全世界に同情されながら滅亡するよりも、たとえ全世界を敵に回しても生き残る
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『 海
5つ星のうち5.0 全世界に同情されながら滅亡するよりも、たとえ全世界を敵に回しても生き残る
2015年2月27日に日本でレビュー済み
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28話からなる隔月刊誌2007年10月号から2014年6月号までの再編集で脱稿の日付けが明記されている。
以下、知的誠実を感じた個所を示す。
.イデオロギーと現実政治という位相の異なる問題を混同すると正確な分析は出来ない。
.ヒュミント(人間によるインテリジェンス活動)によってしか最重要度の情報は取れない。情報源との信頼関係である。
.ロシア人は、国家のために命を捧げる気構えを持つ人ならば外国人でも尊敬する。
.インテリジェンス小説とは、公開情報や秘密情報を精査・分析して近未来に起こるであろう出来事を描く小説である。ドキュメンタリー・ノンフィクションやノンフィクション・ノベルとは異なる。
.チェコ人の古本屋の印象深い話がある。
私たち夫婦には子どもがいない。死んだ後、チェコに関する何かを残したい。妻は、ケンブリッジ大学等でチェコ語を教えチェコ専門家を養成することで形を残す。
私は、このままだと社会主義国で末梢されてしまう書籍を救い出し大英博物館、米国議会図書館に贈る。本は私が死んでもずっと残る。
.敗戦後の日本の社会・国家システムは、合理主義、生命至上主義、個人主義によって構築された。
戦時中、この近代主義が限界に至ったから世界大戦が必然となったという認識が「近代の超克」であった。
だが、近代主義に基ずく米国の物量に圧倒され、その思想的展開を行う余裕がなくなってしまった。
だが、日本人は特攻隊という実践で「近代」を超克した。
インテリジェンスの視点では、このことは十分合理的に説明可能である。
原発事故の際、一命を賭して被害拡大阻止に尽力した人たちについても同様である。
だが、人材を失う非合理性も併せ持つ。
この近代主義も、国際基準で自衛官・警察官・消防士・海上保安官・外交官には生命と職務遂行が天秤にかかるような状況に於いては職務の方が重くなる無限責任が要求されている。
ユダヤ人には、このことが分かる。
ローマ人の総攻撃を前に全960名が3年間立て篭もり自害し果てたマサダ精神が生きているからである。
.国際政治は、複雑系でありその全体を制御できるような謀略は存在しない。謀略史観は、判断を歪め危険である。
.新帝国主義とは、まず自国の要求を一方的に行う。相手国が怯み、国際社会も沈黙しているならば強引な手法で自らの権益を拡大する。
相手国が必死になって抵抗し国際社会も「いくらなんでもやりすぎだ」という対応をすれば国際協調に転じる。
それは、反省したからではない。これ以上のごり押しは、損すると計算したからである。
現在、中国が露骨に新帝国主義的施策を展開している。
.3.11は、日本民族の興亡がかかった出来事である。
重要なことは、必要とする行動をする事である。それは、政治的集会やデモに参加することではない。
今、自分が置かれている場所でつまり、所与の条件の下でこれまで以上に一所懸命働く事である。
行動する事によって日本民族の生成・強化をしていかないと民族も国家も滅ぶ。民族とは、動的な生成概念である。
.三島の死について、人間が自分で死ぬというのは大変なことです。憤死・諌死と「キリストの幕屋」手島郁郎という人は言ってのけた。
今の時代に死を以って訴えたということがただでは終わらない。本質的なことは、象徴を通してしか語ることはできない。
.ユダヤ人が数千年間心安らかに時を過ごした事はない。栄えても追い出され歴史からも殆んど末梢されてしまった。周りに何時も敵がいて狙い撃ちする。ユダヤ史は、その繰り返しでその文化に刻みつけられている。だが、生き残っている。
民族や国家を守るというのは、抽象的概念ではない。生き残るための具体的行為である。
佐藤優の本領が十分発揮されている時期のものであり、読む者にも内在的論理が紡ぎ出される過程を見る知的昂奮がある。
驚いたのは、吉田茂駐英大使が1945年2月憲兵隊に逮捕された。
実は、陸軍中野学校出身者によって極秘裏に作られた「ヤマ機関」によってであった。
著者は、その生き残りの90歳近くの人に面接している。その老人は、「吉田茂がイギリスのスパイだったということは、証拠がある話です」と言った。
イギリスは、戦勝国なので、そのスパイ活動の全貌は歴史の闇に葬り去られてしまったのである。
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