ロシアでも部分的動員の解除を求める声、当局は外国の工作員と認定
https://grandfleet.info/russia-related/russia-also-calls-for-partial-demobilization-authorities-label-foreign-agents/#comment_headline
『2024.06.8
露独立系メディアのМедузаは昨年「部分的動員には動員解除に関する具体的な期限が定められておらず、兵士の妻や親族は無期限動員に反対している」と報じていたが、AP通信は「ロシア当局は動員された男性を契約兵士と交代させろと要求するグループに『外国の工作員』というレッテルを貼った」と報じた。
参考:Wives of mobilized Russian soldiers hold rare protest at defense ministry demanding their return
この部分について騒がれるのはクレムリンにとって都合が悪いのだろう
ゼレンスキー大統領はロシア軍の侵攻に対応するため昨年2月24日に戒厳令を発令、この枠組みの中で動員している18歳~60歳までの男性は「60歳に達した者」「軍事医療委員会が医学的に不適合と判定した者」「裁判所から自由や権利の剥奪を伴う判決を下された者」「近親者を介護する必要性があると認められた者」「妊娠した者」などの特定条件に当てはまる者以外、基本的に動員解除が認められていない。
出典:hromadske
シンプルに言えば「動員されると五体満足の状態で家族の元にいつ帰れるのか分からない=手足を失うなど服務に適さない体にならないと動員が解除されない」という状況が続いており、ウクライナ各地では兵士の親族らが「他の人間が戦争に行く時が来た」「勝利の責任(負担)は平等であるべきだ」「軍人にも家族がいる」「1人だけで戦争に勝つことはできない」と訴えて動員解除を要求、ゼレンスキー大統領は不満の高まりを受けて対象者の復員(動員解除)を指示。
5月18日に発効した動員法改正案には当初「復員に関する規定=動員から36ヶ月間が経過した兵士の復員」が盛り込まれていたものの、この規定はシルスキー総司令官の要請で削除され、年末までに復員と動員を直接関連づけた新しい法律が制定される予定だが、どういった条件で動員された兵士の復員が認められるのかは分かっていない。
出典:Telegram 部分的動員で集められたロシア人
動員された兵士の復員はロシアでも問題になっており、ロシアの独立系メディアのМедузаは2023年11月「動員された人々の妻や親族は無期限動員に反対する嘆願書を発表し、国は戦争に動員された人々と家族に背を向けていると訴えた」と報じ、この話の内容を要約すると以下のようになる。
“プーチン大統領は2022年9月21日に部分的動員を発表して関連法令に署名、ショイグ国防相は10月28日に計画された動員が完了したと発表したが、プーチン大統領は動員終了に関する関連法令に署名していない。
さらに部分的動員に関する関連法令には「動員解除」に関する具体的な期限が定められておらず、この動員で駆り出されたロシア人は事実上「戦争が終わるまで故郷に戻ることができない」という意味だ”
“ロシア下院のグルリョフ副議長は9月7日「特別軍事作戦のために動員された人々の交代は「新たな動員」が必要になるため実施しない。動員が続けば多くの人々を長期間訓練しなければならず重要な労働力を失うだろう。そのため契約軍人を募集している」と、
カルタポロフ国防委員長も9月15日「動員された人々は特別軍事作戦が完了すれば帰国できるだろう。彼らにローテーション(動員解除のこと)の提供は想定しておらず、6ヶ月勤務する度に休暇(15日間)を取る権利がある」と述べた”
“動員開始から1年後(今年の9月頃)、戦争に駆り出されたロシア人の妻や親族は大規模な帰還要求(動員解除)を求めて活動を開始したものの、各地の集会開催は当局が拒否し、このような話題をネット上で議論していた女性の家には警察官がやってきた。
彼らは動員された人々の帰還を求める嘆願書への署名と服務期間の設定を訴えており、この国を揺るがして政治的状況を不安定にすることには関心がない”
出典:Минобороны России
要するに部分的動員で駆り出されたロシア人は「ウクライナの動員」と同じ様に「服務期間」が未設定で、グルリョフ副議長もカルタポロフ国防委員長も「動員された人々は戦争が終わるまで帰国できない」と述べているため「新たな動員」が必要なローテーションを提供する気はなく、動員された人々の妻や親族が実質的な無期限動員に抗議しているものの「当局が活動を潰している」という意味だ。
この問題についてAP通信は4日「約20人の女性グルールがロシア国防省の前で座り込み、動員された夫や兵士の帰国を求める珍しい抗議活動を行った」
「女性らはベロウソフ国防相との面会を求め、動員された男性を契約兵士と交代させて帰国させることや、帰国が実現するまで勤務時間に制限を設けるよう要求している」
「この抗議活動を受けてロシア当局は当該グループに『外国の工作員』というレッテルを貼った」「この手法は反対意見を封じ込めるためクレムリンが用いる常套手段だ」と報じた。
出典:Путь Домой 動員された人々の妻や親族が無期限動員に反対する様子
女性グルールが求めている「動員された夫や兵士の帰国」は「部分的動員で招集されウクライナに送られた人々の動員解除」のことで、
新たな動員を行わないなら「契約兵士と交代させて帰国させろ」という意味だが、ロシア当局は外国の工作員というレッテルを貼って抗議活動を潰そうとしているのだ。
義務的徴兵(年2回)で召集された新兵は国外作戦(特別軍事作戦が実施されている地域は徴兵者の勤務地域から除外)に派遣できないため、義務的徴兵を終えた人々を契約軍人として採用してウクライナに派遣しているが、
この供給量は戦闘で発生する人的損失をカバーできても「部分的動員で招集された人々」を解放できる量ではなく、この部分について騒がれるのはクレムリンにとって都合が悪いのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Минобороны России
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投稿者: 航空万能論GF管理人 ロシア関連 コメント: 44 』