カナダのF-35発注見直し、米国は信頼できないパートナーと証明される恐れ
https://grandfleet.info/us-related/canada-reassessing-f-35-order-as-fears-u-s-proves-unreliable-partner/
『2025.03.18
米国のBreaking Defenseは17日「カナダがトランプ政権下で初めてF-35発注見直しに言及した」「カナダの動きに他の国が追従するかどうかは未解決の問題」「NATOに対するトランプの暴言は『米国が信頼できないパートナーである』と証明するかもしれない」と報じた。
参考:Canada says it’s reconsidering multibillion dollar F-35 buy as Trump ratchets up trade war
米国と外交・安全保障政策で衝突する場合に備えて調達先の多重化=異なるエコシステをもつ武器の存在は重要になってくるだろう
米国のBreaking Defenseはトランプ政権の不確実性を理由に「米国製システムは今後の選択肢においてデフォルトではなくなるだろう」と予想し、F-35Aの潜在的な顧客と見なされてきたポルトガルでもPÚBLICOの取材に応じたヌーノ・メロ国防相が「世界は変わってしまった。我々の同盟国はあらゆるシナリオ下で戦闘機を運用するための要素(メンテナンス、スペアパーツ、アップグレードなど)に制限を課す可能性がある」と言及、トランプ政権の不確実性を考慮してF-35A導入を否定するものと受け取られている。
出典:Lockheed Martin Aeronautics
さらにカナダでもトランプ政権の態度を理由にF-35A導入計画の中止を求める声が高まっており、カーニー政権のブレア国防相も14日「空軍の要求要件を満たすプラットフォームとしてF-35Aを選定したが、我々は他の選択肢も検討している。全てをF-35Aで更新する必要があるのかどうかだ」と述べ、国営放送のCBCは「既に16機分の購入資金を支払済で2026年に引き渡し予定だ。これをブレア国防相は受け入れるものの、残りのニーズ(72機)は選定結果で2位となったグリペンで満たすことを示唆した」と報じた。
ブレア国防相の報道官はBreaking Defenseの取材に「現時点でF-35Aの契約は有効」「最初の16機取得に関しては資金供給が法的に約束されている」「カーニー首相はF-35A契約がカナダにとって最善な投資かどうか、カナダのニーズを満たす他の選択肢があるのかどうかを判断するようブレア国防相に指示した」「我々はF-35A契約を直ぐにキャンセルするつもりはないが、カナダを取り巻く環境の変化を考慮して『現在の契約』が軍と国民にとって最善かどうかを確認しなければならない」と回答。
出典:Donald J. Trump
カナダを取り巻く環境の変化とはトランプ政権の不確実性、カナダ合併発言、関税問題、有事の際の武器主権などを指しており、つまり「このままF-35A(を含む米国製システム)を導入し続けるか、欧州製システムなど調達先を分散して外交と安全保障のリスクを分散させるか検討が必要」という意味で、Breaking Defenseは「NATO加盟国に対するトランプの暴言は『米国が信頼できないパートナーである』と証明するかもしれない」「カナダはF-35発注見直しに言及した初めての国で他国が追従するかどうかは未解決の問題」「もし追従すればF-35のサプライチェーンには大きな混乱が生じるかもしれない」と指摘している。
因みにF-35の運用維持は多国間で構築されたグローバル・メンテナンス・システムに依存し、特にF-35のコンポーネントは運用国間で共有され、運用国ではなく「地域整備業者」に送って点検・修理を行い、代わりコンポーネントが送られてくる仕組み、つまり整備を終えたF-35のコンポーネントは送られてきた国に返却されるのではなく地域毎に一旦プールされ、F-35物流情報システム=ALIS/ODINの管理に基づき「必要な国」にコンポーネントが配送されるため、航空自衛隊が整備に送り出したコンポーネントの代わりに「配送される整備済みコンポーネント」はオーストラリア空軍が使用していたものだったりするという意味だ。
出典:SAAB
国際整備拠点=MRO&U施設があっても「コンポーネントの供給」を止められれば「F-35の運用を維持できなくなる」という意味で、米国と外交・安全保障政策で衝突する場合に備えて調達先の多重化=異なるエコシステをもつ武器の存在は重要になってくるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Andrew Lee
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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 35』