トゥーキュディデースの罠 を避けようとして「マクナマラの罠」に嵌まったら、いかん。
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『Francis P. Sempa 記者による2025-1-3記事「Avoiding the McNamara Trap With China」。
トゥーキュディデースの罠 を避けようとして「マクナマラの罠」に嵌まったら、いかん。中共はこのままでは2030年に米国との「核パリティ」を達成してしまう。
マクナマラはMAD(相互確証破壊)の信奉者であった。この信者たちは、「核戦争を戦い、勝つ」ことを最初から諦める。核戦争に勝者は無いと前提し、だったら、「安定」「共存」がいちばんだいじだよね、と結論する。
具体的には、米軍は、報復力たる「第二撃」用の戦略核兵器(SLBMとB-52)を温存できるならば、ソ連からの第一撃を抑止できるので、核軍備はもうそれで十分じゃないか、と考えた。
キューバ危機の当事者であったマクナマラは、その直後に米国の核戦略(=大量報復戦略)を根底から見直す気になった。核にかんする「非戦」を重視するあまり、米国民はソ連からの第二撃を甘受すべきだという奇矯なロジックに嵌まった。
MADはセオリーではなくドグマであった、と、ルトワックは評する。
アイゼンハワーまでは、大量核報復こそが、ソ連からの核攻撃を抑止するという考え。
マクナマラはそれを変えたのだ。
MADが機能するためには、ソ連もそれを心から信奉する必要があった。しかしソ連はMADなんてものにつきあう気はなかったのである。
ソ連は守る立場ではなかった。世界への影響力をどんどん拡張するつもりだった。
カーター政権時代にセクデフを務めたハロルド・ブラウンがわかりやすく総括している。
「われわれが核兵器を造れば、ソ連も造る。われわれが核兵器を造るのを止める。ソ連は造る」。ブラウンはマクナマラの元部下だった。
1969にルトワックは書いた。ソ連はとうとう米国との核パリティを達成した。そして彼らはひきつづき、より多数の、そしてより大型の戦略核ミサイルを造り続けている、と。
大型のICBMから、多数のRVが精密に米国内のサイロを狙えるようになるにつれて、ソ連は「第一撃」を敢行しても米国に勝利できると確信できる立場に近づく。
1979にキッシンジャーは上院の外交委員会にて、ソ連との核バランス崩壊について、証言している。
いわく。われわれはみずから、明瞭に不利で脆弱な立場に、身を置いたのである。15年にわたり、われわれは一方的に、そうしてきた。1960年代にMADを採用したことにより。また、さらにカーター政権がそれを選んだことによって。
やっとレーガン政権になって、マクナマラの自縄自縛を捨てる方針転換がなされた。
今、米国は1419発の核弾頭をいつでもロシアに向けて発射できる状態。しかしロシアはそれ以上の弾頭を米国に向けて発射できる状態。中共は現状で600発の核弾頭を保有している。しかし米国が「マクナマラの罠」に嵌まれば、2030~2035には、中共単独で米国に並んでしまう。 』