「AIアクション・サミット」でJDヴァンス副大統領が演説
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和七年(2025年)2月20日(木曜日)
通巻第8660号 <前日発行>
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「AIは、地政学的な武器である。新技術が「間違った手に渡れば危険だ」
しかし「正しい手に渡れば自由と繁栄のための素晴らしいツールとなる」
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パリで開催された「AIアクション・サミット」でJDヴァンス副大統領が演説している。開発速度、規制緩和、世界的な技術的優位性への挑戦が強調されている。
冒頭でヴァンスは「人工知能 (AI) は理論上の概念でも、未来的概念でもなく、世界の権力構造、経済的優位性、社会変革を形づくる決定的な要因である」と定義し。「米国は安全保障の観点から戦略中軸として AI を採用する」と唱えた。
「もはやAIは、地政学的な武器である。新技術が間違った手に渡れば危険だが、正しい手に渡れば自由と繁栄のための素晴らしいツールとなる、米国はAIのリーダーシップを目指しているのではなく、完全な支配を目指し、ワシントンをAI能力の世界的なゲートキーパーとして位置付けようとしている」。
トランプ大統領が唱える「世界一」は三つ。
世界一の軍事力、世界一のAI大国。そして世界一のビットコイン大国だ。これらの目標の裏には中国を世界一にはしないという決意である。中国の脅威が動機なのである。
ヴァンス副大統領は大学卒業後、シリコンバレーとベンチャーキャピタルで経験を積んでおり、AI政策には一家言がある。
したがって「AIビジョン」にはテクノロジー業界全体が感知する緊急性が背景にあり、中国の開発速度を安全保障上の脅威と受け止めている。
「中国のEVの台頭から得られる教訓は明らかだ」としてヴァンスは続けた。
「AI開発への過度な規制は、変革そのものを潰してしまう可能性がある。成長を促すAI政策を奨励する」
欧州がすすめるAI規制に反対の立場を表明したのだ。
JDヴァンス副大統領は続けた。
「中国のAI優先政策は、単なる競争ではない。政府資金、人材の適切な供給と配置、産業能力向上支援、ネットワークを活用して支配する。電気自動車(EV)部門がその好例である。中国はわずか10年余りで後進国から世界最大のEV生産国となり、2024年までに世界のEV販売の76%とバッテリーサプライチェーンの 80%を支配するまでになった。北京が産業に狙いを定めると、競争のルールが書き換えられる」。
ヴァンス演説では、 EU型の予防的ガバナンスを拒否し、煩わしい規制は米国の優位性に対する直接的な脅威であると主張した。
欧州の姿勢とまったく逆なのである。
トランプ政権は、EUのデジタルサービス法やコンプライアンス措置に反対し、外国政府に対し「自国が同様の規則を課すのは大きな間違いだ」と警告した。ネット上の検閲をおこなう全体主義のやりかたを批判したミュンヘン安保差ミットの演説とおなじ基調である。
ヴァンスは、AIを「表現の自由の戦場」と位置づけて、中国の検閲主導のモデルを直接批判した。間接的にディープシークを批判したことになる。
「AIはイデオロギー的偏見から自由でなければならない。国民の言論の自由の権利を制限してはならない。非歴史的な社会議題を推進するシステムをブロックする。監視とプロパガンダのためにAIを武器にする権威主義体制に対抗する。彼らと提携することは、国家を権威主義的な支配者に縛り付けることを意味する」とも警告した。
さらにヴァンスはAIの将来を産業能力と結び付け、西側諸国の産業空洞化を批判し、強固なインフラの必要性を強調した。
「AIの将来は、信頼性の高い発電所からチップ製造施設まで構築することで勝ち取られる。世界がAIを支えるエネルギーインフラを構築しない限り、AIは普及できない。米国のAIリーダーシップを維持するため、エネルギー安全保障と半導体の独立性を優先する」
ヴァンスは同盟国に対し、中国の補助金を受けた代替品ではなく、米国の基準に合わせるよう求めて演説をこう結んだ。
「AIが権威主義的な支配の道具ではなく、経済成長、安全保障、表現の自由の原動力であり続けるよう、民主主義の価値を強化する信頼できるAI同盟を築くことに尽力している」。
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