G7に「政治空白」リスク 相次ぐ大型選挙、見透かす中ロ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA13CP20T10C24A6000000/

『2024年6月15日 11:00
【ファサーノ(イタリア南部)=秋山裕之】15日に閉幕する主要7カ国首脳会議(G7サミット)はウクライナを侵略したロシアや軍備拡張を進める中国への対処で一定の成果をあげた。やり玉にあがった中ロは、大型選挙が相次ぎ「政治空白」のリスクを抱えるG7を見透かす動きをみせる。
G7は14日に採択した首脳宣言でロシアの凍結資産を活用したウクライナ支援の枠組みを設ける方針を記した。中国による南シナ海や東シナ海…
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『中国による南シナ海や東シナ海での海洋進出に「深刻な懸念」を表明し、一方的な現状変更の試みへの強い反対を明記した。
岸田文雄首相は一連の討議で、対ウクライナ支援の継続と、中国の過剰生産問題への対応などを促した。
14日の「インド太平洋・経済安全保障」の討議では、インド太平洋について「欧州の安全保障と不可分一体だ」と述べた。地理的に遠い欧州が地域に関与する必要性を訴えた。「ウクライナはあすの東アジアかもしれない」との危機意識がある。
G7が共有する民主主義などの価値は結束の源泉だ。同時にリスクにもなる。
一部の首脳は政権交代の可能性もはらむ大型選挙を控える。内政を優先せざるを得ず、選挙の結果によっては、自国第一主義が台頭し、外交方針の変更を迫られるおそれもある。
サミットで米欧が内政の課題として直面する移民問題に時間を割いたのはG7首脳が国内を意識しなければならない現状を映した。バイデン米大統領は11月の大統領選に向けた資金を集める会合に出席するため、閉幕前に帰国の途についた。
米国第一主義を掲げるトランプ前大統領と激しく競り、足元の国際会議での発信より選挙を優先する必要があった。ウクライナ和平案を話し合う「世界平和サミット」への出席は見送った。岸田首相らG7首脳も加わって15日からスイスで始まる。
英仏両国では議会下院の解散が続いた。英国は7月4日に総選挙を予定する。支持率で与党・保守党をしのぐ野党・労働党による14年ぶりの政権交代が現実味を帯びる。
フランスの国民議会(下院)は6〜7月に選挙を実施する。欧州連合(EU)に懐疑的な極右勢力が伸長し、マクロン大統領と所属政党が異なる首相が誕生するシナリオが指摘される。
日本も、岸田首相が9月に自民党総裁の任期満了を迎え、総裁選が開かれる見通しだ。内閣支持率は低迷し、再選戦略は綱渡りの状況にある。
標的にされた中国とロシアは裏で外交戦を仕掛けた。
民主的な選挙がない独裁的体制をしき、長期戦略を描ける利点をいかす。
G7が主導する国際秩序を変更するため、G7が政治空白のリスクを抱えるこの時期を好機ととらえる。
10〜11日にはロシアの西部のニジニーノブゴロドでインド、ブラジルなどが参加するBRICSの外相会議を開いた。タイやトルコなど12の新興国を含む拡大会合も開催した。G7とグローバルサウスと呼ばれる新興・途上国の取り込みを競っている。
ラブロフ外相は会議で「BRICSの拡大は多極的世界秩序の形成を明確に裏付けるものだ」とG7主導の国際秩序への対抗心をあらわにした。ロシアがBRICS議長国を務める24年に、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)などが枠組みに加わった。
中東問題も外交に利用する。グローバルサウスの多くの国は、ロシアの侵略を受けるウクライナと、イスラエルの攻撃に遭うパレスチナへの対応が異なるとして、G7などの西側諸国に不信感を強めている。
中国は5月、ブラジルとウクライナ危機の政治解決に向けた独自提案をまとめた。ロシアとウクライナの双方が参加できる和平会議の開催を盛り込んだ。中ロが世界平和サミットに参加しないようグローバルサウスに働きかけているとの見方もある。
中国の李強(リー・チャン)首相は近く、マレーシアを訪れアンワル首相と会談する。イスラム教徒が多い同国は親パレスチナの立場から西側への不満を強める。
G7も新興・途上国との連携を重視する。岸田首相は14日、サミットに招待されたインドのモディ首相と会い、24年中の同氏来日を見据えて協力することを申し合わせた。
G7は中東問題では足並みをそろえられない。サミットではイスラエルにイスラム組織ハマスとの戦争の停戦を受け入れさせる道筋を描けなかった。選挙とともに中ロに付けいる隙を与えている。
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