米国・ウクライナが安保協定 期間10年、武器や情報支援
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN13EVE0T10C24A6000000/
『2024年6月14日 5:29
【ファサーノ(イタリア南部)=坂口幸裕】米国のバイデン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は13日、10年間の軍事支援を担保する安全保障協定に署名した。侵略を続けるロシアに対するウクライナの自衛能力に加え、停戦後もにらんだ将来の抑止力維持を支える。
バイデン氏は13日、イタリアでゼレンスキー氏と会談した後の共同記者会見で「ウクライナの防衛力と抑止力を長期的に強化する」と述べた。「ウクライナの恒…
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『「ウクライナの恒久的な平和は自国で防衛し、将来の侵略を抑止できる能力で責任を負わなくてはならない」と話した。
安保協定の締結に伴うウクライナへの米軍派遣は否定した。武器や弾薬を提供するほか、自国生産も後押しする。機密情報の共有拡大や米軍拠点でのウクライナ軍の訓練も実施する。バイデン氏は「ウクライナがこの戦争に勝つまで我々はともにいる」と表明した。
米欧はウクライナに送った武器でロシア領を攻撃するのを限定容認した。バイデン氏は国境周辺のロシア領側の軍事拠点をたたくために使用するのは「非常に意味がある」と明言した。国境周辺以外のロシア領に長距離ミサイルなどを撃ち込むことは認めない考えを改めて示した。
ゼレンスキー氏は「ウクライナと米国との間で、独立以来最も強力な協定に署名した。これは持続可能な平和を保証するためのステップだ」と訴えた。
ロシアによるウクライナ侵略が長期化しても支援を継続するだけでなく、双方の間で停戦が実現しても再侵略を思いとどまらせる体制づくりをめざす。ドイツやフランスなども今後10年の軍事協力を保証する2国間協定をウクライナとすでに結んだ。
米国が日本や韓国と結ぶ条約とは異なり、ウクライナが他国から攻撃されても米国に防衛義務は生じない。追加の支援予算には米連邦議会の承認が必要で、今回の協定では担保できない。
11月の大統領選で返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領はウクライナへの巨額支援に慎重な姿勢をにじませる。安保協定に基づく軍事支援を巡っては、仮にトランプ氏が返り咲けば維持されるかどうか見通せない面がある。
ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)への加入をめざしているものの、NATO加盟国の間でロシアとの停戦後にすべきだとの意見が支配的だ。紛争中のウクライナ加盟を認めれば「ロシアと戦争状態になる」(バイデン氏)との懸念がある。
NATOは根幹となる集団安全保障で1つの加盟国への攻撃をNATO全体への攻撃とみなし、加盟国は攻撃された国の防衛義務を負うためだ。当面はウクライナが各国とそれぞれ2国間協定を結び、武器供与を中心とした軍事支援を受ける見通しだ。
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広瀬陽子
慶応義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説 本合意は米連邦議会の承認プロセスが残っているため、若干の不安定要素はあるものの、ウクライナにとっては極めて大きな意義がある。
米国の支援が極めて大きな意義がある中、昨年から今年4月にかけての米国の支援停滞はウクライナにとって大きな痛手であった。
そして、「もしトラ」の可能性に備え、それが実現する前に合意を達成することは米宇双方にとって重要だった。
また、今のウクライナが和平を考えるにあたり、最も重要な前提がNATOに代わりうる安全保障のシステムだ。
NATO加盟が現実的ではない中、ウクライナは二国間の安保協定をより多く構築する事で、安保網を作り、NATO加盟状態に近い実態を確保しようとしている。
2024年6月14日 8:40 』