中国、朝鮮半島情勢を警戒 ロシアと首脳会談
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM020A10S4A700C2000000/
『2024年7月4日 0:07
【北京=田島如生】中国がロシアと北朝鮮の軍事協力をめぐり、日米韓が結束を強め朝鮮半島情勢が不安定になる構図を警戒している。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席とロシアのプーチン大統領は3日、訪問先のカザフスタンで会談し、経済や貿易面での協力拡大を確認した。
ロシア大統領府によると、プーチン氏は会談の冒頭で「中国との包括的パートナーシップと戦略的協力関係は、その歴史の中で最良の時期を迎えている」…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『ロシア大統領府によると、プーチン氏は会談の冒頭で「中国との包括的パートナーシップと戦略的協力関係は、その歴史の中で最良の時期を迎えている」と述べた。「ロシアと中国の協力は国際舞台における主要な安定要因の1つだ。協力を強化し続けている」と強調した。
習氏は「激変に満ちた国際情勢に直面する状況下で、両国は永続的な友好という当初の志を堅持すべきだ」と語った。中国国営新華社が伝えた。
習氏とプーチン氏の会談は5月の北京以来となる。習氏はウクライナ侵略を続けるロシアからエネルギーなどの輸入を拡大し、貿易や投資面で同国を支える姿勢を示すとみられる。
中ロは蜜月ぶりを誇示するものの、すきま風も吹く。きっかけは6月のプーチン氏の24年ぶりの北朝鮮訪問だ。
プーチン氏は平壌で金正恩(キム・ジョンウン)総書記と会い、軍事や経済に関する「包括的戦略パートナーシップ」を結んだ。どちらかが武力侵攻を受けた場合、もう一方が軍事援助する条項がある。事実上の軍事同盟だ。
両首脳は2023年9月にもロシア極東で会い、プーチン氏は北朝鮮の人工衛星開発を支援する意向を示した。これが同国の11月の軍事偵察衛星の発射につながった。北朝鮮は見返りとして、ウクライナ侵略を続けるロシアに砲弾などを提供した。
中国はこうしたロ朝の軍事協力に距離を置いてきた。ロシアが提案した中ロ朝の合同軍事演習を拒み、両国への直接的な軍事支援を避けてきた。
米欧がロ朝に科す経済制裁の巻き添えになりかねないとみるからだ。米国は23年12月、ロシアの物資調達に関わる第三国の銀行を制裁対象にすると表明した。これを避けるため中国の一部金融機関はロシア企業との取引を停止した。
中国からロシアへのアルミニウムや鋼材の輸出に影響が出ている。中国税関総署によると、中国の24年1〜5月の対ロ輸出額(ドル建て)は前年同期比2.6%減の418億ドルだった。
北朝鮮への輸出も1月以降、5カ月連続で前年を下回った。ロ朝接近との因果関係は不明だが、ロシアへの接近をけん制するため意図的に輸出を減らしている可能性はある。
もっとも中国はロ朝との関係が弱まるのは望んでいない。米国主導の主要7カ国(G7)や北大西洋条約機構(NATO)に対抗する上で、両国との結束は不可欠だからだ。
中朝関係が弱体化し、朝鮮半島への影響力が下がるのも避けたい。中国はこれまで経済支援を交渉材料にして北朝鮮に核実験を思いとどまらせてきた。北朝鮮がロシアを後ろ盾に7度目の核実験に踏み切れば、朝鮮半島情勢はより不安定になる。
焦点になるのが10月に中国で開く中朝国交樹立75周年にあわせた記念行事だ。朝鮮半島情勢に詳しい天津外国語大学の姜龍範教授は中国が北朝鮮への影響力を示すため、金総書記を式典に招く可能性を指摘する。
中朝が4月に平壌で75周年行事を開いた際、中国は共産党序列3位の趙楽際(ジャオ・ルォージー)全国人民代表大会常務委員長を派遣した。北朝鮮側で対等な立場にあたるのは朝鮮労働党序列2位の崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長だ。
北朝鮮が中国への不信感を強めているとの見方もある。中国は5月、韓国ソウルで開いた日中韓首脳会談に共産党序列2位の李強(リー・チャン)首相を送った。会談で北朝鮮の非核化も議論した。
会談後、北朝鮮は非核化の議論は「欺瞞(ぎまん)だ」などと猛反発した。北京の外交筋は北朝鮮について「中国が趙氏より格上の李氏をソウルに派遣したことへの不満がある。金氏の秋の訪中はないのではないか」と話す。
習氏は3日、プーチン氏との会談に先立ち、カザフスタンの首都アスタナで同国のトカエフ大統領と会談した。会談後の共同記者発表で中国の広域経済圏構想「一帯一路」をともに推進し、両国の貿易額を早期に倍増させる新たな目標に合意したと明らかにした。
【関連記事】
・プーチン氏と習氏、3日にカザフで首脳会談 ロシア高官
・ロシア・北朝鮮「同盟」で始まる角逐 次の焦点は核実験
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
青山瑠妙のアバター
青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
コメントメニュー
ひとこと解説 これまでも、北朝鮮の行動に中国が翻弄されることはしばしばあった。中国と北朝鮮の間の隙間風は相当強いのでなかろうか。
しかしこれまでと異なり、「大所高所」での視点を強調する今の中国にとっては、政策の微調整の可能性すら低いかもしれない。
ただ、これもアメリカが北朝鮮に対して「炎と激怒」で対抗するといったトランプ政権時のような緊迫した情勢にならなければ、の話だ。
2024年7月4日 7:28いいね
6
柯 隆のアバター
柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
コメントメニュー
分析・考察 経済の減速が長期化すれば、政治はますます保守的になり、対外的にはますます硬直的な姿勢をみせる。
その結果、中ロの結束がますます強化される。
なぜならば、G7を中心とする先進国の融和ができなくなるからである。
これこそ新冷戦に突入するシナリオである。
人が類を呼ぶといわれる通り、中ロの境遇がだんだん似てきた。門戸も閉ざされつつある。これからの数十年間、世界は新冷戦のまま、二つの陣営に分かれてしまう可能性がかなり高くなっている
2024年7月4日 7:12 』