米民主はなぜ「バイデン一択」か 党分断で敗北ジンクス
編集委員 永沢毅
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD313280R30C24A1000000/
※ 大統領の「本選」は、「巨額の資金」が必要なんで、そうそう「何回も」、投入はできない…、という話しか…。
※ 有力候補達は、「次回」に備えて、資金を「温存」している…、という話しか…。
『2024年2月2日 5:00
11月の米大統領選に向けた民主党の予備選が3日、南部サウスカロライナ州で本格的に始まる。党内には不人気のバイデン大統領に不満がくすぶるが、再選を阻む有力な対抗馬は見あたらない。強い挑戦者が現れると現職の大統領に打撃を与えてきたジンクスが背景にある。
ブティジェッジ運輸長官にニューサム・カリフォルニア州知事、ウィットマー・ミシガン州知事……民主党内には次世代の大統領候補と目される有望株が何人もいる…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『いずれもまだ40〜50歳代で、2028年の大統領選もチャンスがある。
ニューサム氏は昨秋に訪中し、習近平(シー・ジンピン)国家主席と面会した。将来をにらみつつ「シャドー・キャンペーン」(影の選挙活動)とも称される活動をしている。
ただ閣内にいるブティジェッジ氏はもちろん、ニューサム、ウィットマー両氏ともバイデン氏の再選を支援すると公言している。
不人気でもだんまり
民主党関係者は「今回出馬すると党内の批判を浴び、せっかくの28年以降の芽を潰しかねない。だからみんな黙っている」と指摘する。
各種の世論調査によると、バイデン氏は歴代の大統領の中で最も不人気だ。不出馬を求める7割が高齢をその理由にあげる調査結果もある。
勇退を求める声もあがるバイデン大統領=AP
「バイデンは再選出馬すべきではない」(ワシントン・ポスト)。民主党寄りとされる米メディアでも昨年来、勇退を求める論考が続出していた。それでも「バイデン降ろし」が盛り上がらなかったのはなぜか。
米クラーク大のロバート・ボートライト教授によると、予備選で有力者が現職に挑戦すると党内の対立が先鋭化し、本選で敗れる結果をもたらしてきた事情がある。
敗北ジンクスの系譜
典型的なのは1976年のフォード大統領のケースだ。共和党候補の指名争いに知名度の高いレーガン元カリフォルニア州知事が名乗りをあげた。
両氏は激戦を演じ、夏の共和党大会まで決着がずれ込む異例の展開をたどった。フォード氏は指名を得たものの、本選では民主党候補のカーター氏に敗北を喫した。
そのカーター氏は80年の民主党候補選びで、ケネディ大統領の弟で東部マサチューセッツ州上院議員だったエドワード・ケネディ氏の挑戦を受けた。ケネディ氏は民主党にとって大票田のカリフォルニア、ニューヨーク両州を制し、すべての予備選で得票数の4割近くを得る勢いをみせた。
フォード氏を破ったカーター氏も予備選が鬼門となった
ケネディ氏が夏の党大会でようやく敗北を認めたのを受けてカーター氏は党の指名を得たが、本選で共和党のレーガン氏に大敗した。
ブッシュ大統領(第41代)が再選をめざした92年の共和党候補選びでは、保守系評論家のパット・ブキャナン氏が一定の支持を集めた。
本選では民主党のクリントン氏が勝利した。
民主・共和を問わず、激しい予備選は現職にとって鬼門となってきた歴史がある。
資金の分散が理由か
現在のような予備選の制度が整った1970年代以前で単純比較はできないものの、ジョンソン大統領も現職にかかわらず68年の民主党候補の指名争いから撤退を余儀なくされた。
初戦の東部ニューハンプシャー州予備選で2番手の候補に予想外の僅差に迫られたためだ。
曲折を経て民主党はハンフリー副大統領を候補に選んだものの、本選ではニクソン氏を擁した共和党に敗れている。
11月の本選はトランプ前大統領とバイデン氏の再戦の公算が大きくなっている=ロイター
ボートライト氏は強力な挑戦者が出てきた場合の現職への影響として、本選にとっておきたい資金を予備選で投入せざるを得なくなったり、攻撃材料を本選での対戦相手に与えてしまったりする点をあげる。
もっとも、敗北にはそれぞれ固有の事情もあるため「このジンクスの因果関係を証明するのは難しい」とも語る。
たとえば、フォード氏はウォーターゲート事件で失脚した前任のニクソン氏を恩赦したことが党内で不興を買っていた。
カーター氏は景気の低迷に加え、イランでおきた米大使館人質事件で人質救出に失敗して批判を浴びたことも影響した。
頼みの若年層、離反招く恐れ
今年11月の本選挙は「バイデン対トランプ」再戦の様相が強まる。
ロイター通信の1月の世論調査によると、67%がこの再戦を見たくないと回答した。米ハーバード大の昨年12月調査では、バイデン氏が強みとしてきた18〜29歳の若者の投票意欲は前回選挙の同時期と比べて低下している。
「長老支配」(ジェロントクラシー)がZ世代ら若者の投票行動を遠ざける懸念がくすぶる。世論調査でバイデン氏がこの年代の支持率でトランプ氏を下回るケースもでてきた。若者のバイデン離れには中東紛争や気候変動への対処など多様な要因がある。
20年の共和党予備選で有力な対抗馬がいなかった現職のトランプ氏は本選で敗れた。民主党がジンクスを避けようとしても、バイデン氏が再選を果たせる保証はない。
【関連記事】
・バイデン再選ならいいのか 外交・経済に残る米国第一
・アメリカ大統領選挙2024 バイデン氏に挑むのは?
Nikkei Views
編集委員が日々のニュースを取り上げ、独自の切り口で分析します。 』