バイデン氏、1500人を減刑 次期政権にらみ「事前恩赦」も
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『2024年12月13日 0:19 (2024年12月13日 6:53更新)
バイデン大統領は約1500人の減刑と恩赦を発表した=ロイター
【ワシントン=芦塚智子】米国のバイデン大統領は12日、約1500人への恩赦と減刑を発表した。ホワイトハウスによると、1日あたりの恩赦・減刑数では過去最多となる。バイデン氏はトランプ次期政権による訴追に備えて元政府高官や議員らの「事前恩赦」も検討していると報じられているが、恩赦の政治利用拡大につながりかねないとの懸念が出ている。
1500人の恩赦・減刑、1日あたりで過去最大
バイデン氏が減刑した約1500人は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的で収監から自宅軟禁となった受刑者。多くが現在の政策や法律であれば「より短い刑期で済んだはずの受刑者だ」と説明した。恩赦は39人で、粗暴犯ではなく更生している人を対象にした。
バイデン氏は声明で「更生と社会復帰を支援し、意味のあるやり直しの機会を与えるために恩赦の申請審査を続ける」と説明し、近くさらなる措置を発表する考えを表明した。
バイデン氏は1日に次男ハンター氏を恩赦し、人権団体などが一般受刑者にも恩赦や減刑を求めていた。
米国の憲法は「大統領は弾劾で有罪の場合を除き、合衆国に対する犯罪への執行猶予や恩赦を与える権限を有する」と定める。「合衆国に対する犯罪」は連邦法違反で、州法違反は恩赦の対象にならない。
大統領の恩赦(clemency)には、罪をほぼ帳消しにして公民権を復活させる「恩赦(pardon)」と、刑を軽くする「減刑(commutation)」などがある。恩赦を希望する人は司法省に申請できる。米メディアによると、大統領は恩赦の政治的影響を避けるために退任直前に多数を恩赦することが多い。
「政治利用」される恩赦、第1次トランプ政権でも
恩赦の本来の目的は、罪を悔い改め更生している人への大統領の「寛大な措置」だ。政権の理念や政策を反映する場合もある。バイデン氏は今回の恩赦について、麻薬取締法違反など非粗暴犯への「刑の格差」を是正する目的があると説明した。黒人は麻薬犯罪で逮捕されたり冤罪(えんざい)になったりする率が白人より高いとされる。
過去にはカーター元大統領がベトナム戦争の徴兵忌避者を一斉恩赦した例がある。
ただ、政治的として批判を受ける恩赦も多い。最も有名なのは、フォード元大統領がウォーターゲート事件で辞任した前任のニクソン氏に恩赦を与えた例だ。ニクソン氏が辞任後に起訴される可能性が高いとみられていたため事前の恩赦に踏み切った。
トランプ氏は第1次政権で退任直前に、首席戦略官を務めたバノン氏ら元側近や、娘婿であるクシュナー氏の父、チャールズ氏らを恩赦した。
コロナ対策のファウチ氏や元軍制服組トップ、「事前恩赦」か
米メディアは、バイデン氏が事前の恩赦を検討している対象として、トランプ氏の連邦議会占拠事件への関与を調査したチェイニー前下院議員(共和党)や大統領首席医療顧問としてコロナ対策などを担ったファウチ氏、米軍のアフガン撤収を指揮したミリー前統合参謀本部議長らを挙げている。いずれもトランプ氏が攻撃している。
セントトーマス大法科大学院のオスラー教授は「合衆国憲法は大統領に非常に広範な恩赦の権限を与えており、まだ起訴されていない罪も対象に含まれる」と事前の恩赦は可能だと指摘する。ニクソン氏の恩赦などを例に挙げた。実行していない将来の犯罪は適用外だという。
ただ、多くの一般の申請者が恩赦を待っている中で、政治家への「事前恩赦」という特別な措置を実行すべきではないと主張する。対象に名前が上がる人物に連邦法違反の証拠はないとして、必要性にも疑問を示す。トランプ氏が次期政権で自身や政権の高官らに事前恩赦を与える道を開くなど「危険な前例になりかねない」と警告する。
バイデン氏によるハンター氏の恩赦は民主党内からも批判があり、AP通信の世論調査によると米国民の支持は22%にとどまっている。さらに政治的な恩赦を実行すれば反発が強まりかねない。
議会には恩赦の政治利用を制限するための改革を求める声も出ている。
さらにオスラー氏は、バイデン氏が恩赦しても、トランプ次期政権が起訴を前提とせずに元高官らを捜査することは可能だとみる。恩赦は州には及ばないため、トランプ派の州検察に州法違反による起訴を指示する可能性も指摘されている。
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