ベトナム、共産党・政府再編で5省庁削減 「財政省」消滅
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『2025年1月8日 5:00 [会員限定記事]
財政省は計画投資省と統合する計画だ(ハノイ)
【ハノイ=新田祐司】ベトナムが大規模な行政組織の再編を計画している。財政省と計画投資省を統合するなど5省庁を減らす。共産党の委員会も削減する。重複機能の解消や公務員らの削減を目指す。行政組織を効率化し、経済成長の維持を狙う。
「過去最大となる10万人の公務員に影響があるだろう」。グエン・ホア・ビン副首相は昨年12月21日、組織改革を統括する内務省の会議でこう発言した。「国家機関は怠惰な人間の避難所ではない。才能のない人間が残らないよう注意が必要だ」とも指摘した。
最高指導者のトー・ラム共産党書記長は組織再編について、2025年2月末に必要な国会決議を得るよう指示した。省庁などの統廃合を3月15日までに完了させる目標だ。
組織再編は党、政府、国会、地方省を巻き込み、近年にない大がかりな改革になる。
政府は、現在の省庁数の約2割にあたる5つの省庁を削減する。海外からの投資などを管理する計画投資省と財政省を統合し「経済開発省」あるいは「財政投資開発省」へ改称する。交通運輸省と建設省も統合する。
労働・戦傷病兵・社会省は職業教育の機能を教育訓練省に移管した上で、内務省に吸収させる。一連の省庁再編とその後の合理化により、傘下の部局などは15〜20%減る見通しだ。
共産党も、政策立案などで中心的な役割を果たす委員会を再編する。政治活動などへの国民の動員を担当する中央大衆動員委員会と、プロパガンダや教育などを担当する中央宣教委員会が統合する見込みだ
共産党や政府をまたぐ再編案もある。外交関連では共産党の中央対外委員会と国会の外交委員会を、政府の外務省に統合する。中央に合わせ、首都ハノイや最大都市ホーチミンなど63省市も組織改革を迫られる。
統廃合の波は国営企業にも及ぶ。大手国営19社の管理を一括して担ってきた企業国家資本管理委員会が消滅する。管理対象だった石油最大手のペトロベトナムやベトナム電力公社、ベトナム航空はそれぞれの管轄省の下で成長を探る。
メディア業界では、国会テレビ局やニャンザンテレビ局など複数の国営テレビ局が解体となり、最大手のベトナムテレビ局(VTV)に機能移管する見通しだ。テレビ局も含むメディア業界だけで、数千人の失職者が発生する可能性がある。
ベトナムでは役所の汚職横行や能力不足が指摘されてきた。根底には公務員の安月給があるといわれる。リー・クアンユー公共政策大学院(シンガポール)で政治学に詳しいビック・チャン博士研究員は「人員削減すれば、残った公務員の給与を増やせる」と話す。
ラム氏は行政組織の非効率や無駄を繰り返し嘆いてきた。資金や時間の無駄遣いを「浪費」と糾弾し、「浪費は汚職より悪い」とも言い切った。大胆な組織再編はラム氏発言の具現化と言える。フルブライト大学ベトナムのグエン・タイン・チュン客員講師は「ラム氏には公安省の組織を合理化した先行事例もある」という。
ベトナムの24年の実質国内総生産(GDP)成長率は前年比7.09%と高いが、45年の高所得国入りの目標達成には高成長を維持する必要がある。成長失敗は共産党支配の根幹を揺るがす。大なたを振るう背景には、こうした危機感があるとみられる。
行政組織の効率化は海外投資家の要望でもあった。縦割り意識の強い省庁間の調整や複雑な承認手続きに時間を取られ、投資案件が頓挫したり、見直しを迫られたりしてきたからだ。例えば、財政省と計画投資省の統合では、円借款の手続き円滑化が期待できる。
一方、組織再編は準備や調整が間に合わず遅れるとの見方も多い。「当面は手続きが混乱し、停滞につながるだけではないか」(日系企業)との声も上がる。成長に向け、投資環境を改善できるか。行政改革はラム氏の指導力を証明する試金石になる。』