[社説]米国はロシアに譲歩を迫れ

[社説]米国はロシアに譲歩を迫れ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK0814V0Y5A200C2000000/

『2025年2月10日 19:00

2024年9月、米ニューヨークで会談したウクライナのゼレンスキー大統領㊧とトランプ氏=AP

ロシアのウクライナ侵略を終わらせるための協議が両国と米国との間で動き出す。米国のトランプ新大統領はロシアに最大限の圧力をかけて譲歩を迫り、早期の停戦と和平を実現してほしい。

ウクライナ情勢は、和平の仲介に意欲的なトランプ氏の登場で変わった。近くウクライナのゼレンスキー大統領と協議する見通しで、プーチン・ロシア大統領とはすでに電話で話したという。

焦点は戦場で優位に立つロシアを停戦させられるかどうかだ。ロシアが求めるウクライナの中立化の問題で譲歩を引き出し、大半を占領する東・南部4州をロシア領と認めるという要求も突き返さなければならない。

ウクライナの領土に侵略して国際法を犯し、世界の秩序を揺るがしたのはロシアだ。トランプ氏は巨額のウクライナ支援の削減を急ぐあまり、将来に禍根を残すような拙速な取引をすることは避けなければならない。

きわめて難しい交渉を強いられるが、トランプ氏はウクライナが全占領地をロシアから取り戻して公正な和平を達成できるよう解決策を探ってほしい。

ロシアを譲歩させるには、資金源である石油や天然ガスの輸出に対する制裁を大幅に強化する姿勢を打ち出していくべきだ。

さらに液化天然ガス(LNG)の輸出拡大を急ぐ米国がロシアの輸出先を奪う戦略を明確にできれば、長引く戦争で疲弊しているロシア経済への脅威になる。

トランプ陣営はまず停戦の実現後、ウクライナとロシアが本格的な和平交渉を始めることも検討しているようだ。その場合もウクライナの安全を守る強固な国際的枠組みの構築で、ロシアと欧州諸国から同意を引き出す必要がある。

中国やブラジル、インド、トルコなど有力な新興国がロシアに終戦の働きかけを強めることも欠かせない。日本も米欧などと協力して外交努力を尽くし、ウクライナ復興も視野に可能な限り支援策を検討してもらいたい。』