トランプを操る女性の存在が…!

トランプを操る女性の存在が…!
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『2024.11.15

トランプを操る女性の存在が…!「SNS人事」のウラでポンペオ元国務長官の追放を主導した「猛獣使い」の正体と、アメリカ中枢ではじまる「復讐の嵐」

岩田 太郎

言葉を操る「プロパガンダシステム」の真相

これまで直情的だったトランプ話法が、陰湿で意地悪になってきたことにお気づきだろうか。

前編『トランプが政権人事で「共和党エリート」たちを次々と粛清…!「ほめ殺し」の末に追放されたポンペオ元国務長官の「悲惨な末路」』で紹介したように、かつての同僚で袂を分かったポンペオ氏への「ほめ殺し」はかなり狡猾で陰湿だった。

スージー・ワイルズ氏(左)は、トランプ氏の選挙戦を支えた「最強の政治コンサルタント」 Photo/gettyimages

それは、共和党の反トランプ派追放劇のはじまりであり、その裏には狡猾な「プロパガンダ・システム」が潜んでいる。さらに、来年からアメリカの中枢を支える「トランプ人事」からは、トランプの野心が丸見えなのである。

トランプが第2次政権でやろうとしていることを、さらに分析していこう。』

『トランプ次期大統領が従来のスタイルとは異なる「京ことば」を使うようになったことは、陣営・政権内部の規律強化を示唆するもので、内部崩壊でガタガタであった第1次政権からの反省である可能性がある。

なお、「京ことば」とは、「ええ時計してはりますなあ」は、相手の時計を褒めることで「時間見よし、早よお帰りやす」というような、やや陰湿な言いまわしのことを指す。断っておくが京都市出身の私にとって、近隣の大阪人や奈良人の忌まわしいプロパガンダでしかないのだが。

話をもとに戻すと、具体的には、今回の選挙運動を統括し、新たに次期首席大統領補佐官に指名された「最強の政治コンサルタント」ことスージー・ワイルズ氏が、トランプ氏の大統領らしくない部分を抑制する役割が上手く機能している可能性がある。

たとえば、トランプ候補が7月31日にシカゴで開催された全米黒人ジャーナリスト協会(NABJ)の年次大会の質疑応答で、「ライバルのハリス候補はずっとインド人だったのに、急に黒人に変身した。誰か調査すべきだ」「彼女は黒人と見られたいようだ」などと問題視されることが確実な発言をした際に、それ以上ダメージが拡がらないよう予定時間を早めて切り上げさせたのは、ワイルズ氏その人であった。

また、発言を未然に止めさせることはできなかったものの、9月10日の大統領候補討論会でトランプ氏が「オハイオ州スプリングフィールドのハイチ人不法移民が犬や猫を捕まえて食べている」とデマを話した際に、スタジオにいたワイルズ氏はトランプ氏を鋭く睨みつけていたのだという。その後トランプ氏は、この話をあまりしなくなくなった。

トランプ次期大統領は基本的にワンマンの暴れん坊なのだが、ワイルズ氏による「猛獣使いのスージー効果」はすでに現れていると見るべきであり、戻って来た「トランプのSNS政治」は、その文脈において裏の裏まで読む必要がありそうだ。』

『その一端が垣間見えるのが、大統領選の対抗馬であったカマラ・ハリス候補が8月22日の民主党全国大会で受諾演説をした際に、トランプ候補以下陣営のトップが集まって分析を行い、トランプ氏が次々とトゥルースソーシャルでSNS発信をする場面の動画だ。この動画は公開されているのでぜひご覧いただきたい。

トランプ氏は狡猾な情報戦で大統領となった Photo/gettyimages

大きな会議テーブルを囲んでトランプ氏やワイルズ氏、政策を担当する大統領次席補佐官に指名されたスティーブン・ミラー氏、上級政治顧問のジェイソン・ミラー氏、国家情報長官に指名された民主党からの転向組であるトゥルシ・ギャバード元下院議員などが大型画面を見て意見を交わしながら、トランプ氏自身が発信したい内容を語る。

その内容を、「人間プリンター」の異名をもつ秘書のナタリー・ハープ氏が目にもとまらぬ驚異の速さでディクテーション、すなわち書き起こしを行い、さらにトランプ氏のトレードマークである「強調したい部分の全大文字打ち」も指示されることなく、まるで彼の心の中を読むようにこなしてしまう。

ハリス氏の演説中に、ほぼリアルタイムでトランプ氏の分析や反論がSNS上に流れたのは、このような仕組みが確立していたからだ。そして、トランプ氏の口述に関して、表現を弱めたり改善する点がある場合は、ワイルズ氏などが意見していたと思われる。

このような「トランプ京ことばシステム」が機能したのが、ヘイリー氏とポンペオ氏を第2次政権で起用しないと宣言した発信であったと見られる。直情的な発言が、有能な部下によって遠回しな形に修正された可能性は大きいのではないだろうか。』

『「ノーベル平和賞」という復讐

トランプ次期大統領は、平和と繁栄をもたらした大統領として後世に記憶されたいと伝えられる。ノーベル平和賞が欲しいのである。それが、彼を「ヒトラーのような独裁者」「権威主義者」と中傷する勢力に対する最大の復讐になる。

だから、次期政権の指針策定の基本となるのは、「トランプ氏のレガシーづくり」だ。この点において、反戦の先頭に立っていたはずのハリス候補に代表される民主党主流派が、共和党のリズ・チェイニー前下院議員など軍需産業やネオコンと強い結びつきを深めたことは、追い風になろう。

過去の「反戦の左翼」は今や一部の進歩派を除いて「戦争好きの左翼」となり、トランプ次期大統領など「平和の右翼」から批判される対象になったからである。

また、素人集団でネオコンやグローバリスト人材に依存せざるを得なかった第1次トランプ政権と違い、第2次政権の人間はレガシーづくりの重要性と、トランプ氏の目指すアメリカ・ファーストの本義をよく理解している。

JDバンス次期副大統領や、国務長官として入閣するマルコ・ルビオ上院議員、行政の効率化と歳出削減を図る新組織「政府効率化省」トップに起用される実業家のビベク・ラマスワミ氏、エネルギー政策担当者への指名が確実視されるノースダコタ州知事のダグ・バーガム氏など、彼らの多くは常識もそれなりに兼ね備えている。

そこに「政府効率化省」のもうひとりのトップとなる破天荒な大富豪のイーロン・マスク氏が加わって、政治をあらぬ方向に引っ掻き回す可能性もあるが、共和党が大統領と上下両院を押さえたため、大まかな方向性としては第1次政権よりも効率的な政権運営になると思われる。

ラトガース大学で人類学の教鞭を執るアレクサンダー・ヒントン教授は、「トランプ氏がホワイトハウスを去ればMAGA運動も廃れる」と予想するが、民意により政治意思決定で大きな権力を与えられた政治的な流れは、より永続的で根深いものになるのではないだろうか。』

『日本に「猛獣使い」はいるか?

そのようなトランプ政権に対峙する日本には、もう「猛獣使い」の安倍晋三元首相はいない。しかし、対応の指針としてリベラル系政治メディアのパンチボウル・ニュースが示す原則は、参考になろう。

この政権と日本政府は渡り合えるだろうか…Photo/gettyimages

そのルールとは、「次期政権内部の幹部の言葉でさえあてにならない」ということだ。なぜなら、トランプ次期大統領の言葉がすべてであるからだ。SNS政治が復活した以上、米国内と世界中で「トランプのSNS発信に注意を払え」が合言葉になろう。

さらに連載記事『EVがいつのまにか「上級国民」の乗りものになっていた…!フォード会長が「政争の具に堕ちた」と嘆くウラで、ついに判明した「アメリカ人がEV嫌いになった決定的なワケ」』でも今のアメリカの現状をお伝えしているので、ぜひ参考としてほしい。 』