ミャンマー大型開発、中ロと再起 軍政検討で後ろ盾求め

ミャンマー大型開発、中ロと再起 軍政検討で後ろ盾求め
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM23EED0T20C24A5000000/

『2024年6月13日 18:08

【ヤンゴン=渡辺禎央】ミャンマー軍事政権は2011年に中止した中国との大型水力発電所建設を再開する方向で検討に入った。

ロシアとは頓挫していた深海港の共同開発を協議する。

少数民族武装勢力など抵抗勢力との戦闘が続いており、中ロという後ろ盾を確保したい思惑が透ける。

軍政はミャンマー北部カチン州にある「ミッソンダム」建設の再開に向けた検討委員会を立ち上げた。エネルギー副大臣を委員長とし、事業の採算や工…

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『軍政はミャンマー北部カチン州にある「ミッソンダム」建設の再開に向けた検討委員会を立ち上げた。エネルギー副大臣を委員長とし、事業の採算や工期を洗い直す。

同事業は中国企業が主導して09年に着工した。36億ドル(約5660億円)を投じ、原子力発電所6基に相当する出力600万キロワットの施設を19年に稼働させる計画だった。

ミッソンダムでつくる電力の9割が中国向けであることなどから国民が反発した。11年に当時のテインセイン政権が中止を決めた。民政移管後に対中姿勢を転換した象徴として知られる。

西部ラカイン州でも開発が止まっていた中国とのインフラ整備が動き始めた。チャウピュー経済特区の深海港建設を巡り、地元当局が23年12月に中国中信集団(CITIC)が主導する合弁会社と開発権益の追加文書に調印した。地元報道によると6月8日に中国の外交団が進捗を評価するため現地入りした。

「土地の補償問題はめどが付いた。速やかに全ての準備作業を完了させてほしい」。軍政序列2位のソーウィン国軍副司令官は5月23日の経済特区中央委員会で、チャウピュー開発の再始動を急ぐよう発破をかけた。

ラカイン州やカチン州では、国軍と少数民族武装勢力が激しく衝突する。大型インフラの着工は難しいとの見方が多い。それでも軍政が開発に前向きなのは中国の利害を無視できないためだ。

巡視艇引き渡し式典で文書に署名する中国とミャンマーの代表(11日、ヤンゴン)

ラカイン州は中国雲南省とインド洋を結ぶ輸送ルート「中国・ミャンマー経済回廊」の要衝に位置する。深海港を整備すれば回廊の物流が増えて中国側の恩恵も大きい。中国に隣接するカチン州の大型水力発電所が稼働すれば、中国の安定的な電力供給に役立つ。

軍政は軍事面を含めて中国の支援を受けてきた。11日にはミャンマー海洋警察に6隻の巡視艇を引き渡す式典を最大都市ヤンゴンで開いた。ラカイン州沖に配備する公算が大きい。

ロシアともインフラ開発で協力する。ミンアウンフライン国軍総司令官は3月、ロシアのタス通信とのインタビューで南部のダウェー経済特区においてロシアと深海港の建設を協議中だと明かした。同特区は日本やタイと整備計画を策定したが、開発が頓挫していた。
ロシアとの合同演習を前に式典に出席したミンアウンフライン氏(前列中央、2023年11月)

ダウェーはロシアとミャンマーが23年11月、初の海事合同演習を実施したアンダマン海に近い。5月中旬には独立系メディアのミャンマーナウが、軍政とロシアが建設に関する初期段階の交渉に入ったと伝えた。

ミャンマーでは抵抗勢力による国軍への攻撃が各地に飛び火し、経済成長の妨げとなってきた。

世界銀行は11日、24年度の同国の経済成長率は23年度に続き1%にとどまると見通した。経済の低迷が長引く状況で中ロに接近し、インフラの権益などについて両国から足元を見られる可能性もある。

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