済に大きなダメージを与えるのではないでしょうか。逆に、アメリカ以外の国からすれば、一流の研究者を雇うことができるチャンスだと思います。
2025年3月29日 8:47
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