米大統領選、迷う東部激戦州 「民主・共和以外」15%

米大統領選、迷う東部激戦州 「民主・共和以外」15%
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN030A90T01C24A0000000/

『2024年10月29日 5:00 (2024年10月29日 7:46更新) [会員限定記事]
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上野泰也さんの投稿
上野泰也

共和党支持の家庭に育ったウォーカーさんだが、大統領選で投票先を迷っていた(9月、米ミシガン州)
11月5日の投開票まで残り1週間となった米大統領選はラストベルト(さびた工業地帯)の争奪戦が激しくなってきた。代表的な東部ペンシルベニア州では投票に必要な有権者登録をした人のうち、民主、共和の二大政党以外を支持する割合が15.9%に上った。態度を決めかねている労働者はなお多く、大接戦になっている。

民主のハリス副大統領は28日、ラストベルトの一つである中西部ミシガン州で選挙集会を開く。共和のトランプ前大統領は29日にペンシルベニアを訪れる予定だ。

両候補とも製造業の復活を訴え、労働者票の取り込もうと最終盤で重点的に回っている。

米リアル・クリア・ポリティクスが集計した世論調査の平均支持率によると、両候補はペンシルベニアとミシガン、中西部ウィスコンシンのラストベルト3州いずれも1ポイント以内の差で競っている。

接戦になっているのは二大政党である民主、共和のいずれかを明確に支持する人が減少傾向にあるためだ。

揺らぐ「青い壁」、民主2.8ポイント減
ペンシルベニア州政府によると、10月21日時点で「支持政党なし」や「第3党を支持」と届け出た有権者は144万人と全体の15.9%を占めた。前回2020年の大統領選に比べて1.4ポイント増えた。

日本とは異なり、米国民は選挙に参加するために有権者として自ら登録する必要がある。その際にペンシルベニアで民主支持と申告した人は20年比2.8ポイント減の43.7%、共和支持は1.4ポイント増の40.4%だった。

ラストベルトの勝敗が一段と見えにくくなった背景にはトランプ氏が制した16年の大統領選以降、労働者票に脚光が集まったことがある。同氏は衰退した製造業の労働者が苦境にあえいでいる状況に目を向け、製造業の復活を呼びかけた。

製造業労働者はラストベルトで影響力を持つ票田だ。就業者に占める割合はミシガンとウィスコンシンはともに18.2%、ペンシルベニアが11.4%と全米平均(9.9%)より高い。

かつて3州は民主支持者が強く、同党のシンボルカラーにちなんで「ブルーウォール(青い壁)」と呼ばれてきた。民主の支持基盤である労働組合が影響力を持ってきたが、トランプ氏が労働者の一部を取り込んだ。

ミシガン第2の都市グランドラピッズに住み建設資材会社で働くマーク・ウォーカーさん(50)は16年と20年、トランプ氏に投票したが、人種差別的で過激な振る舞いをみて今回は迷っている。とはいえ、ハリス氏の経済政策は政府の統制が強いと感じており「信頼できない」という。

トランプ氏、8年前に「成功体験」
トランプ氏は16年の「成功体験」を再現しようと狙う。16年はラストベルト3州すべてを制し、当選した。20年はすべてバイデン氏に奪われて敗北した。今回も労働者票を取り込むため関税の引き上げなど保護主義的な政策を公約に掲げる。

民主は8年前の敗退が苦い教訓として残る。当時の候補だったヒラリー・クリントン氏はラストベルトの民主支持が盤石と考えたといわれる。ウィスコンシンには一度も訪問しなかった。

16年当時を知るハリス氏支持の元政府高官は「労働組合から支持を得ても、末端の労働者がついてこなかったトラウマが残っている」と話す。

ハリス氏は今回、3州を重点的に訪れ、ラストベルト重視を鮮明にする。全米自動車労組(UAW)や全米鉄鋼労働組合(USW)の執行部から支持を取り付けた。組合員が個別にどちらに投票するかは読めない。

ペンシルベニアの製鉄所で働くUSWの男性組合員(21)は「ブルーカラーの味方になってくれる気がする」とトランプ氏支持を明言する。

ラストベルトの勝敗は大統領選の結果を大きく左右する。

大統領選は形式上、選挙人538人を取り合う間接選挙で過半数の270人を獲得すれば当選する。激戦7州の計93人の選挙人のうちラストベルト3州が44人を占める。3州の結果は同じになることが多かった。

他州の情勢を踏まえるとハリス氏は3州すべて勝てば当選確実になる。トランプ氏は3州勝ったうえで南部2州や西部アリゾナ州のうち一つ取れば大統領に返り咲く。

特に選挙人が19人と最も多いペンシルベニアを取れば、大統領当選につながる可能性が最も高いといわれる。

(ワシントン=八十島綾平、長尾里穂)

【連載記事「激戦7州点検」】

㊤米大統領選、激戦州の焦点は ラストベルトは労働者票
㊥米大統領選、激戦州の焦点は 南部は中絶規制に関心
㊦米大統領選、激戦州の焦点は 西部は不法移民
「2つのベルト」イラスト解説 米大統領選、激戦州とは

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説激戦州のうちラストベルト3州の最新情勢をリアルクリアポリティクスで見ると、ペンシルベニア州で0.5%ポイント、ミシガン州で0.1%ポイント、ウィスコンシン州で0.3%、いずれもトランプ候補がリードしている。ただし差は非常に小さく、ハリス候補に関してはミシェル・オバマ元大統領夫人が26日のミシガン州を皮切りに選挙運動に加わった影響は、まだ上記にはほとんど反映されていない。米国の選挙情勢を見ていると、最後に決め手になるのは「足元の経済情勢」か、それとも「民主主義の価値観」かという感を抱く。現実の生活感か、それとも理想論かということ。物価高が続いていることはハリス候補に不利だが、米国人の選択は?
2024年10月29日 7:31
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