ロシア領内や占領地に落下する滑空爆弾、兵器の有効性に大きな影響はない
https://grandfleet.info/us-related/glide-bombs-dropped-on-russian-and-occupied-territories-have-no-significant-impact-on-the-effectiveness-of-the-weapon/
『2024.07.2
露独立系メディアのASTRAは先月13日「ロシア空軍は過去4ヶ月間で滑空爆弾をベルゴロド州と占領地に93回も誤って投下した」と報告していたが、Washington Postも1日「ロシアの内部文書によって滑空爆弾が自国領内にも落下していることが明らかになった」と報じた。
参考:Russia’s devastating glide bombs keep falling on its own territory
UMPKの故障率を問題視したところで滑空爆弾の脅威が遠ざかることはないだろう
露独立系メディアのASTRAは先月13日「ベルゴロド州では6月11日と12日にロシア空軍が投下した滑空爆弾5発(Неклюдово、Батрацкая Дача、Новостроевка、Ленинский、Цепляево-второе)が発見された」「ロシア空軍は過去4ヶ月間、ベルゴロド州と占領地で少なくとも93回の誤爆を行っている」「ドネツク人民共和国でも4ダース近い誤爆(約40発)が確認されている」と報告していたが、Washington Postも1日「ロシアの内部文書によって滑空爆弾が自国領内にも落下していることが明らかになった」と報じている。
Washington Postが入手した文書とはウクライナの諜報機関から提供されたもので、この中にはベルゴロドの緊急対策チームが作成した爆弾処理と避難に関する緊急命令が含まれており、少なくとも2023年4月~2024年4月の間に38個の滑空爆弾がベルゴロド州内に落下し、内4発がベルゴロド市内に、内7発がベルゴロド市郊外に、内11発がウクライナ国境と接するグライヴォロン地域に落下し、大半の爆弾は森林警備隊、農民、周辺の住民にによって発見されたが、ロシア国防省は見つかった滑空爆弾がいつ使用されたものか把握できないていないらしい。
この文書に記載された滑空爆弾の落下についてASTRAも「地方自治体や現地メディアの報道から収集した情報と一致していること、落下した滑空爆弾を発見した大半の人々が住民であることを確認した」と明かし、Washington PostもASTRA独自の集計を引用して「ロシア軍は過去4ヶ月間に自国領とウクライナ占領地域に100発以上の爆弾を誤爆したと推定される。これは滑空爆弾の使用が大幅に増加した時期と一致する」と指摘。
さらに「ベルゴロド市内の幹線道路で大きな爆発が発生して巨大なクレーターが出来た2023年4月の事件についてロシア国防省は『上空を飛行していたSu-34から誤って爆弾が落下したのが原因』と発表したが、入手した文書によって誤って落下した爆弾がFAB-500によるものだったと確認された」「爆弾の落下についてベルゴロド当局は沈黙を守るか、(爆弾が爆発した際は)ウクライナ軍の砲撃のせいにする」と報じているが、この文書は「なぜ誤って滑空爆弾が自国領とウクライナ占領地域に落下するのか」という点を明らかにしてない。
ウクライナ人アナリストのルスラン・レヴィエフ氏は「ロシア軍が使用する滑空爆弾の失敗は全体の極一部に過ぎず、この兵器の有効性に大きな影響は及ぼさない」「ロシアは安価な民生品を採用してUMPKを大量生産するため、西側製のものと比べて信頼性の要件は遥かに低い」「ウクライナ軍発表とASTRAの集計に基づけばUMPKの故障率は4%~6%だ」「通常なら人口密集地付近での使用避けるか改良が必要な故障率だが、ロシアは現在の状況に満足している可能性が高い」「誘導システムが故障して自国領に落下した爆弾の殆どが爆発していないため何らかのセーフティーシステムが存在するのかもしれない」と分析している。
要するにロシアは「UMPKの誘導システムは故障して自国領に落下する可能性があるものの、何らかの仕組みで爆発を防げるため生産効率を犠牲にしてまで改良する必要はない」「人口密集地に落下した衝撃で民間人やインフラに生じる犠牲は許容範囲」と考えている可能性があり、安全性についての考え方は西側諸国とロシアの違いというしかない。
どちらにしても安価なUMPKは高価な精密誘導兵器の備蓄不足を補い、敵防空システムが作動する空域に貴重な航空機を侵入させることなく静的目標を破壊するのに効果的で、UMPKの故障率を問題視したところで滑空爆弾の脅威が遠ざかることはないだろう。
関連記事:露独立系メディア、ロシア空軍による誤爆は過去4ヶ月間で100発以上
関連記事:ウクライナ軍によるSu-57の破壊、UMPKの有効性が低下している可能性
※アイキャッチ画像の出典:Fighterbomber
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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 10 』