都合の良い健忘症。アメリカ流恫喝外交。

都合の良い健忘症。アメリカ流恫喝外交。
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/36282259.html

『20252月28

先日、ゼレンスキー大統領を「独裁者」呼ばわりしたトランプ大統領ですが、「私が、そんな事を言ったなんて信じられない」とか言っているようです。これが、中国とは一味違う、アメリカの恫喝外交ですね。トランプ大統領が、ありもしない数字を持ち出して、適当な強弁をする時がありますが、あれ、バカだからやっているというよりは、どう思われようと予定した結果をディールで出す為のテクニックです。相手を怒らせるというのも、ディールの時には良く使われます。冷静な判断を、できなくする為です。特に、トランプ大統領の場合、相手の生殺与奪を握っている時には、こういう手を多用します。絶対的に自分の優位が揺るがない確証があるからです。そして、最大限の譲歩を引き出す。

ゼレンスキー大統領に暴言を吐いて、ウクライナの鉱物資源の協定にサインさせる圧力をかける、ちょっと前に、等しくロシアのプーチン氏に対しても、やはり恫喝をかけています。「すぐに、このバカげた戦争を止めろ。でないと、ロシアがアメリカに輸出している全てのものに高い関税をかけるぞ」と、関税を武器にして、さらなる経済制裁をチラつかせています。エネルギー施設が、ウクライナからのドローン空爆で、次々と破壊されている中で、これは普段とは言葉の威力が違います。つまり、トランプ大統領は、アメリカの利権を確保しつつ、停戦という公約を実現したいだけです。なので、ここに外交的な取引という政治家が見てしまいがちなフィルターは無いと思います。で、大義が大事なら、ユーラシア大陸の事だから、EUが自分の金で気が済むまでヤレという事ですね。アメリカは、損切りして手を引くという事です。

旧ソ連と共産主義対資本主義で戦っていた時からすると、まったく信じられないような無関心さですが、やはり時代は変ったのです。共産主義国とは言っても、もう経済の仕組みは、こちらがドン引きするくらいの拝金主義になっています。中国なんか、残っているのは体制だけです。しかも、公職が賄賂で売り買いされるぐらい、軍も役所も腐っています。賃金未払で抗議デモをすれば、警察が潰しにきます。労働者の国は、どこに行ったのでしょうか? なので、ここで、思想や大義を持ち出して、交渉で扱う気が、少なくてもトランプ氏には微塵も無いという事です。ディールで結果を出す。それだけが、関心事です。国連なんか、彼からすると金魚のフンみたいなものでしょう。

今のところ、トランプ氏の交渉カードの中で、絶大な影響力を行使しているのが、「関税」です。これを切られると、中国もロシアもEUも困ります。外国との交渉にも使えるのですが、不当な障壁への制裁として関税をかけたという建付けで、トランプ大統領の本来の内政である「アメリカ製造業の復活」という目的にも沿っています。関税で外国の工場で製造した方が安いという環境が崩れると、アメリカ国内へ投資が逆流してきて、雇用も生まれるからです。それを、外国の責任にして、「やむを得ず関税を上げた」アピールで、国内世論を抑え込む気です。一時的にインフレになるので、罪を押し付ける相手が必要なのですよね。

とにかく、トランプ大統領的には、歩行が困難になる程に足腰が弱っているのに、化粧と衣服に金をかけて、見た目だけで商売するアメリカの国内産業をリハビリしたいと思っています。そこに、アメリカの貧困問題の本質があり、製造業を建て直さないと、やがて衰弱死すると思っているようです。アメリカの優良企業の株価を指数化したナスダックやニューヨーク・ダウは好況ですが、アメリカの鉄道やトラックの物流から見る資材の移動を観測すると、右肩下がりでアメリカの製造業が衰退しているのが判ります。つまり、アメリカ全体は経済が借金頼みの砂の城になりつつあります。国も企業も個人も、過去に類をみない莫大な借金を抱えて、既に滞納率も過去最高になっています。その中で貧富の差が広がり、持てる者と持てない者の分断が先鋭化しています。

ただ、このスタンド・プレイを笑顔で歓迎している国ばかりではなく、未来に禍根を残しながらの外交になります。私は、そう遠く無い将来、手痛いしっぺ返しを食らうと予想しています。』