トランプ氏に刺さる話法、ベッセント流「3-3-3」経済論

トランプ氏に刺さる話法、ベッセント流「3-3-3」経済論
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN243V90U4A121C2000000/

 ※ 『「トランプ氏は官僚の作った資料など読まない」。』

 ※ 『「トランプ氏が最も嫌うのは上から目線で教え諭すこと」というのはもはや常識だ。』

 ※ 『トランプ氏に対する忠誠心に加え、複雑な世界を明快にわかりやすく語る話術が政権内で要職を得るには欠かせない。』

 ※ 『できるかできないかはトランプ氏にとって大きな問題ではない。トランプ氏自身の世界観に沿い、トランプ氏にとって得となる筋書きをうまく伝える話法であるかどうかが重要なのだ。』

 ※ まあ、「トランプ王」が在位中は、そういう「忠臣」が「世界を回していく」ことになるんだろう…。

 ※ 「トランプ王とその忠臣たちの物語(ものがたり)」、というわけだ…。

 ※ そして、「王国の周辺国」は、巻き込まれ、どうしたらいいか分からず、右往左往することになるわけだ…。

 ※ しかし、別に、この「王様」だけの話しじゃない…。

 ※ こういう、「世界を3つのことに単純化」しないと「理解できない、しようともしない」王様は、世界のあちこちに「在位なさっている」…。

『すったもんだの末、トランプ次期大統領は財務長官に投資家のスコット・ベッセント氏を起用すると決めた。主要閣僚の顔ぶれが出そろうなか、ベッセント氏が唱える「3-3-3」経済論から、トランプ氏の心に刺さる話法がどんなものかが見えてくる。

「スコットは世界屈指の国際投資家であり、地政学と経済の戦略家として広く尊敬を集めている」。トランプ氏がこう評価するベッセント氏は巨額の献金を続けたほか、脱線しがちな選挙戦で訴えるべき経済データや政策を粘り強く進言し、トランプ氏を支えてきた。
特に、トランプ氏が思い描く「世界」をわかりやすく、簡潔な話法に落とし込んで一般の支持者や市場関係者に語りかける能力を「ウォール街で最も頭が切れる」(トランプ氏)と気に入られている。その代表例が「3-3-3」経済論だ。

米保守系メディアのFOXビジネスによると、ベッセント氏は今夏のイベントで「3-3-3」政策を披露した。①次の大統領選がある2028年までに財政赤字を国内総生産(GDP)比で3%まで削減②規制緩和によってGDP成長率を3%に押し上げ③原油生産を日量で300万バレル増産――を柱とし、トランプ氏に提言した。

現実はどうか。米国の23会計年度(22年10月〜23年9月)の財政赤字はおよそ1兆7000億ドルにのぼり、GDP比で6.3%と前の年度の5.4%から悪化した。7〜9月期のGDP成長率は前期比年率で2.8%だった。米国の足元の原油生産は日量1300万バレルを超えている。

米経済はマクロ経済指標をみればなお堅調を保っているものの、雇用情勢や企業経営者の肌感覚からは「冷え」も伝わる。トランプ政権の関税引き上げ政策は輸入物価の上昇によって高インフレを再燃させる恐れがあり、金融市場の評判は悪い。

「3-3-3」の実現は不可能とはいわないが、簡単でもない。だが、できるかできないかはトランプ氏にとって大きな問題ではない。トランプ氏自身の世界観に沿い、トランプ氏にとって得となる筋書きをうまく伝える話法であるかどうかが重要なのだ。

トランプ氏の「盟友」、起業家イーロン・マスク氏は財務長官人事でベッセント氏を「旧態依然の選択」とこき下ろした。そのマスク氏でさえ、財政赤字抑制と規制緩和による経済成長という「3-3-3」経済論の話法は否定しにくい。

原油増産はトランプ氏が一貫して訴えてきた「米国のエネルギー自立」を後押しし、米市民の不満が鬱積している「高いガソリン価格」の下落を期待させるストーリーだ。トランプ氏が株価の動向に想像以上に気にかけていることも間違いない。

ベッセント氏は英フィナンシャル・タイムズの取材に、関税引き上げ政策は貿易相手国との交渉次第で緩められるとの見方を示した。教条的に関税引き上げを唱えるのではなく、相手国との取引材料ととらえる立場は市場関係者に一定の安心感を与える。

ゲイ(同性愛者)であることを公言しているベッセント氏は夫と2人の子供と故郷サウスカロライナ州で主に暮らす。エール大の学生の頃はジャーナリスト志望で、物事を端的に説明することにたけているといえる。

「トランプ氏は官僚の作った資料など読まない」。トランプ陣営に政策を提言してきた元米政府高官はこう語る。トランプ氏と親密な関係を築いた故安倍晋三首相も、トランプ氏にメリットのあるストーリーを簡潔に伝えることが重要だと認識していた。ベッセント氏の「3-3-3」もアベノミクス「3本の矢」から着想したという。

「トランプ氏が最も嫌うのは上から目線で教え諭すこと」というのはもはや常識だ。トランプ氏に対する忠誠心に加え、複雑な世界を明快にわかりやすく語る話術が政権内で要職を得るには欠かせない。各国首脳がトランプ氏との距離を縮めたいと望むなら、同様の外交術が求められるだろう。

(ワシントン支局長 大越匡洋)

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小野亮
みずほリサーチ&テクノロジーズ 調査部 プリンシパル
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分析・考察 市場は財政タカ派のベッセント氏に安心感を抱いている。ただ同氏が、公約通りの減税を実施し、かつ高関税は交渉のためのブラフで一時的な措置と位置付けるなら、「2028年に財政赤字3%」を達成するには、おそらく歳出を年間1兆ドル以上削減しなければならない。4兆ドル規模のトランプ氏の「聖域」を維持するなら、連邦政府機関の半分ほどを閉鎖する歳出カットに相当。DOGEの非現実性と同じく、そこから透けて見えるのは、ただただ米国の財政が悪化し、仮想通貨マニアが喜ぶ世界である。
2024年11月26日 8:20 (2024年11月26日 8:20更新)
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