株価と移動平均線に着目 適切な売り時を一目で見抜く

株価と移動平均線に着目 適切な売り時を一目で見抜く
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『2024年6月12日 4:00

「いつも早めに売ってしまう」「思い切った損切りがなかなかできない」――といった株式投資の「売り」に関する悩みを解決すべく、スゴ腕投資家やプロに売り方のポイントを聞く当連載。3回目はインベストラスト代表の福永博之さんに、テクニカル分析を用いた売り時の見極め方について教えてもらった。

【連載「損小利大を実現する売りワザ」の最新記事】

(1)投資の実力者は「損切り」を徹底 損失額や下落率が目安
(2)利益を大きくする銘柄の売却 実力者が明かすコツとは

急騰・急落が続く相場では、売りの判断が遅れると一気に損が膨らみかねない。そこで売りを判断する材料として役立つのが、過去の株価の動きなどから売り時を探るテクニカル分析だ。
基本は13週移動平均線

福永さんがまず提案するのが、株価が単純移動平均線を割った時に同線が下向きなら売りを検討し始めるという方法だ。逆に上向きであれば持ち続ける。

「誰でも参考にしやすいのが株価が13週移動平均線を割ったタイミング。ただ、長期投資を手掛けている投資家なら、12カ月移動平均線を株価が割る時までは売らないという判断もありだ」(福永さん)

売る場合にもコツがある。「株価が下落した時には、安くなったと判断した投資家の買いが集まって一時的に反発する場合も多い。その時まで待って売ることで、少しでも高く売るのがコツだ」と福永さんは指摘。さらに「いつまでも反発がなかった場合には、株価が26週移動平均線を割る時までには売っておきたい」と続ける。
赤線=13週移動平均線、青線=26週移動平均線

日経平均株価の週足チャートを見ると、4月中旬に株価が13週移動平均線を大きく割り込んだが、同線は上向きのままだ。ルールにのっとれば、まだ売らずに持ち続けたい状況だ。
含み損にはより早く対応

ただこのルールは含み損を抱えている人には使えない。日経平均を4万円付近で買った投資家にとっては、13週移動平均線を割った3万8000円台まで待ったら損が膨らむ一方だからだ。

「その場合、株価が25日移動平均線を割った後の反発で、線を越えられなかったらすぐに売るのがよい。逆に、明確に線を越えられた場合は再び上昇が始まる可能性があるため、持ち続けるのも手だ」
赤線=5日移動平均線、青線=25日移動平均線、緑線=75日移動平均線

日経平均の日足チャートを4月頭から見ると、4月3日に株価が急落。25日移動平均線を一度大きく割ったが、4日には反発して同線を大きく越えた。

「ここはまだ再び上昇が始まる可能性があるため、売らずに保持しておきたい場面だ」(福永さん)

しかし、5日に入ると再び急落。その後は8日、9日と反発するも、同線を明確に越えることはなかった。福永さんは「含み損を抱えている人は、このあたりで今後の上昇がなさそうだと判断して売りたい」と指摘する。
乖離率から急落を予測

一方で、急騰している時など、下落トレンドの兆しが見える前に売っておきたい場面もあるはずだ。その際に使いたいのが、株価と移動平均線の乖離率が一定以上大きくなったら売るやり方。株価が急騰して移動平均線と乖離しすぎると、リスク回避で売る投資家が出始める。そのため株価が急落するリスクが高まるのだ。

福永さんは「過去の急落直前の乖離率を参考に目安の水準を決め、そこを超え始めたら急騰中であっても少しずつ売りたい」とアドバイスする。

例えば、レーザーテックを例に取ると、2023年秋から始まり、24年3月末に終わった急騰では、各月の高値と12カ月移動平均線の乖離率は1月に70%、その後2月は69%、3月は61%と推移していた。

過去を振り返ると、21年12月?22年1月の相場で急落直前の乖離率は63%程度。それ以前の急騰後の急落も、乖離率が60?70%台程度になると発生することが多かった。そのため、福永さんは「結果的に3月まで上昇したが、1月や2月に乖離率が60%を超えた段階で売り始めるという判断もありだったはずだ」と見る。

日中に常に取引画面を見られない人は、後何円値上がりしたら目安の乖離率の水準になるかを事前に計算しておき、その価格で売り注文を出す方法もお薦めだ。

(田中創太)

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