フィリピン町長に中国人スパイ疑惑 「指紋が一致」

フィリピン町長に中国人スパイ疑惑 「指紋が一致」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0131C0R00C24A7000000/

『2024年7月1日 16:53 (2024年7月1日 17:48更新)

【マニラ=藤田祐樹】マニラ首都圏北方のタルラック州バンバン町の町長が中国人スパイだとの疑いが強まっている。フィリピンの捜査当局は町長の指紋が2003年に入国した中国人のものと同一だと明らかにした。国籍の偽装に加えて違法なオンラインカジノとの関連が指摘され、フィリピンで反中感情が高まる一因となっている。

スパイ疑惑が浮上しているのはバンバン町のアリス・グオ町長。同氏は22年の選挙でトップ当選し、町…

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『同氏は22年の選挙でトップ当選し、町長に就いた。中国籍の父親と家政婦のフィリピン人の母親の間に生まれたと主張するが、母親の国籍が確認できていなかった。

フィリピンの上院は今年4月以降、公聴会を重ねてグオ氏の国籍問題を追及してきた。グオ氏は5月下旬の公聴会で、母親の身元が不明な理由を「幼少時代に母親に捨てられ、一緒に暮らしたことはない」などと説明。「私はスパイではなく、フィリピン人だ」と言明した。

本人が疑惑を否定してきたものの、6月中旬以降に中国籍を裏付ける情報が続々と明らかになった。

6月18日にはガチャリアン上院議員が移民局に03年に提出されたビザ申請書類をもとにグオ氏は中国人「グオ・フア・ピン」である可能性があると訴えた。母親として中国人女性の名前が記されているとも告発した。

27日には調査を主導するホンティベロス上院議員が国家捜査局(NBI)の指紋鑑定の結果を公表し、グオ町長の指紋と中国国籍のグオ・フア・ピン氏の指紋が一致したと追及した。ホンティベロス氏は「有権者とフィリピン人への侮辱だ」と非難した。

同氏は指紋鑑定に先立ち「アリス・グオ」という名前と生年月日が一致する別人の顔が載った出生証明書のコピーを公開した。グオ氏が中国籍を隠すため、別のフィリピン人の身辺情報を盗んだのではないかと批判した。

グオ氏の身辺に疑義が生じたのは、3月にバンバン町でオンラインカジノ会社が人身売買や監禁の疑いで摘発されたことが発端だった。

業者を家宅捜索すると、グオ氏が犯罪拠点となった建物を所有する会社の株式の半分を所有していたと分かった。身元に不明な点が多く、高級車やヘリコプターを所持していたことが注目され、町長として違法な業者を保護したのではないかとの見方が広がった。

国内で「POGO」と呼ばれるオンラインゲーム会社は近年、フィリピンで社会問題になっている。賭博が禁止の中国本土から東南アジアに業者が流れ、犯罪拠点となる事例が多い。人身売買など違法行為の隠れみのになっているとも指摘される。

大統領府の組織犯罪対策委員会によると、無許可で営業するなど違法なPOGOは300社を超えるとされる。当局がたびたび強制捜査に入り、人身売買や拘禁の容疑で摘発する例が後を絶たない。

マルコス大統領は5月中旬に「誰も彼女のことを知らない。市民権の問題を調査する必要がある」と記者団に語り、捜査を指示していた。フィリピンと中国は南シナ海の領有権を巡り、船舶同士が衝突するなど対立を深めている。グオ氏のスパイ疑惑はPOGOの犯罪とからんで対中感情を悪化させる一因となり、国民の関心が高まっている。

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