露の心理戦 米は脆弱…防衛省防衛研究所主任研究官 長谷川雄之氏
https://www.yomiuri.co.jp/world/20250219-OYT1T50010/
『2025/02/19 05:00
ウクライナ情勢
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ロシアのウクライナ侵略を巡り、米露が停戦交渉に向けた協議を進めているのは、トランプ米大統領とプーチン露大統領の利害が一致しているからだ。互いに、国内に向けて自身が強い指導者だとアピールする思惑がある。現状は、米露首脳会談の実現自体が目的化し、停戦交渉の枠組みなどは詰まっていないように映る。
トランプ氏が、侵略を領土の線引きを巡る問題としか見ていない場合、停戦交渉はいずれ行き詰まるだろう。ロシアはウクライナの領土の獲得だけでなく、北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念させることなど、主権の制限までもくろんでおり、ウクライナとしては受け入れがたいためだ。
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ロシア寄りの姿勢を隠さないトランプ氏への失望から、ウクライナでは対米不信が高まっている。ロシアは米国に対する反感をあおり、ロシアとの対話に積極的なウクライナ国内の勢力の再構築や拡大を図るだろう。トランプ政権は、プーチン氏が仕掛ける心理戦を前に非常に 脆弱ぜいじゃく に見える。
膠着こうちゃく 状態が続く戦況だが、仮に停戦に向けためどが立てば、ロシアは一気に攻勢をかけて領土占領の既成事実化を進める可能性がある。
一方、停戦の見通しが立たない場合、ロシアは市民社会に影響の大きいインフラ(社会基盤)施設へのミサイル攻撃などを継続するのではないか。「ロシアを敵に回すとひどい目に遭う」という意識をウクライナに植え付け、戦意を喪失させようという狙いだ。(聞き手・国際部 宮嶋範)』