普及しない「5G」の法人ソリューション

普及しない「5G」の法人ソリューション、企業が求めるのは高性能ではなかった
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00086/00313/

『2024.06.17

5G(第5世代移動通信システム)を活用した法人ソリューションの需要開拓が全く進んでいない。モバイル通信の需要は旺盛であるものの、高性能である5Gを有効活用する事例はとても少ない。

 なぜ企業は5Gに魅力を感じていないのだろうか。

企業の5G活用は今なおPoC止まり

 5Gのサービス開始当初、法人向けソリューションの利用が大きく拡大すると期待されていた。高速大容量通信や低遅延といった5Gの高い性能を生かし、企業のデジタル化に向けたニーズが開拓されていくと予想され、多くの法人向けソリューションの事例や実証実験の様子などが披露されていた。

 だがそれから4年が経過してもなお、企業向けの5Gソリューションは普及が進んでいるとはとても言い難い状況が続いている。様々な取材を通じて話を聞いても、その大半は依然としてPoC(概念実証)や実証実験の段階にとどまっている。企業が全面的に5Gを取り入れて活用している事例はごくごく少数のようだ。

 一例を挙げよう。NTTドコモの子会社で法人事業を担っているNTTコミュニケーションズは2024年4月19日、新しい法人向けの5Gサービス「5Gワイド」の説明会を実施した。説明会では、同社が5G関連のビジネスソリューションを2000件以上受注したと明らかにした。
 だがその内容を聞くと、大規模な工場を建設した際に工場内や周辺に5Gのネットワークを構築したり、スポーツイベントなどで臨時の5Gエリアを構築したりした案件も、その件数に含まれるという。

NTTコミュニケーションズは5G関連のビジネスソリューションを2000件以上受注したというが、その中には工場のネットワーク整備なども含まれていた。写真は2024年4月19日に同社が実施した「5Gワイド」の説明会から
(写真:佐野 正弘)

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 5Gの大容量通信を生かした電車内の監視カメラでの活用など、5Gのネットワークを活用した本格的なソリューションの事例もいくつか示していた。だがその数はあまり多くないようだった。実証実験から先の具体的なビジネスにはあまり進んでいないようだ。

 では、携帯電話会社以外が自営の5Gネットワークを構築できる「ローカル5G」の活用はどうか。2024年5月29日から実施されていた無線技術やソリューションの展示会「ワイヤレスジャパン2024×ワイヤレス・テクノロジー・パーク2024」で、ローカル5Gを扱うシステムインテグレーターや商社に話を聞いてみた。その回答は芳しくないというのが正直なところだった。

 各社の話で共通していたのは、PoCのためローカル5Gを導入するケースはいくつか出てきているものの、それ以上の導入拡大が進んでいないということだった。PoCの延長線上の取り組みとして、企業の一部でローカル5Gが使われ続けるケースはあるようだが、やはり本格的な拡大には至らず停滞が続いているようだ。

「ワイヤレスジャパン2024×ワイヤレス・テクノロジー・パーク2024」の京セラみらいエンビジョンのブース。ローカル5Gのネットワークをブース内に構築するなど展示に力を入れていたが、実際の導入事例はまだPoC段階のものがほとんどとのことだった。写真は2024年5月29日、同ブースにて
(写真:佐野 正弘)

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