米国を信頼できるか、米国製兵器が選択肢のデフォルトでなくなる可能性
https://grandfleet.info/us-related/can-we-trust-the-us-could-us-made-weapons-no-longer-be-the-default-option/
『2025.02.28
独首相候補のメルツ氏は「(安全保障分野で)米国からの独立を達成することが優先事項になる」と述べ、Breaking Defenseも27日「ドイツと締結済みの契約は維持されるかもしれないが、米国製システムは選択肢のデフォルトではなくなるだろう」と指摘し、米国は海外市場における特別感を失うかもしれない。
参考:US defense industry could struggle to sell to new German government: Analysts
参考:Emmanuel Macron exhorte l’Europe à refuser la “vassalisation heureuse” vis-à-vis des États-Unis
参考:Mind the gaps: Europe’s to-do list for defense without the US
米国製システムが海外市場で「特別な地位」を築いてきたのは「米国との関係・連携強化が安全保障に役立つという期待感」があったから
Lockheed MartinはRheinmetallと共同で「HIMARSベースのGMARS」をドイツ陸軍に提案していたが、議会は「弾薬統合の自由が確保されたEuroPULS」を選択し、Lockheed Martinはロケット弾の供給地位を失うことを恐れ「PULSを選択すれば備蓄分のGMLRS(推定数千発)を使用出来なくなる」「これに引き続きアクセスするにはGMARS以外の選択肢はない」と警告したものの、弾薬統合の自由を優先するドイツの決意に変化はなく、米国側は「この選択は米国依存からの脱却、武器供給元の多重化を推し進めたい欧州諸国にとっての試金石になるだろう」と警戒感を示していた。
出典:Cpl Jamie Peters RLC/OGL v1.0
さらに総選挙で勝利したキリスト教民主・社会同盟の党首=首相候補のメルツ氏も「段階的に米国からの独立を達成することがウクライナ支援に次ぐ優先事項になる」と述べ、この発言は一般的に「安全保障分野で米国依存を止める」と受け止められており、Breaking Defenseも27日「メルツ氏はトランプ政権のAmerica firstを批判し『米国が信頼できる同盟国でなくなる最悪のシナリオに備えなければならない』と述べ、政権樹立前に関わらず社会民主党と協力して最大2,000億ユーロの特別防衛費を承認する予定だ」「ドイツと締結済みの契約は維持されるかもしれないが、米国製システムは選択肢のデフォルトではなくなるだろう」と指摘。
“米国とドイツの間には利益率の高いF-35A、P-8A、CH-47F、パトリオットシステムの契約が残っており、Teal Groupは主要契約のキャンセルリスクを評価した結果「米国はF-35A運用国から送信された全データにアクセスできるため、他の兵器システムよりも『米国との継続的な関係性』や『運用国に対する信頼性』を真剣に考慮しなければならない取引だ」「この契約に対する新政権のコミットメントが重要になる」と、AeroDynamicも「最も生き残る確立の高い契約は輸出先で自己完結可能なもので、F-35Aは米国側の継続的なアップグレードと部品供給に対する依存が大きい」と指摘した”
出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Jana Somero
Center for a New American Securityは「他に選択肢がないためF-35Aの契約にリスクはない」と主張したが、Lockheed Martinは「政府間契約によるF-35A調達の疑問はドイツ政府が対処すべきだ」と述べており、どの立場の視点でも「メルツ政権の方針が米国製システムへの輸出リスクになる」と認識している点が興味深く、P-8A、CH-47F、パトリオットシステムについても「当面は代替品がないので契約が維持される」との見方を示したものの、同時に「もはや米国製システムは選択肢のデフォルトではなくなる」「欧州の安全保障で果たすドイツの役割が増大すればするほど米国製システムは好まれなくなる」と懸念している。
Breaking Defenseも「米国製システムは欧州に対して短期的~中期的に優位性を維持できるが、欧州はミサイル、ドローン、統合防空システムなどの主要計画に対する資金供給の規制を緩和(これまで規制されていた民間銀行による防衛プロジェクトへの融資など)するつもりで、欧州が防衛産業の構造問題を克服すれば長期的に競合することになるだろう。米国製システムは高性能でも高価になりやすく、必ずしも米国のアプローチが物事に対する唯一の答えではない」と述べ、今直ぐにではないとしても「欧州諸国が米国製システムと距離を置くようになる」と予想している。
出典:Donald J. Trump
どれだけ米国製システムが競合より高価でも、どれだけ納期が遅れても、どれだけ技術移転を含むオフセット内容が厳しくしても、海外市場で「特別な地位」を築いてきたのは「武器購入を通じた米国との関係・連携強化が安全保障に役立つという期待感」があったからで、その期待感がAmerica firstを優先するトランプ政権によって揺らいでおり、これを「欧州だけの特殊なケース」と思っていたら何れ酷い目に会うだろう。
追記:フランスのマクロン大統領は「欧州人は米国人を手厚く遇するべきだ、何れ直面した問題は過ぎ去る、現在は我慢の時だと考えている人々が多いが『服従』は答えではない」「幸福な従属化を拒否すべきだ」と主張し「欧州は今まで以上に団結して強くなるべきだ」「防衛、産業、技術問題で重要な決断を下さなければならない」と呼びかけた。
出典:U.S. Air Force photo by 2nd Lt. Mark Goss
追記:Defense Newsは欧州が米国抜きでロシアとの戦争を抑制したり、ロシアとの通常戦争で勝利するのに必要な9つの能力について複数のシンクタンクやアナリスト17人の評価を引用し「指揮統制能力、長距離攻撃能力、敵防空網制圧能力、航空ベースのISR能力、通信衛星、空中給油は3年~5年以内、宇宙ベースのISR能力と空中監視は最大10年以内で自立できると、戦略・戦術輸送能力については現在でも十分な能力がある」と評価し、このスケージュール枠で資金供給さえ滞らなければ欧州は5年以内に防衛に必要な能力の大半を構築できると報じている。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Spencer Slocum
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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 66 』