若者狙う「モノなしマルチ」 アプリで接近、8億円集金
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE275QE0X20C24A5000000/


『2024年7月11日 10:22
連鎖販売取引(マルチ商法)を巡り業務禁止命令を受けた後も事業を続けたとして、警視庁が会社代表らを逮捕した。グループは投資講座へ勧誘したうえ「1人紹介すると10万円」と持ちかけ参加者を増やしていた。手法は物品を介さないことから「モノなしマルチ」と呼ばれる。SNSやアプリを通じ若年層が狙われている可能性がある。
警視庁生活経済課は11日、「President」(東京・新宿)など4社の代表を務めていた…
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『警視庁生活経済課は11日、「President」(東京・新宿)など4社の代表を務めていた男女4人を特定商取引法違反(業務禁止命令違反)容疑で逮捕したと発表した。
4人の逮捕容疑は2023年4〜6月ごろ、東京都から業務禁止命令を受けていたにもかかわらず、都内在住の20代男性など数人に対し、会員を勧誘すると報酬が得られるとするマルチ商法でビジネススクール入会の契約をさせるなどした疑い。
グループはマッチングアプリやSNSを通じ接触。面会時に「お金を稼げる場所で勉強しないか」「スクールに入れば投資を学べる」と勧誘し、約40万円の入会金を求めていた。会員を紹介すれば1人あたり10万円もらえるとも説明していた。
こうした手法で19年10月〜23年11月、約2000人から総額約8億5千万円を集めたとみられる。スクールに入会しても投資について学べた人は少なかったという。契約者は学生中心で平均年齢は21.7歳。22年に成人年齢が引き下げられた18、19歳もいた。
マルチ商法は、商品やサービスの売り手を勧誘すると報酬が得られるとして契約者を増やしていく業態を指す。特商法が定める「連鎖販売取引」にあたり、同法は契約時の虚偽の説明や威圧、誇大広告を禁じている。
かつては健康商品や化粧品を取り扱うマルチ商法が多かった。近年は投資セミナーといったサービスを売るモノなしマルチにシフトしている。SNSの普及や、新型コロナウイルス下で物品のやりとりが難しくなったことが背景にあるとの見方がある。
モノなしマルチが狙っているとみられるのは若年層だ。23年度に各地の消費生活センターに寄せられたモノなしマルチの相談は2274件。契約者の年齢が判明したケースのうち20代以下は35.2%と最多だった。投資熱の高まりに乗じてもうけ話を持ちかける手法が目立つ。
問題が発覚すると別法人をつくり事業を続けるケースもある。今回摘発されたマルチ商法のグループは不適切な勧誘や書面の不交付が確認され、都が23年3月に代表者らへ業務禁止命令を出した。しかし翌月には別法人を設立し勧誘を継続していた。
消費者問題に詳しい池本誠司弁護士によると、悪質なマルチ商法グループへ行政処分を出すには証拠の積み上げが必要で人手と時間がかかる。「自治体はマンパワー不足で、グループの実態を把握するのは容易ではない」とみる。
23年度にあったマルチ商法全体の相談は約5100件で、過去10年では17年度の約1万2千件をピークに減少傾向にある。しかし池本弁護士は「マルチ商法と気づかれないよう巧妙に誘う手法もあり、動きが潜在化している恐れがある」と危惧する。
立正大学の西田公昭教授(社会心理学)はマルチ商法について「警戒心が薄い人だけでなく、経済面や将来へ不安がある場合にのめり込みやすい」と話す。「行政などはマルチ商法のリスクを広く周知したうえ、相談体制を拡充させるべきだ」と話した。
(木村梨香)
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