米大統領選、混戦のまま投票日へ 激戦7州3ポイント差内
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0336F0T01C24A1000000/
『2024年11月4日 13:43 [会員限定記事]
民主党のハリス副大統領は3日、「戦争を終わらせる」と訴えた=ミシガン州イーストランシング
【イーストランシング(米ミシガン州)=坂口幸裕】米大統領選は混戦のまま5日の投開票日を迎える。民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領は直前まで異例の接戦を繰り広げる。勝敗を決する激戦7州は3ポイント以内の僅差で、両候補は4日夜まで現地で支持を呼びかける。
残る選挙戦が2日間となった3日夜、ハリス氏が訪れたのは中西部ミシガン州イーストランシングだった。22分間の演説で真っ先に触れたのは中東問題だった。「ミシガンに深く誇り高いルーツを持つアラブ系米国人社会の指導者が集まっている」と述べ、アラブ系に支持を呼びかけた。
ハリス氏はイスラエルと親イラン勢力との戦闘が続くパレスチナ自治区ガザとレバノンに触れ「壊滅的だ」と言及。中東問題を発言中は一貫して厳しい表情を崩さず「大統領としてガザでの戦争を終わらせるために全力を尽くす」と断言した。
もともとアラブ系は民主支持者が多いものの、今回の選挙戦では長引く中東紛争が影を落とす。ガザでアラブ系のパレスチナ人犠牲者が増大してもイスラエル支援をやめないバイデン政権への反発はアラブ系のほか、民主支持層の若者にも広がった。
西部カリフォルニア州に次いでアラブ系人口が多いミシガンには同系の有権者が20万人超いるとされる。少数派とはいえ、激戦州ではわずかな票でも取りこぼせば勝敗に直結する。16年大統領選のミシガンの票差は1万ほど、20年はおよそ15万だった。
ミシガンは民主候補が1992年以降に勝ち続けてきた牙城だったが、2016年にトランプ氏が制した。20年は民主党候補だったバイデン大統領が奪還し、勝利につなげた。出口が見えないガザ情勢を受け、民主はトランプ氏や第三政党の候補に票が流れかねないと危機感を募らせる。
会場となったミシガン州立大に詰めかけた学生らに「すべての若いリーダーに米国の希望を見いだせる。(1990年代半ば以降に生まれた)Z世代を愛している」と訴えたのは、若年層をつなぎとめたい証左にほかならない。
16年の再現を狙うトランプ氏はくさびを打ち込もうともくろむ。1日にはアラブ系州民の半数が集中するディアボーンを訪れ、アラブ系米国人と面会。最終日となる4日には最後に演説する場所としてミシガンを選んだ。
10月30日にはX(旧ツイッター)に「私の政権時代には中東に平和が訪れた」と投稿。返り咲けば「カマラ・ハリスとジョー・バイデンが引き起こした問題を解決し、レバノンの苦しみと破壊を止める」とも書き込んだ。
米リアル・クリア・ポリティクスが集計した世論調査の平均によると、3日時点でミシガンのハリス氏支持率は48.4%、トランプ氏が47.6%と競る。8月に2ポイント超だったハリス氏のリードは縮んだ。他の激戦7州も3ポイント差以内にとどまり、終盤戦も一進一退の状況が続く。
過去2回の選挙戦の直前情勢を振り返ると、16年は前評判で劣勢とみられた東部ペンシルベニア、ミシガン、中西部ウィスコンシンという「ラストベルト(さびた工業地帯)」で競り勝ったトランプ氏が大統領の座をつかんだ。20年はバイデン氏がラストベルト3州を取り返したものの、事前調査ほど差はつかない辛勝だった。
現職の副大統領が大統領選で勝利した例はほとんどなく、ハリス氏が勝てば36年ぶりになる。1988年に勝利したレーガン政権の副大統領だったブッシュ氏(第41代)以前では、第8代大統領になったビューレン氏が1836年の選挙を制したケースまで遡る。
4年前に再選に失敗したトランプ氏が返り咲けば、1893年以来およそ130年ぶり2人目の米大統領になる。同氏は3日、ペンシルベニア、南部ノースカロライナ、同ジョージアを回った。
選挙戦は残り1日。ハリス氏は激戦州で最大の票田となるペンシルベニア州の3カ所で集会を開く。一方のトランプ氏はノースカロライナ、ペンシルベニア、ミシガンの3州を訪れる。
【関連記事】
・米大統領選、2000年は36日後に決着 僅差で法廷闘争に
・歌を忘れたアメリカ 大統領選が示す民主主義の衰退
・迫る米大統領選、ウクライナ戦争で30年ぶり脚光の票田 』