長い寒波 なぜ立て続けに?【専門家に聞く】
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250221/k10014729401000.html


『2025年2月21日 21時07分
今月17日ごろから続く今回の寒波は3連休まで影響が続くと予想されています。
そもそも寒波とは「寒気が南下し、2~3日またはそれ以上、著しく気温の低い状態をもたらす現象」を指します。
1週間も続く寒波が今月は上旬にも。
寒波が立て続けに影響を及ぼした背景について、気象庁異常気象情報センターの田中昌太郎所長に聞きました。
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Q 強い寒気の流れ込みが続いていますが、寒気はどこからやってくるのでしょうか?
これは北極が真ん中にあり、上から見た天気図です。日本付近をみると青色が広く覆っております。
これは「極渦」=非常に冷たい空気のかたまりです。ふだん「極渦」は北極の上空にありますが2月上旬の寒波では、ロシア付近とアラスカ付近の上空の高気圧が北極へ広がったため極渦が2つに“分裂”しました。
そのうちのひとつが日本付近まで大幅に南下し、強い寒気の流れ込みになったのです。
Q 極渦の分裂は珍しいことなのですか?
分裂自体は珍しいことではありません。極渦の変動というのは、日本の冬の天候に影響を及ぼしているのです。
しかし、長い寒波が同じ月に2回という点は珍しいことなのかなと思います。
今月上旬と現在の寒波では、極渦の分裂だけではなく、偏西風が南に大きく蛇行したことも挙げられます。
Q「偏西風が南に大きく蛇行」というのはどういうことですか?
そもそも、偏西風は地球の周りを西から東に向かって蛇行しながら吹く風のことです。
偏西風が南に蛇行した分、北から寒気が入りやすくなるのです。
特に今月上旬の寒波では南への蛇行が大きく、日本列島の広い範囲まで寒気が入り込んで、九州や四国などふだん雪の少ない地域での積雪につながったとしています。
Q 蛇行の背景にはどのようなことがあるのでしょうか?
日本から遠く離れた熱帯付近の気象が影響しているとみています。
今シーズンは、南米沖の太平洋の海面水温が低くなる「ラニーニャ」現象に近い状況が起きています。
具体的にみると、南米沖では雲の発生が少なくなっている一方、フィリピンやインドネシアなどでは雲の発生が活発になっています。こうした気象が関連していると分析しています。
「極渦」の“分裂”と、偏西風が南に大きく蛇行していることが重なって、日本付近に寒気が流れ込みやすくなったのです。
Q 今月上旬と現在の寒波は1週間程度と長く続いています。なぜでしょうか?
日本に深く入り込んだ極渦は、数千キロにも及ぶ大きさです。
また、偏西風の大きな蛇行というような大気の大きな流れは変動がゆるやかです。なので、寒気がしばらく続くことになるのです。
Q これはいわゆる「異常気象」にあたるのでしょうか?地球温暖化との影響はあるのでしょうか?
今回の強い寒気をもたらした要因については現在、分析を進めています。
長期的にみると冬の気温は温暖化の影響などで上昇していますが、温暖化に関わらず、大気や海洋の変動に伴って今回のように強い寒気が流れ込むことはあります。
「温暖化しているから暖かくなる」わけではなく、大気や海洋の変動で寒気が入り冷え込むこともあります。ですので、今回の寒波が温暖化によるものかどうかすぐに評価することは難しいです。
気象庁では、来月、「異常気象分析検討会」を開き、専門家とともに寒波の要因を詳しく探ることにしています。
気象庁異常気象情報センター 田中昌太郎所長
Q 今回の現象、気象庁としては予測が難しいのでしょうか?
今回の寒波、2月上旬の寒波もだいたい2週間くらい前になるとその傾向を捉えることはできていたのかなと思いますが、それより前からはなかなか現在の技術で予測するのは難しい場合が多いです。
Q 2度の寒波の影響で各地で積雪が増え、暮らしにも影響が出ています。この先も寒波は来るのでしょうか?
現在の寒波は今月24日ごろまでで、北日本から西日本の日本海側を中心に大雪になるところがある見込みです。
まずは交通への影響や雪崩などに注意してください。
その後、3月初めにかけて気温は上がり、そのあとは気温が少し下がる見通しです。
春にかけて気温の変化が大きくなる見込みなので、体調管理に注意してください。』