米大統領選、消去法の選択 世界を揺らす
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN20DZR0Q4A620C2000000/
『2024年6月28日 16:00 (2024年6月28日 23:03更新)
米国の大統領の権力はとてつもなく大きい。世界最強の軍隊と世界最大の経済を動かす力に値する全能の個人など本来、いるはずがない。
それでも欠点より美質を信じ、有権者はその人物に未来を託す。11月の大統領選挙のあるべき姿だろう。
今回は残念ながら「どちらの候補が不安か」を競う選挙だ。民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領を米国人は熟知し、4人に1人がその再戦を嫌う。81歳のバイデン氏は次の4年…
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『81歳のバイデン氏は次の4年を務め上げる能力を、34の罪で有罪評決を受けた78歳のトランプ氏はその資質を疑われている。
27日のテレビ討論会で起死回生を狙ったバイデン氏は精彩を欠いた。声はかすれ、顔色は悪く、言葉も言いよどむ。討論が始まってしばらくすると「大統領はここ数日、風邪をひいている」との情報がバイデン氏周辺から米メディアに流れた。
討論会は政策を訴えるだけでなく、表情やしぐさからにじむ人間性のすべてを懸けて国民の信頼をつかむ場だ。トランプ氏を「米国の民主主義を理解していない」「野良猫ほどのモラルしかない」と責め立てる場面もあったが、劣勢が続いた。
バイデン氏は今回の選挙を「民主主義を守るための戦い」にしたいと願っている。リベラルな支持層を奮い立たせ、その熱気を無党派層に広げて4年前の勝利の再現を狙う。その戦術はデモクラシーの頭文字から「プランD」とも呼ばれる。
討論会は思惑通りの結果を得られず、民主党内では「バイデン降ろし」の声が噴き出した。
トランプ氏も厳しい。質問を無視して持論をまくし立て、復権後に誓う「報復」を「私の報復はこの国を再び成功させることだ」と言い繕った。
どんな選挙結果も受け入れるかと問われ、「不正がなければ」と述べた。秩序だった振る舞いにみえたのは、相手が話している間はマイクの音声を切るという強制措置のおかげが大きい。
バイデン氏は「重罪人」と呼ぶトランプ氏に劣る支持しか得られていない現実を直視することから再出発するしかない。「相手はもっとひどい」という消去法の先に、未来への選択への確信を育むことができるか。
中東、ウクライナ、東アジアと世界は不安に揺れている。「民主主義を守る」という気高い言葉も、それを裏付ける指導力への信頼を欠けば、弱さを読み取った権威主義国家が秩序修正に動く。米国の民主主義の復元力を試す4カ月となる。
(ワシントン支局長 大越匡洋)
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