中東地域の対立の地政学的断層線

 ※ 今日は、こんな所で…。

上記のような歴史の層の積み重ねが、「エルサレムの丘陵」を中心に中東地域にいくつもの異なる対立の地政学的断層線を形成している。

宗教の断層線  

第1に、宗教の断層線である。イスラム教と
ユダヤ教の断層線は、イスラエルの国境線と重なる。

イスラエルの隣国レバノンでは、マロン派、ギリシア正教、カトリックなどのキリスト教、シーア派、スンニ派、ドルーズ派などイスラム教のさまざまな宗派が混在し、活断層のように小さな対立の断層線が狭隘な国内にいくつも走り、1970年代半ばから10年以上にわたる内戦を引き起こす原因ともなった。  

またイスラム内部では、シーア派とスンニ派の宗派の大きな断層線がイランとイラクの境界を流れるシャットルアラブ川からペルシア湾上に走り、シーア派イラン対スンニ派イラク、サウジアラビアの対立の原因の一つになっている。

またイラクをはじめレバノン、アフガニスタンなどイスラム諸国の国内でもシーア派とスンニ派の断層線が走っている。

民族の断層線  

第2に、民族の断層線である。

中東地域のいわゆる北層地帯に、アラブと非アラブの断層線が走っている。

北層地帯に位置するトルコ、イラン、アフガニスタンはいずれも非アラブ民族である。

この三国の歴史的特徴は、モンゴルの支配の後にイスラムのユダヤ教の断層線は、イスラエルの国境線と重なる。

イスラエルの隣国レバノンでは、マロン派、ギリシア正教、カトリックなどのキリスト教、シーア派、スンニ派、ドルーズ派などイスラム教のさまざまな宗派が混在し、活断層のように小さな対立の断層線が狭隘な国内にいくつも走り、1970年代半ばから10年以上にわたる内戦を引き起こす原因ともなった。  

またイスラム内部では、シーア派とスンニ派の宗派の大きな断層線がイランとイラクの境界を流れるシャットルアラブ川からペルシア湾上に走り、シーア派イラン対スンニ派イラク、サウジアラビアの対立の原因の一つになっている。

またイラクをはじめレバノン、アフガニスタンなどイスラム諸国の国内でもシーア派とスンニ派の断層線が走っている。

繰り返し、とりわけトルコ、イラクで大きな治安問題となっている。  クルド人の越境武装闘争がトルコ、イラン、イラク、シリアの国境問題を誘発し、イランイラク戦争の遠因ともなった。最近ではイラク北部のクルディスタン自治政府が、イラク戦争によるイラク中央政府の弱体化や内戦によるシリアの混乱に乗じてクルド人地域の支配を強めている。

政治の断層線  

第3に、政治の断層線である。

イスラエルを国家として承認するか否かをめぐって、アラブ、イスラム諸国の間に断層が走っている。それは、パスポートにイスラエル入国のスタンプのある者の入国を認めるか否かで判別できる。

認めるのはイスラエルと国交のあるエジプト、ヨルダンそしてトルコ、認めないのは国交のないサウジアラビア、シリア、レバノンなどのアラブ諸国やイランである。  

このように「エルサレムの丘陵」を中心に中東地域は、文明、王朝、帝国、国家の歴史の層が幾重にも積み重なり、その歴史の地層を引き裂くように宗教、宗教、民族などの断層が走り、各国内には宗教、民族、政治の活断層が伏在している。

庄司潤一郎; 石津朋之. 地政学原論 (日本経済新聞出版) . 日経BP. Kindle 版. 』