欧州議会選挙なぜ重要 全加盟国で投票、法案や人事審議
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『2024年5月22日 5:00 (2024年6月10日 7:51更新)』
『欧州連合(EU)は6月6〜9日の日程で欧州議会選を実施する。全加盟国の有権者が投票権を持ち、市民の代表者を直接送り込める重要な機会となる。欧州議会はどのような仕組みで運営し、選挙戦では何が争点となっているのか。選挙後のEUの課題を含めて3つのポイントから読み解く。
・欧州議会の役割や仕組みは?
・議員をどうやって選び出すのか?
・今回の選挙では何が争点となるのか?…
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『(1)欧州議会の役割や仕組みは?
欧州議会はEUの立法機関だ。幅広い政策分野で加盟国の代表からなる閣僚理事会と共同で立法権を持つ。執行機関の欧州委員会が提案した法案の成立には、多くの場合、理事会と議会の承認が必要となる。
ベルギーのブリュッセルとフランスのストラスブールで定期的に本会議を開く。欧州議員は普段、委員会活動をするブリュッセルにいることが多い。
官僚機構の欧州委の提案に対し、議会は欧州市民の民意を踏まえた議論を提起する役割を担う。
例えば人工知能(AI)利用の規制を巡る議論では、「Chat(チャット)GPT」など生成AIを対象にした条文も規則案に盛り込むべきだとの議会側の主張を取り入れる形で主要機関が大筋合意した。
立法作業のほかに、欧州委員会執行部の人事やEU予算、条約の締結といった案件も議会で審議する。
安全保障・防衛分野の対外活動に関しては、加盟国が権限を持つ。欧州議会は意見を決議できても、法的拘束力はない。
欧州議会議員の任期は5年。議員になってからは出身国にかかわらず、欧州議会の会派に入って活動する。会派は加盟国の4分の1(7カ国)以上かつ一定数の議員で構成する決まりだ。
現在の最大会派は中道右派・欧州人民党(EPP)で、フォンデアライエン欧州委員長を選挙の筆頭候補に据える。ドイツのキリスト教民主同盟(CDU)などが参画し、EU拡大の推進や安全保障強化などを掲げる。
フォンデアライエン氏はドイツ出身。同国のメルケル前首相に非常に近いとされる。メルケル政権時に家族・高齢者・女性・青少年相、国防相を歴任した。
フランスの極右・国民連合(RN)やドイツの極右「ドイツのための選択肢(AfD)」は「アイデンティティーと民主主義(ID)」という会派を持つ。EU統合の理念に懐疑的で、欧州委主導による野心的な環境対策などに反発する。ただ現有議席割合は10%に満たない。
(2)議員をどうやって選び出すのか?
ブリュッセル空港には投票を促す巨大な横断幕が掲げられた
EU加盟国は、国ごとに選挙を実施する。定数は720となる。加盟国の人口規模に応じて議席が国ごとに配分される。ドイツ(96議席)やフランスで選出される議員は多く、ルクセンブルクやマルタ(各6議席)などは少ない。
EUが普通選挙や比例代表制、秘密投票など選挙の大枠を定める。加盟国はそれぞれの細則を決めて、自ら選挙をする。選挙権年齢や被選挙権年齢も国によって異なる。ドイツやベルギー、オーストリアなどの選挙権年齢は「16歳以上」だ。ベルギーなどは投票を有権者の義務とする。
事前の議会会派代表者らによる討論会などを経て、各国は6月6〜9日のいずれかの日程で投票を実施する。6日にオランダ、7日にアイルランドで投票を行うが、多くの国は9日を予定する。9日夜にも投票結果の大勢が判明する見通し。
(3)今回の選挙では何が争点となるのか?
選挙後の欧州委員長人事ではフォンデアライエン氏の再選が有力視される=ロイター
まず注目されるのは各会派の議席獲得数だ。19年の前回選挙では、フォンデアライエン氏が現在率いるEPPなど親EU勢力が3分の2以上の議席を得た。
今回は多くの加盟国で、極右などEU懐疑派の政党が議席を伸ばすとの予測がある。移民・難民流入の阻止、緊縮財政や欧州委主導の気候変動対策への反対といった主張を掲げる。加盟国の主体的な政策決定を重視し、フォンデアライエン氏ら欧州委執行部を強く批判する。
EU懐疑派が欧州議会内で勢いを増せば、現在の欧州委が脱炭素を目標に進めてきた「グリーンディール」のような政策は修正を迫られる公算が大きい。一部会派からは電気自動車(EV)導入に向けた規制を見直すよう求める意見もある。
今秋に任期を終える欧州委員長の後任人事でも、議会の動向がカギを握る。EU首脳は選挙後、6月中に首脳会議を開く。会議では選挙結果を踏まえ、加盟国の人口規模などを加味した特定多数決で新委員長候補を指名する。欧州議会は人事案を多数決で承認する。
足元ではEPPのフォンデアライエン氏の再選が有力視される。同氏の就任に反対するEU懐疑派が選挙で結果を残せば、首脳らが人選を見直す可能性は残る。
欧州議会選は、各加盟国の政党が国内での足元の支持を競う「民意のバロメーター」でもある。大統領選など各国の次の選挙につながる重要なイベントのため、各地の選挙戦は熱を帯びている。
(ブリュッセル=辻隆史)
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