NATOがロシアに対応できない原因、境界が曖昧で認識ギャップが生じるため

NATOがロシアに対応できない原因、境界が曖昧で認識ギャップが生じるため
https://grandfleet.info/us-related/the-reason-why-nato-cannot-deal-with-russia-is-because-of-unclear-boundaries-and-perception-gaps/

『2025.03.10

NATO作戦担当事務次長はAFAのイベントで「現在の平和→危機→紛争は段階的に進むのではなく、各段階の境界が曖昧で良くわからないうちに進んでいき、加盟国間の共有認識にキャップが生じて集団行動が困難になる」と指摘し、ロシアがNATOの構造的欠陥に付け込んでいることを浮彫りにした。

参考:NATO Operations Chief’s Five Lessons Learned From War In Ukraine

ウクライナ問題はNATOとそれを取り巻く戦略的思考と産業基盤にとってストレステストの役割を果たしているウクライナ関連グッズ

NATO加盟国の人口、経済、戦力、産業基盤を合わせた数字だけならロシアを圧倒しており、第5条=集団的自衛権が機能すれば「通常戦力の戦争でロシアに負ける要素がない」と考えがちだが、NATO作戦担当事務次長を務めるトーマス・ゴフス氏(米空軍での勤務後、国防総省、ホワイトハウス、上院議会で政策顧問を歴任)は米コロラド州で開催されたAFAのイベントで「ウクライナとロシアの戦争で得た教訓」を発表し、ロシアがNATOの構造的欠陥に付け込んでいることを浮彫りにした。

出典:DoD photo by Lisa Ferdinando

“NATOの集団行動は「認識の共有」という土台の上に成り立っており、これを達成するには実際の作業が必要だ。加盟国の代表らは2014年に同じ写真を見て「大規模なロシア軍がクリミアにいる」とか「少数のロシア軍がクリミアに入っただけ」と異なる認識を示し、加盟国間で共通認識が成形されなかったためNATOは何も行動できなかった。

2022年は同盟国間、特に米国による情報共有があったため2014年とは異なる対応になった”
“プーチンを刺激するのは「何をするかではなく何をしないか」で、この教訓を我々は2014年の時に学ぶべきだった。

プーチンは戦略家ではなく日和見主義者で、何度かドアを押してみて何の反応もなければ家の中に入ってくる。

プーチンは2014年に「武力を行使しても重大な事態は起こらない」と学び、これが2022年の侵攻を招いた要因だ。

彼自身の言葉を借りればプーチンは「新しい世界秩序の形成に向けて和解不可能で深刻な闘争が繰り広げられている」と考えている”

出典:Anton Holoborodko/CC BY-SA 3.0 ロシアがクリミア占領に投入したLittle green men

“我々は戦略的対立の中にいる。

オーストラリアの友人たちも「インド太平洋地域における習近平のダイナミックな動き」に同じものを見ているだろう。

プーチンは戦略的対決で勝利するため「平和時に危機と紛争を利用する」と明言している。

従来の認識では平和→危機→紛争は段階的に発展していくものだが、現在では各段階の境界が曖昧で良くわからないうちに進んでいく。

ルッテ事務総長もNATOが置かれた状態について「戦争状態ではないものの平和状態でもない」と述べたことがある”

非常に乱暴な言い方をすれば「民主主義国家を守る」「ロシア系住民を保護する」といった名分を「正義」と称しているが、これは戦略的対決の口実や火種を正当化するための政治的レトリックでしかなく、これをもっともらしく見せ「敵の正義」を毀損させるのが情報空間の戦いとなり、

NATO最大の弱点は「加盟間で状況認識が共有できないと集団行動が機能しない」

「最大の潜在的脅威=ロシアへの危機感が東欧と西欧でギャップがある」

「加盟国の数だけ異なる正義や政治的レトリックがある」という点だ。

出典:pixabay

逆にロシアは統計上の数値がNATOよりも劣っていても、掲げる正義や政治的レトリックが1つしかないため体制がシンプルで、NATO加盟国を分断して幾つかグループ(米国と欧州や西欧と東欧など)に分けてしまえば軍事的にも有利になり、

この境界線や範囲が曖昧な攻撃=ハイブリッド戦は2ヶ国間の安全保障協定にも有効だろう。

因みにゴフス氏は「必要な防衛能力を迅速かつ最規模に生産するための投資は恐ろしいほど不足している。

ロシアの経済規模はNATOの約5%に過ぎないが、

32ヶ国が1年間で生産する特定の軍需品を3ヶ月で生産しており、本当に何かが間違っている」

「これほど防衛産業の重要性が高まったのは久々のことで米国は投資を増やす必要がある」と、

WAR Zoneも「NATOと米国の関係が冷え込んでいる現状でアプローチの変更は困難になるかもしれないが、いずれにせよウクライナ問題はNATOとそれを取り巻く戦略的思考と産業基盤にとってストレステストの役割を果たしている」と指摘した。

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※アイキャッチ画像の出典:NATO

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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 71 』