仏下院選、与党と左派が候補一本化 極右阻止へ200区で

仏下院選、与党と左派が候補一本化 極右阻止へ200区で
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『2024年7月3日 5:57 (2024年7月3日 20:30更新)

【パリ=北松円香】フランスの与党連合と左派連合が国民議会(下院、定数577)選挙の決選投票に向け、200以上の選挙区で候補者を一本化した。ルペン氏率いる極右のRN(国民連合)への批判票を1人の候補に集め、極右伸長を阻止する狙いだ。選挙協力によりRNの過半数獲得の可能性が低下したとの見方が強まっている。

「極右には1票たりとも渡してはならない」。マクロン大統領は1日、閣僚を集めて候補者一本化の重要…

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『マクロン大統領は1日、閣僚を集めて候補者一本化の重要性を強調した。

マクロン氏は選挙戦で左派を強く批判してきたが、6月30日実施の1回目の投票後は一転、選挙協力に動き始めた。閣僚に対し、過去2回の大統領選では左派から協力を得たと指摘し、「あなたたちが今ここにいるのはそのおかげだ」と釘を刺した。

1回目の投票では、76の選挙区で50%以上の票を得た候補者の当選が確定した。残りの501区で7月7日に決選投票を実施する。1回目投票で全有権者の12.5%以上に相当する票を得た候補が決選に進む資格がある。

RNは移民制限や家計支援策で支持を広げており、欧州連合(EU)にも懐疑的だ。初回で得票率が首位となり、議会の過半数獲得も視野に入れる。

マクロン氏率いる中道の与党連合と左派連合の新人民戦線(NFP)にとっては、RNが勝利してフランスの政策が大きく方向転換するのは何としても避けたいシナリオだ。

極右以外の複数の候補が決選投票に出馬すると、極右に対する批判票が分散するため、極右とそれ以外の候補の一騎打ちに持ち込むことを狙っている。そのため得票率が低い候補に辞退を促し、極右に勝てそうな候補に票を集める戦略に出た。

決選投票の出馬届け出は2日現地時間午後6時に締め切られた。仏紙ルモンドの集計によると左派の130人強、与党連合の80人強が出馬を辞退した。

出馬候補が2人だけの区は候補者一本化前の190区から410区に増えた。大半は極右候補とその他の党の候補の一騎打ちとみられる。

だが与党連合の全体が一本化に同意しているわけではない。中道右派の共和党は候補者調整に加わらなかったこともあり、100近くの区では3人以上の候補者が出馬する。

与党連合内では、特に議会で激しく対立してきた急進左派の「不服従のフランス(LFI)」への反発が強い。フィリップ元首相やルメール経済・財務相など与党連合の有力幹部の一部は、LFIとの協力に否定的だ。

候補者にとってはせっかく手にした決選出馬の資格を放棄し、票を他党候補に譲るのはつらい判断だ。「出馬辞退するのはそちらだ」。2日にはX(旧ツイッター)で、選挙区が同じ与党と左派の候補者や支持者同士がつばぜり合いを演じた。

欧州メディアのルグランコンティナンは候補者一本化の動きを踏まえ、決選投票の結果を予測した。共闘勢力を含むRNの獲得議席数は最大でも262で、過半の289には届かない見通しという。

同メディアの予測では与党連合の最大獲得議席は133、NFPは157で、議会では絶対過半数の会派がいない状態になる想定だ。

選挙後を見据え、与党と右派や左派の一部による大連合を模索する動きも見え始めた。アタル首相は1日、「右派や左派、中道が案件ごとに協力する多元的な議会」が必要だと述べた。

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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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分析・考察 極右政権を阻止するためであれば力を合わせるべき、ということでしょうが、マクロン大統領自身の政治信念はどうなるのでしょうか。

左派連合は必然的に「大きな政府」に行きがちであり、改革を進めるはずであったマクロン政権のミッションは吹き飛んでしまうのではないでしょうか。

RNにやらせてみればきっと2年後までには評判が落ちるはず、という計算がマクロン側にはあるのでは、という説もあったのですが、どうも違うようです。

しかし、政策的に一致の少ない勢力と手を組んでも、マクロン政権の評判が上がるようなことが向こう2年でできるとは思えません。結局Xデーを先送りしただけになるのでは。

2024年7月3日 18:07いいね
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説 極右「国民連合(RN)」政権誕生を阻止するための候補者調整が、200を超える選挙区で進められた。

RNが単独過半数を得る可能性はさらに減退し、どの政党・会派も過半数に達しない「ハングパーラメント(宙吊り議会)」に陥る可能性が増した。

RNのバルデラ党首は単独過半数でないなら組閣しないと述べたことがあるが、RNの事実上のリーダーであるルペン氏は、単独過半数にわずかに届かない場合は政権樹立に向けて他党からの協力者を求める趣旨の発言をし始めた。

RNにとっては、今回の下院選を経て政権を樹立して政権担当能力を示すことが、次の段階(27年の大統領選での勝利)に向けた重要なステップ。ルペン氏には焦りが見える。

2024年7月3日 7:18 』